
今日は久しぶりの大地穂ちゃんと
@
kokonn
15時半
谷中にある会場到着
16時までは通常営業ということでしばらく待機

谷中という街自体が昭和の匂いを沢山残している
外人の観光客も見かけるし
若いカップルも多かった
店前のガードレールに腰掛けて
夏の終わりの夕方の風に気持ち良く吹かれた
kokonnさんは
昭和の小さな商店をそのまま雑貨屋さんにして
かつては居住空間だったであろう奥座敷は
畳もそのままな態でCafeになっている

僕が子供の頃見た豆腐屋さんとか襖屋さんが
こんな門構えだった
(特に二階の石造りの蔵みたいな雰囲気が)
僕はこういうシチュエーションで演奏するのが好きだな
なんだかしっくりくる

演奏も演奏環境も
人の手作り感が感じられる範囲の
ささやかなものが好き
本番を前に無意識のうちに
自分に無理を強いているような時はよくある
そして今日の自分は全くその気配が無い
昭和感満載の屋内

僕が特に気に入ったのがトイレの扉

木で出来た鍵
これは昭和35年生まれの僕が子供の頃の
実家がこういうのだった
トイレに入ったついでに
こっそりこの鍵部分を意味なくストスト動かして
ノスタルジーに浸ったのでありました

(ストストしてご満悦なギタリスト)
リハも済ませ
二階の部屋を控え室に使わせて頂いた
クーラーが無いのが気持ち良い
窓を開けて蝉の声を聞きながら
このメモを書いている

この手すりのとこには僕ならば
夏は鉢植えの朝顔を置いて更に
軒先には南部鉄の風鈴を吊るしたい

秋を感じさせる鱗雲を見上げながら
僕は今、綺麗さっぱりギタリストを辞めて
何処か知らない街で豆腐屋として人生を出直している
という妄想(迷想?)を一時楽しんだ
スイスイ
本番前の図

そして少し押してから本番
kokonnのオーナーさんの張りのある声で朗読が始まり
少し動いてもパキンと軋む階段の上で僕は
音を立てぬように神妙に座ってそれを聞いた
間もなく我々の出番
灯りが消された暗い畳の部屋の
座っておられるお客さんの間を縫うようにステージにたどり着き
チューニングなどしてから演奏開始
お客さんがすごく近いから
客席からの「気」がはっきり感じられる
ここからは弾き手としての僕の
100%主観の話
気を込めた音を1つ放つと
受け手の心に小さくヒットするのがわかる
それを紡ぎ重ねる毎に
受け手の心が波打ち始めるのも感じられる
それは
静かに波紋が広がるように
ささやかなる潤いとなって
徐々にこの場を満たしてゆく
こうなれば僕はもう何も喋る必要も無い
黙って音を紡ぎ重ねるだけ
僕は今
演奏家として至福の中に居る
暗い客席
畳に足を投げ出したご婦人の足先が
曲のテンポに合わせるともなく合わせながら動いているのが見える
いつだったか
自分の母もそんな風に足先を動かしながら音楽を聴いていたな...
と記憶が脳裏を過る
音楽は良い
人を無邪気にするから
僕には今、俗っぽい感傷も無い
過剰なノスタルジーも感じない
ただ生暖かい羊水の中で
丁度良い緊張を伴いながら時が進んで行く
いや こういう時
「時」は止まっているのかもしれない
演奏時間が終了し
僕はフンワリ現実に戻った
。。。
演奏していてマインドトリップが出来る場所と
なかなか出来ない場所がある
帰りの道すがら考えた
今日自分が
見事なまでに自然体でマインドトリップ出来たのは
多分一番には
kokonnというお店が放っている「気」による
それは自然にそこに在ったのではなく
持ち主さんが育てようとして育てたもの
僕はそのことに心から感謝し
それが引き寄せたものに感謝したのです
谷中というスピリチュアルな地に波長がよく合った
そして
中庸と呼んでも差し支えないであろう佳き宴でありました
