基成に会った継信は
「義経を我が家の婿に迎えたい」と切り出した。
いきなりの申し出に基成は面食らった。
基成はなぜ義経を婿に迎えたいのかを尋ねた。
「妹が九郎殿に恋焦がれまして」
というのが彼らの答えだった。
義経が佐藤家に逗留した折、
当主元治の妻が初恋の君を思い出しそ呼び寄せたもののその息子義経が
初恋の君に全く似ていないことに落胆した。
しかし、その娘は義経にすっかり参ってしまった。
寝ても醒めても義経様となってしまった。
かつて似たような経験をした母は、いずれ熱は醒めるものと
冷静に娘の恋を見つめていた。
けれどもその兄達はそんな妹の姿をみてなんとかその想いを遂げさせたいと思った。
父に言えば反対されるだろう。
娘は家にとって大切な存在である。
兄弟たちを支え、時には束ね、嫁いでも婚家が自分の実家の味方になるよう引き寄せねばならない。
母とならば子供達に大きな発言力をもち、
その子供達が婚家を興隆させ、さらに実家の助けになるように導く。
それゆえに、娘は大切に育てられる。
大切に育てた娘の嫁ぎ先は対等もしくは自分の家より勢力の強い家であることが望ましい。
元治の娘、継信らの妹は大切に育てられた娘である。
その縁付く先は、強大な豪族もしくは、良家でなければならない。
実父は謀反人、義父はぱっとしない都の貴族
本人は所領ももたない根無し草。
そんな義経を婿にしたいと言っても父に反対されるのは目に見えていた。
河内源氏が名門と目されるのは義経の兄頼朝が覇権を得て自分の家格を正当化させた後の
さらには、足利時代、徳川時代によって源氏の正当性が強化された後の
幻影に過ぎない。
その頃の義経の家系は謀反により廃れ果て何の価値も見出せない家系でしかなかった。
家としては望ましくないが
妹の心のためには望ましい婚姻
それが兄達の望んだ婿迎えの実態であった。
父の反対、母の無関心を押し切ってこの婚姻を成立させるには
有力者の後援が必要不可欠であった。
幸い義経は奥州の王者藤原秀衡の舅基成のところで世話になっており
基成に気に入られているという。
基成の同意が得られればこの婚姻も成立するのではないか、
継信、忠信はそのように考えた。
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「義経を我が家の婿に迎えたい」と切り出した。
いきなりの申し出に基成は面食らった。
基成はなぜ義経を婿に迎えたいのかを尋ねた。
「妹が九郎殿に恋焦がれまして」
というのが彼らの答えだった。
義経が佐藤家に逗留した折、
当主元治の妻が初恋の君を思い出しそ呼び寄せたもののその息子義経が
初恋の君に全く似ていないことに落胆した。
しかし、その娘は義経にすっかり参ってしまった。
寝ても醒めても義経様となってしまった。
かつて似たような経験をした母は、いずれ熱は醒めるものと
冷静に娘の恋を見つめていた。
けれどもその兄達はそんな妹の姿をみてなんとかその想いを遂げさせたいと思った。
父に言えば反対されるだろう。
娘は家にとって大切な存在である。
兄弟たちを支え、時には束ね、嫁いでも婚家が自分の実家の味方になるよう引き寄せねばならない。
母とならば子供達に大きな発言力をもち、
その子供達が婚家を興隆させ、さらに実家の助けになるように導く。
それゆえに、娘は大切に育てられる。
大切に育てた娘の嫁ぎ先は対等もしくは自分の家より勢力の強い家であることが望ましい。
元治の娘、継信らの妹は大切に育てられた娘である。
その縁付く先は、強大な豪族もしくは、良家でなければならない。
実父は謀反人、義父はぱっとしない都の貴族
本人は所領ももたない根無し草。
そんな義経を婿にしたいと言っても父に反対されるのは目に見えていた。
河内源氏が名門と目されるのは義経の兄頼朝が覇権を得て自分の家格を正当化させた後の
さらには、足利時代、徳川時代によって源氏の正当性が強化された後の
幻影に過ぎない。
その頃の義経の家系は謀反により廃れ果て何の価値も見出せない家系でしかなかった。
家としては望ましくないが
妹の心のためには望ましい婚姻
それが兄達の望んだ婿迎えの実態であった。
父の反対、母の無関心を押し切ってこの婚姻を成立させるには
有力者の後援が必要不可欠であった。
幸い義経は奥州の王者藤原秀衡の舅基成のところで世話になっており
基成に気に入られているという。
基成の同意が得られればこの婚姻も成立するのではないか、
継信、忠信はそのように考えた。
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