時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

記録者の個性

2008-03-15 10:47:34 | 日記・軍記物
ここのところ色々な文献を読ませて頂いています。
読んでいると、「日記類」には書き手の個性が出るなあと思っています。

「吉記」の吉田経房の文章は「真面目だなあ」と感心することしきりです。
とにかく「事実」やしきたりやその時の衣装などが淡々と記されています。
たまに世間の噂話なども載せていますが、経房自身は何を考えているのかはまるっきりわかりません。

事実がそこに書かれているだけです。

一方「玉葉」の九条兼実は読んでいて喜怒哀楽の激しさに、思わず引き込まれます。
「悲しむべし、悲しむべし」
「弾指すべし、弾指すべし」
「恥づべし」
など、という言葉が時々出てきますし
色々な出来事に対して兼実がどう思っているのかということも色々と書かれています。
(勿論事実も丁寧にかかれています。)

「滅亡」などと物騒な言葉も所々で出てきますが
法皇が幽閉されたり、あちらこちらで戦乱が勃発して、天皇が二人同時にいるというような、治承以前の状態と比べてどう考えても普通ではないと思われる状況で、冷静でいなさい、というほうが無理なような気がします。
もうどうしようかと思い悩んだことが多かったであろうことは想像に難くありません。
(相当ストレスがたまっていたような気がします)

兼実さんの心の揺れ方も世の動きのすさまじさというものを感じさせられるような気がします。

一方で、そんな凄い世の中で淡々と事実のみを書きしるしている
経房さんの冷静さもまた凄いものがあります。

もっとも、右大臣に地位にあり政治家として判断を下さなければならない立場にある兼実と
事務担当者である弁官の一人である経房の立場の違い
というものの差ということもあるかも知れませんが。

それにしても、同じ日記でもこう「個性」の差が出るというのは面白いものです。

もしこの二人が現代にいたならば
兼実さんは喜怒哀楽や鋭い批判精神にとんだ記事を毎日書き連ねる人気ブロガー
経房さんは冷静に事実を報道する新聞記者として大活躍

になる文章を書くのではないか
という気がします。

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