その範頼の陣中には停滞感が漂っていた。
敵は確かに存在する。存在するが今すぐ戦いがあるとは限らない。
だが、戦いがないとは言い切れない。
西国に行った土肥実平や都に留まる義経のように戦う以外の仕事が多数存在するわけではない。
このような中途半端な状況で滞陣しながらも、その陣を引き払うわけには行かない。
その状況に皆が倦んでいた。
そうなると当然のように出入りしてくるものがある。
それは遊女達である。
陣中には最近は今様の歌声や白拍子それらにつけられた器楽の音そして奇妙な嬌声が絶えない。
遊女達は群れを成してやってくる。
その一団の中にも格差があって、芸達者なものたちや遊女達を束ねる立場の者達は上位に位置する。
大将軍範頼の元には当然その上位の者達がやってくる。
範頼はその者達を受け入れ陣中において芸を披露させて皆を楽しませはしたが、決して側に招きよせようとしなかった。
またそのようなものたちはそれはそれでそういうものだと割り切っていた。
彼女達の仕事は「人を楽しませること」である。
そして芸あるものは芸で人を楽しませることに誇りと生きがいを感じている。
それとは別に女の体で男を楽しませるものも存在する。
遊女の中にも色々なものが存在する。
芸で人を楽しませる者も芸の後男に体を求められることがある。
それを断らない者もあれば、断る者もある。
上位に存する遊女たちにはそれを選ぶ権利がある。
度々出入りする遊女たちを認めその芸を楽しむ範頼も上位の遊女たちにそれ以上のものは求めなかった。
今様、舞、日々の鍛錬によって積み重ねられ芸をを披露する時の彼女達には一種の神々しさがあった。
それを汚したくない。
範頼は舞の名手を好んだ。そして、必ず問う「笛は吹けるか?」と。
笛を吹けるものには笛を吹かせた。そして目を閉じて笛の音を楽しむ。
範頼は黙ってそれを聞く。
周りのものはそれを訝しがる。
だが当麻太郎だけはその理由を知っている。
範頼の母がかつて舞いの名手であり、笛をたしなんでいたらしいということをかつて主から聞いていたからである。
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敵は確かに存在する。存在するが今すぐ戦いがあるとは限らない。
だが、戦いがないとは言い切れない。
西国に行った土肥実平や都に留まる義経のように戦う以外の仕事が多数存在するわけではない。
このような中途半端な状況で滞陣しながらも、その陣を引き払うわけには行かない。
その状況に皆が倦んでいた。
そうなると当然のように出入りしてくるものがある。
それは遊女達である。
陣中には最近は今様の歌声や白拍子それらにつけられた器楽の音そして奇妙な嬌声が絶えない。
遊女達は群れを成してやってくる。
その一団の中にも格差があって、芸達者なものたちや遊女達を束ねる立場の者達は上位に位置する。
大将軍範頼の元には当然その上位の者達がやってくる。
範頼はその者達を受け入れ陣中において芸を披露させて皆を楽しませはしたが、決して側に招きよせようとしなかった。
またそのようなものたちはそれはそれでそういうものだと割り切っていた。
彼女達の仕事は「人を楽しませること」である。
そして芸あるものは芸で人を楽しませることに誇りと生きがいを感じている。
それとは別に女の体で男を楽しませるものも存在する。
遊女の中にも色々なものが存在する。
芸で人を楽しませる者も芸の後男に体を求められることがある。
それを断らない者もあれば、断る者もある。
上位に存する遊女たちにはそれを選ぶ権利がある。
度々出入りする遊女たちを認めその芸を楽しむ範頼も上位の遊女たちにそれ以上のものは求めなかった。
今様、舞、日々の鍛錬によって積み重ねられ芸をを披露する時の彼女達には一種の神々しさがあった。
それを汚したくない。
範頼は舞の名手を好んだ。そして、必ず問う「笛は吹けるか?」と。
笛を吹けるものには笛を吹かせた。そして目を閉じて笛の音を楽しむ。
範頼は黙ってそれを聞く。
周りのものはそれを訝しがる。
だが当麻太郎だけはその理由を知っている。
範頼の母がかつて舞いの名手であり、笛をたしなんでいたらしいということをかつて主から聞いていたからである。
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