宴の中では自然と各人のこれまでの経緯を語ることになった。
まずは、範頼の話となった。
頼朝の挙兵の直前まで養父藤原範季の世話で遠江蒲御厨にいたこと。
兄頼朝の挙兵を知って合流しようと東を目指したが早川の戦い(石橋山の合戦)
で頼朝が敗北したことを知り合流をあきらめ甲斐へ亡命し
やがてそこで知り合った安田義定と共に富士川の戦いの後
遠江へ侵攻したことを語った。
次は全成が語った。
全成は都に程近い醍醐寺にいた。
治承四年のある日、後藤兵衛実基という人物が面会を申し出た。
後藤実基は頼朝の同母の姉の乳母夫であり、姉が一条能保の元に嫁いだため
そのまま一条家の家人となっていた。
度々能保夫妻の元に顔を出していた全成は実基の顔を良く見知っていた。
実基は一通の文を全成に差し出した。
それには
「仔細は申せぬが、そなたの身に危険が迫っているゆえ
後藤の申すとおりにせよ」
と書かれていた。
その筆跡は姉のものであった。
その夜、身の回りのものを持ち、全成は寺を抜け出した。
後藤実基が伝えた場所に来ると実基と武者が一人、そしてもう一人僧侶がいた。
その僧侶は八条宮に仕えているはずの直ぐ下の弟円成(幼名乙若、後の義円)であった。
円成の元にも密かに姉の文は届けられていた。
全成が来たところで、実基は人々を移動させた。
そして都のはずれまで来たところで、同道していた武者を紹介した。
その男は、現在は相模国住人となっている佐々木秀義の子定綱の郎党という。
今から東国へ向かうので同道するように、
仔細は道中話すがこのまま全成、円成の両名が都に留まるのは危険だと語った。
わけのわからぬうちに全成と円成は郎党と共に都を発ち東へ向かうこととなった。
後藤実基は一条能保の元に戻った。
都を離れ近江を過ぎようとする頃、
佐々木の郎党は東国行きの理由を語った。
異母兄頼朝が反平家の挙兵をすること
それが故に頼朝の兄弟である男子の身内は係累として罰せられる恐れがあるので
全成、円成両名が都に留まるのが危険である、
とりあえず頼朝のいる坂東を目指すのがよいとのことであった。
暫くの間は、全成と円成は同じ東国を目指していたのだが
尾張に入ると円成はここに留まると言った。
尾張には円成の妻の父がいる。
ここで、舅の元に留まり暫く様子を見るというのである。
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まずは、範頼の話となった。
頼朝の挙兵の直前まで養父藤原範季の世話で遠江蒲御厨にいたこと。
兄頼朝の挙兵を知って合流しようと東を目指したが早川の戦い(石橋山の合戦)
で頼朝が敗北したことを知り合流をあきらめ甲斐へ亡命し
やがてそこで知り合った安田義定と共に富士川の戦いの後
遠江へ侵攻したことを語った。
次は全成が語った。
全成は都に程近い醍醐寺にいた。
治承四年のある日、後藤兵衛実基という人物が面会を申し出た。
後藤実基は頼朝の同母の姉の乳母夫であり、姉が一条能保の元に嫁いだため
そのまま一条家の家人となっていた。
度々能保夫妻の元に顔を出していた全成は実基の顔を良く見知っていた。
実基は一通の文を全成に差し出した。
それには
「仔細は申せぬが、そなたの身に危険が迫っているゆえ
後藤の申すとおりにせよ」
と書かれていた。
その筆跡は姉のものであった。
その夜、身の回りのものを持ち、全成は寺を抜け出した。
後藤実基が伝えた場所に来ると実基と武者が一人、そしてもう一人僧侶がいた。
その僧侶は八条宮に仕えているはずの直ぐ下の弟円成(幼名乙若、後の義円)であった。
円成の元にも密かに姉の文は届けられていた。
全成が来たところで、実基は人々を移動させた。
そして都のはずれまで来たところで、同道していた武者を紹介した。
その男は、現在は相模国住人となっている佐々木秀義の子定綱の郎党という。
今から東国へ向かうので同道するように、
仔細は道中話すがこのまま全成、円成の両名が都に留まるのは危険だと語った。
わけのわからぬうちに全成と円成は郎党と共に都を発ち東へ向かうこととなった。
後藤実基は一条能保の元に戻った。
都を離れ近江を過ぎようとする頃、
佐々木の郎党は東国行きの理由を語った。
異母兄頼朝が反平家の挙兵をすること
それが故に頼朝の兄弟である男子の身内は係累として罰せられる恐れがあるので
全成、円成両名が都に留まるのが危険である、
とりあえず頼朝のいる坂東を目指すのがよいとのことであった。
暫くの間は、全成と円成は同じ東国を目指していたのだが
尾張に入ると円成はここに留まると言った。
尾張には円成の妻の父がいる。
ここで、舅の元に留まり暫く様子を見るというのである。
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