戦いが始まった。
信濃勢の総力を結集していたとはいえ
大軍を誇る城助職の本隊との戦いは義仲軍にとって圧倒的な不利であった。
ひとり、またひとりと味方が討ち取られていく。
信濃の兵に弱気が感じられた頃
義仲の盟友井上光盛の檄が飛んだ。
「怖れるな、敵は大軍といえども、駆り武者じゃ。
吾らは、深く信濃に根を下ろし、固い絆で結ばれたもの同志。
駆り武者などおそれるに足らぬ」
こう叫んで士気の高揚を図る。
そして、義仲に耳打ちをする。
「わしに秘策がある。どうじゃ、わしに任せてくれぬか?」
義仲は静かに光盛を見据える。
「どのような秘策か?」
「まあ、みておれ、木曽殿は大船に乗った気持ちでわしのすることを見ておればよい。」
光盛は不敵な笑みを浮かべた。
「いずれ合図を出す。その合図がでたら一気に城助職の陣へ攻め込めまれよ。」
それだけいうと、井上勢は密かに義仲の脇からすっと抜け出した。
井上光盛が率いる一手は密かに城助職の陣の裏へ回り込んだ。
そして、平家の軍の印である赤旗を掲げて何食わぬ顔で助職の陣に近づく。
助職の配下のものは、光盛を味方と信じて疑っていない。
助職の本陣を囲む形で作られた堀を井上勢が全軍越えた時だった。
光盛は持っていた赤旗を突如投げ捨て、源氏の象徴白旗をパッと掲げた。
そして、名乗りと挙げ突如城助職本陣の中で敵を打ち倒し始めた。
赤旗が突如白旗に変わったのが光盛の合図だった。
この光景をみた義仲軍は勢いづき一気に城助職の陣へと攻め込んだ。
陣内部に突如現れた敵と、正面から押し寄せる敵に
城氏の兵は浮き足立った。
まず、越後から国衙の命令で半ば無理やり連れてこられた兵は
逃亡を始めた。
その逃亡が戦意あるものの行動をふさいだ。
戦意有るものと逃亡するものの混在は、陣中を混乱させる。
助職本軍はもはや統制がきかない。
混乱に、勇猛な信濃勢の攻撃が拍車をかける。
城助職の軍は、壊滅した。
助職は混乱をかいくぐってやっとの思いで越後へと引き換えした。
数万の城氏の大軍は数千に過ぎぬ信濃連合に破れたのである。
*駆り武者━ 国衙から臨時に徴収された兵
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信濃勢の総力を結集していたとはいえ
大軍を誇る城助職の本隊との戦いは義仲軍にとって圧倒的な不利であった。
ひとり、またひとりと味方が討ち取られていく。
信濃の兵に弱気が感じられた頃
義仲の盟友井上光盛の檄が飛んだ。
「怖れるな、敵は大軍といえども、駆り武者じゃ。
吾らは、深く信濃に根を下ろし、固い絆で結ばれたもの同志。
駆り武者などおそれるに足らぬ」
こう叫んで士気の高揚を図る。
そして、義仲に耳打ちをする。
「わしに秘策がある。どうじゃ、わしに任せてくれぬか?」
義仲は静かに光盛を見据える。
「どのような秘策か?」
「まあ、みておれ、木曽殿は大船に乗った気持ちでわしのすることを見ておればよい。」
光盛は不敵な笑みを浮かべた。
「いずれ合図を出す。その合図がでたら一気に城助職の陣へ攻め込めまれよ。」
それだけいうと、井上勢は密かに義仲の脇からすっと抜け出した。
井上光盛が率いる一手は密かに城助職の陣の裏へ回り込んだ。
そして、平家の軍の印である赤旗を掲げて何食わぬ顔で助職の陣に近づく。
助職の配下のものは、光盛を味方と信じて疑っていない。
助職の本陣を囲む形で作られた堀を井上勢が全軍越えた時だった。
光盛は持っていた赤旗を突如投げ捨て、源氏の象徴白旗をパッと掲げた。
そして、名乗りと挙げ突如城助職本陣の中で敵を打ち倒し始めた。
赤旗が突如白旗に変わったのが光盛の合図だった。
この光景をみた義仲軍は勢いづき一気に城助職の陣へと攻め込んだ。
陣内部に突如現れた敵と、正面から押し寄せる敵に
城氏の兵は浮き足立った。
まず、越後から国衙の命令で半ば無理やり連れてこられた兵は
逃亡を始めた。
その逃亡が戦意あるものの行動をふさいだ。
戦意有るものと逃亡するものの混在は、陣中を混乱させる。
助職本軍はもはや統制がきかない。
混乱に、勇猛な信濃勢の攻撃が拍車をかける。
城助職の軍は、壊滅した。
助職は混乱をかいくぐってやっとの思いで越後へと引き換えした。
数万の城氏の大軍は数千に過ぎぬ信濃連合に破れたのである。
*駆り武者━ 国衙から臨時に徴収された兵
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