無事に任期を果たすことを祈願するはずの一宮参拝は図らずも戦勝祈願の参拝になってしまった。
範頼が祈りの時を終えたときも傍らの妻はまだひたすら祈っていた。
宿代わりにしている在庁官人の邸に戻るとそこには既に他の官人たちが集っていた。
官人たちは戸惑いの表情を浮かべていた。
範頼は静かに語った。
「間もなく私は鎌倉に行かねばならない。三河国を暫くの間離れねばならなくなった。」
と。その後
「後のことは追って沙汰をする。」
とだけ続けた。
官人たちを下がらせた。
三河守範頼には国守としてせねばならぬことが山積されていた。
ただ、至急鎌倉に戻らねばならないのも事実である。
とりあえず、早急に自分が不在の間政務を代行してくれる目代を任命しておかねばならない。
その目代に相応しい人物は一人しか思い浮かばない。
この異常事態に対応でき三河国の人々と知己であり、能力があり、自分が最も信頼できる人物は彼しかいない。
範頼は鎌倉に早馬を出した。
範頼の使者の口上を受けた鎌倉殿源頼朝は満足げな表情を浮かべた。
数日後、三河守源範頼の元に目代となるべき人物が現れた。
範頼の舅安達藤九郎盛長である。
盛長と入れ替わりに範頼は三河国を出立して鎌倉へと向かった。
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範頼が祈りの時を終えたときも傍らの妻はまだひたすら祈っていた。
宿代わりにしている在庁官人の邸に戻るとそこには既に他の官人たちが集っていた。
官人たちは戸惑いの表情を浮かべていた。
範頼は静かに語った。
「間もなく私は鎌倉に行かねばならない。三河国を暫くの間離れねばならなくなった。」
と。その後
「後のことは追って沙汰をする。」
とだけ続けた。
官人たちを下がらせた。
三河守範頼には国守としてせねばならぬことが山積されていた。
ただ、至急鎌倉に戻らねばならないのも事実である。
とりあえず、早急に自分が不在の間政務を代行してくれる目代を任命しておかねばならない。
その目代に相応しい人物は一人しか思い浮かばない。
この異常事態に対応でき三河国の人々と知己であり、能力があり、自分が最も信頼できる人物は彼しかいない。
範頼は鎌倉に早馬を出した。
範頼の使者の口上を受けた鎌倉殿源頼朝は満足げな表情を浮かべた。
数日後、三河守源範頼の元に目代となるべき人物が現れた。
範頼の舅安達藤九郎盛長である。
盛長と入れ替わりに範頼は三河国を出立して鎌倉へと向かった。
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