瑠璃と小百合は河越重頼夫妻に支援をお願いしにいった。
河越重頼も当時経済的に大変な時期だった。
娘が在京中の源義経へ嫁ぐことが決まっており、その支度に費用がかかるからである。
けれども、大領主の河越氏は財にも多少の余裕があるため重頼は瑠璃への支援を快諾した。
ただし、本領から鎌倉まで荷を運ぶのに多少の日数がかかると言われた。
とりあえずの危機は解消されると思った頃再び出費の危機が訪れた。
大豪族の小山一族が明日にも一族郎党を引き連れて祝賀にくるというのである。
野木宮合戦以来幾多の戦場を供にした小山一族をないがしろにするわけにはいかない。
しかし、もてなすものがもうない。
小山一族は大豪族ゆえ訪れる人数も半端ではない。
鎌倉殿からの支援はまだ得られそうに無い。
蔵の中は空。
けれども出費は減らない。
瑠璃は途方に暮れた。
その時、先触れの使者の声がした。
「遠江守様の使いのものが間もなく書状をもって現れます。」と。
瑠璃は絶望的な瞳をしながら、辛うじて厨に残っているものを見渡してもてなしの支度を始める。
明日は朝から家中のものに食事を与えることもできないかもしれない。
しばらくして多くの荷駄と共に、遠江守安田義定の使者が現れた。
使者は、範頼のいる寝殿に通された。
使者は黙って範頼に主安田義定の書状を差し出した。
「三河守殿、こたびの任官祝着に存じる。
できれば鎌倉に参上して祝いの言葉を述べたいところであるが
国守としての勤めが多忙で任国を離れることができぬゆえ使者のみを送る非礼をお許しいただきたい。
なお使者への特別なもてなしは不要である。
また若干の祝いの品を持たせたので、三河守殿の役に立てば幸いである。
この祝いに対する返礼もまた不要に存じる。
遠江守義定」
範頼は信じられないという顔をしながら使者の顔を見た。
そして妻に書状を見せた。
その書状をみた瑠璃はここ数日浮かべることのできなかった笑顔を見せた。
その日の三河守範頼家の蔵には米、麦、絹が久々に蓄えられ、厩には馬が増えた。
翌日は家中の者はもちろん、何組かの来客にそれなりのもてなしができ
三河国への出立の支度もなんとかできそうである。
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河越重頼も当時経済的に大変な時期だった。
娘が在京中の源義経へ嫁ぐことが決まっており、その支度に費用がかかるからである。
けれども、大領主の河越氏は財にも多少の余裕があるため重頼は瑠璃への支援を快諾した。
ただし、本領から鎌倉まで荷を運ぶのに多少の日数がかかると言われた。
とりあえずの危機は解消されると思った頃再び出費の危機が訪れた。
大豪族の小山一族が明日にも一族郎党を引き連れて祝賀にくるというのである。
野木宮合戦以来幾多の戦場を供にした小山一族をないがしろにするわけにはいかない。
しかし、もてなすものがもうない。
小山一族は大豪族ゆえ訪れる人数も半端ではない。
鎌倉殿からの支援はまだ得られそうに無い。
蔵の中は空。
けれども出費は減らない。
瑠璃は途方に暮れた。
その時、先触れの使者の声がした。
「遠江守様の使いのものが間もなく書状をもって現れます。」と。
瑠璃は絶望的な瞳をしながら、辛うじて厨に残っているものを見渡してもてなしの支度を始める。
明日は朝から家中のものに食事を与えることもできないかもしれない。
しばらくして多くの荷駄と共に、遠江守安田義定の使者が現れた。
使者は、範頼のいる寝殿に通された。
使者は黙って範頼に主安田義定の書状を差し出した。
「三河守殿、こたびの任官祝着に存じる。
できれば鎌倉に参上して祝いの言葉を述べたいところであるが
国守としての勤めが多忙で任国を離れることができぬゆえ使者のみを送る非礼をお許しいただきたい。
なお使者への特別なもてなしは不要である。
また若干の祝いの品を持たせたので、三河守殿の役に立てば幸いである。
この祝いに対する返礼もまた不要に存じる。
遠江守義定」
範頼は信じられないという顔をしながら使者の顔を見た。
そして妻に書状を見せた。
その書状をみた瑠璃はここ数日浮かべることのできなかった笑顔を見せた。
その日の三河守範頼家の蔵には米、麦、絹が久々に蓄えられ、厩には馬が増えた。
翌日は家中の者はもちろん、何組かの来客にそれなりのもてなしができ
三河国への出立の支度もなんとかできそうである。
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