ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

伝記 ラフマニノフ

2010-10-18 20:47:39 | Weblog
ニコライ・バジャーノフ著、小林久枝訳、音楽之友社

小さいころから読書は大好きだったけれど、苦手だったジャンルがある。
それは、伝記。

女の子に「わたし、看護婦さんになるの」といわせるナイチンゲールも、
男の子に「将来は発明王になる」といわせるエジソンも、
いろいろと伝記は読んだけど、ほとんど「読まされた」。
ついでに、小公子・小公女も苦手だった。

だから、ラフマニノフの伝記を買ったはいいけど、
なかなか読み始められなかった。
幼いころラフマニノフの音楽が好きになって、この人の曲を聞くために生まれてきたと思って、
私の一部となって生きてくれて、そしてずっと、もっと知りたいと思っているラフマニノフの世界。

この伝記の素晴らしいところは、
ラフマニノフが、音楽に向かう姿勢やその必然性を描いてはいるけれど、
その音楽については、言葉で多くを語っていないことだ。
この本を読む人ならば、すでにその心にラフマニノフがいる。
そのイメージをくずさないように、ラフマニノフ本人に対してだけでなく、
読者に対する、ラフマニノフのファンに対する限りない誠意が伝わってくる。
まったくもって、「私があなたに、ラフマニノフの魅力を教えてあげよう」なんて思っていない。
伝記としては、第一級だと思う。

だからこそ、読んでいると頭の中にはラフマニノフの曲がなりだす。
そして、そのあと、ごそごそとアルバムを取り出し、
長い間、聞いていなかった普段のお気に入りではない曲も聞いてみるか、という気にさせる。

今日は、久しぶりにヴァン・クライバーンの演奏を聞くことにした。
ピアノ協奏曲第3番。クライバーンに、ひたむきに弾いてほしい。

17時すぎ、会社のお使いで外に出たときに見えた夕焼け。
秋の空だ。