頼朝がそのようにいって唐糸に再び問い質した。
だが、唐糸の答えはやはり「知らぬ存ぜぬ。」の一点張りである。
もしかしたら唐糸も義高の行き先はこの逃亡の背後関係は本当に知らないのかもしれない。
そうしているうちに唐糸の居間からは伯父諏訪盛澄からの書状が見つかったとの報告が入る。
唐糸が伯父からの指示で動いていることは明白であった。
唐糸もそのことを認めた。だがそれ以上のことは何も答えない。
もしかしたら、唐糸は義高を鎌倉から出す指示だけを伯父から受けていて詳しいことは本当に何も知らないのかもしれない。
頼朝は唐糸下がらせた。唐糸は預かり人の元に幽閉された。
義高の行き先は聞き出せなかった。
ただ義高が鎌倉を脱出した、その事実があるだけだった。
頼朝は幾人かの御家人を呼び出した。
その御家人たちに義高捜索を命じた。
「なんとしても探し出せ。」
と頼朝は厳命した。
木曽義仲の遺児志水冠者義高の血筋は信濃においては絶大な価値がある。
その価値ある少年が何者かと結びつくとやっかいなことになる。
少なくともこの逃亡の背後には乳母唐糸の伯父諏訪盛澄がからんでいる。
諏訪氏、義高この両者に何ものかが絡みついたら頼朝にとっては大きな脅威になりかねない。
何が何でも義高を取り返さねばならない。だがそれが叶わぬときは・・・
「義高をなんとしても連れ帰れ。ただし、何者かの手の内にあって生きて取り返すことが叶わぬときは、やむを得ぬ。
その場合は義高が利用されぬよう義高を殺しても構わぬ。」
この命令は、鎌倉殿としては正しい命令だった。だが、一人の娘の父としてはこの言葉を発したことを頼朝は一生後悔し続けることになる。
頼朝の命を受けた者達は即座にその場を退出し義高捜索へと出発していった。
その御家人たちの中に伊豆国住人堀藤太がいた。
何日か義高捜索が進められたが義高の行方は杳として知られることはなかった。
一方母のいる小御所に引き取られた大姫は、何も知らずに義高が「務め」を果たすことを一心に祈っていた。
前回へ 目次へ 次回へ
だが、唐糸の答えはやはり「知らぬ存ぜぬ。」の一点張りである。
もしかしたら唐糸も義高の行き先はこの逃亡の背後関係は本当に知らないのかもしれない。
そうしているうちに唐糸の居間からは伯父諏訪盛澄からの書状が見つかったとの報告が入る。
唐糸が伯父からの指示で動いていることは明白であった。
唐糸もそのことを認めた。だがそれ以上のことは何も答えない。
もしかしたら、唐糸は義高を鎌倉から出す指示だけを伯父から受けていて詳しいことは本当に何も知らないのかもしれない。
頼朝は唐糸下がらせた。唐糸は預かり人の元に幽閉された。
義高の行き先は聞き出せなかった。
ただ義高が鎌倉を脱出した、その事実があるだけだった。
頼朝は幾人かの御家人を呼び出した。
その御家人たちに義高捜索を命じた。
「なんとしても探し出せ。」
と頼朝は厳命した。
木曽義仲の遺児志水冠者義高の血筋は信濃においては絶大な価値がある。
その価値ある少年が何者かと結びつくとやっかいなことになる。
少なくともこの逃亡の背後には乳母唐糸の伯父諏訪盛澄がからんでいる。
諏訪氏、義高この両者に何ものかが絡みついたら頼朝にとっては大きな脅威になりかねない。
何が何でも義高を取り返さねばならない。だがそれが叶わぬときは・・・
「義高をなんとしても連れ帰れ。ただし、何者かの手の内にあって生きて取り返すことが叶わぬときは、やむを得ぬ。
その場合は義高が利用されぬよう義高を殺しても構わぬ。」
この命令は、鎌倉殿としては正しい命令だった。だが、一人の娘の父としてはこの言葉を発したことを頼朝は一生後悔し続けることになる。
頼朝の命を受けた者達は即座にその場を退出し義高捜索へと出発していった。
その御家人たちの中に伊豆国住人堀藤太がいた。
何日か義高捜索が進められたが義高の行方は杳として知られることはなかった。
一方母のいる小御所に引き取られた大姫は、何も知らずに義高が「務め」を果たすことを一心に祈っていた。
前回へ 目次へ 次回へ