一方、尾張でも平重衡出陣すの報を聞き迎撃の準備を整えていた。
熊野から三千の援軍はやってはきた。
しかし、尾張の諸将の足並みは不ぞろいである。
今まで熊野水軍と遠江を制圧している安田義定の支援があって
源行家が尾張の指導者的な立場にいた。
しかし、熊野水軍は伊勢勢力との争いに破れ
伊勢を敵に回したくない安田義定はここのところ行家に対して協力的ではない。
元々行家と尾張源氏等の間には家柄という点では大きな差はない。
いやむしろ生涯検非違使尉左衛門尉という侍身分から上昇することなかった為義の子、そして自らは八条院蔵人という地位しか有さない行家は
院や女院と関係の深い尾張諸々将に比べると家柄の面では劣っていたかもしれない。
和泉太郎、高田太郎といった尾張源氏の面々はここのところあからさまに行家を軽く扱っている。
真っ先に行家に協力した甥卿公義円も表面上では叔父を立ててはいるが
本心では叔父に従う気はさらさら無かった。
行家の父為義は義円にとっては祖父ではあるが保元の乱で義円の父義朝が祖父と敵対し
その結果父が祖父を処刑したという事実があった。
さらに、祖父とは異なる政治的位置を取っていた父は
祖父の地位をはるかに越える従四位下左馬頭、その嫡子である兄頼朝は従五位下右兵衛佐の地位を得ていた。
父を始祖とする自分の家系は諸大夫(貴族)であり、自らは僧籍にあるものの後白河院の皇子八条宮に長いこと仕えている。
叔父の家系は侍に過ぎない上、叔父自身は侍身分すら得ていないという思いがある。
さらに陰ながら反乱勢力に力を貸してくれている熱田社の大宮司は異母兄頼朝の外戚。
熱田社の協力は異母兄の縁によるところが大きい。
ここまで在地勢力として支援をしてくれているのは義円の妻の父。
自分が行家の下につく謂れはどこにもないと思っている。
しかし、内心を誰にも見せることもない。あくまでも叔父を立てている。
意気盛んな追討軍に対して、尾張反乱軍は不協和音を抱えていた。
一方尾張から東、三河を越えたところにある遠江では安田義定と源範頼が軍備を整えていた。
尾張を巡る情勢を探らせたところ尾張の反乱が官軍に勝てる見込みは薄いと義定は判断した。
尾張が官軍に蹂躙されたならば、その次に起こるであろう戦いには、安田義定、源範頼も無縁ではいられないはずである。
加えて北方の二人の巨人が官軍に呼応すべく不気味な行動をとっているといの報も入っていた。
すぐには戦火にさらされる可能性の薄いはずの遠江にも緊迫した空気が流れ始めていた。
前回へ 次回へ
熊野から三千の援軍はやってはきた。
しかし、尾張の諸将の足並みは不ぞろいである。
今まで熊野水軍と遠江を制圧している安田義定の支援があって
源行家が尾張の指導者的な立場にいた。
しかし、熊野水軍は伊勢勢力との争いに破れ
伊勢を敵に回したくない安田義定はここのところ行家に対して協力的ではない。
元々行家と尾張源氏等の間には家柄という点では大きな差はない。
いやむしろ生涯検非違使尉左衛門尉という侍身分から上昇することなかった為義の子、そして自らは八条院蔵人という地位しか有さない行家は
院や女院と関係の深い尾張諸々将に比べると家柄の面では劣っていたかもしれない。
和泉太郎、高田太郎といった尾張源氏の面々はここのところあからさまに行家を軽く扱っている。
真っ先に行家に協力した甥卿公義円も表面上では叔父を立ててはいるが
本心では叔父に従う気はさらさら無かった。
行家の父為義は義円にとっては祖父ではあるが保元の乱で義円の父義朝が祖父と敵対し
その結果父が祖父を処刑したという事実があった。
さらに、祖父とは異なる政治的位置を取っていた父は
祖父の地位をはるかに越える従四位下左馬頭、その嫡子である兄頼朝は従五位下右兵衛佐の地位を得ていた。
父を始祖とする自分の家系は諸大夫(貴族)であり、自らは僧籍にあるものの後白河院の皇子八条宮に長いこと仕えている。
叔父の家系は侍に過ぎない上、叔父自身は侍身分すら得ていないという思いがある。
さらに陰ながら反乱勢力に力を貸してくれている熱田社の大宮司は異母兄頼朝の外戚。
熱田社の協力は異母兄の縁によるところが大きい。
ここまで在地勢力として支援をしてくれているのは義円の妻の父。
自分が行家の下につく謂れはどこにもないと思っている。
しかし、内心を誰にも見せることもない。あくまでも叔父を立てている。
意気盛んな追討軍に対して、尾張反乱軍は不協和音を抱えていた。
一方尾張から東、三河を越えたところにある遠江では安田義定と源範頼が軍備を整えていた。
尾張を巡る情勢を探らせたところ尾張の反乱が官軍に勝てる見込みは薄いと義定は判断した。
尾張が官軍に蹂躙されたならば、その次に起こるであろう戦いには、安田義定、源範頼も無縁ではいられないはずである。
加えて北方の二人の巨人が官軍に呼応すべく不気味な行動をとっているといの報も入っていた。
すぐには戦火にさらされる可能性の薄いはずの遠江にも緊迫した空気が流れ始めていた。
前回へ 次回へ