ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第5番

2009-02-28 15:36:58 | Weblog
交響曲第2番から編曲
ラフマニノフ(ヴァレンベルグ編曲)作曲、 テオドール・クチャル指揮、
ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団、ヴォルフラム・シュミット=レオナルディ(ピアノ)

すごい試みだと思う。
ラフマニノフの交響曲第2番を、ピアノ協奏曲にアレンジして、
かつ、ピアノ協奏曲第5番としてしまおうというのだから。
しかも他人が。

モーツアルトのレクイエムも後半は違う人が書いているし、
こういったある意味「なりすまし」の試みは、個人的には「あり」だと思う。
「海賊版じゃん!」とも言えるけど、
要は、その試みが成功していると他人から認められれば、
それなりに価値があるのじゃないかな、という気もするし、
この場合は、本人がすでに亡くなっている訳だから、少しゆるくとらえたい。

私が、今日はじめてこの曲を聴いて、まず思ったのは、
「すごく、ラフマニノフを好きな人がアレンジしたのだな」ということ。
とても本人ぽい、と思ったし、変な自己主張がないアレンジだと思った。
他の曲を何度も何度も聴いて、それで好きで書いたのだと思う。
ところどころで、「う~ん、ちょっと違う?」と思うところもあったけど、
それは本人が書いたわけではないので、多少はしょうがない。
だから、聴いていてとても好感がもてたし、好きな曲のひとつになった。

この曲を本人が聴いたら、いったい何て言うかな。
なんとなく、「ありがとう」と言うような気がした。

ただ、曲名を「ラフマニノフの主題による何とか」ではなく、
ピアノ協奏曲第5番としたところに、きっとひっかかる人がいると思う。
この曲では、唯一この部分だけかな、気になるところは。

廃墟建築士

2009-02-26 23:50:23 | Weblog
三崎亜記著、集英社刊。

帯に「ありえないことなど、ありえない」と書かれていたので、
不思議満載の本だと思って買った。
確かにストーリー展開は不思議がいっぱいで、
文章表現も読みやすく、親しみやすい印象だったけれど、
私が一言でこの本の感想を述べると「虚無」。
不思議などという簡単な言葉で片付けてはいけないような気がした。
そう。つまり、私にはとても面白かった。

いますぐにでも、芝居のネタ本になりそうな小品が4つ。
その中でも特に図書館に野生がある、というお話で描かれる夜の図書館は、
小さい頃に私が想像した、図書館の真の姿と似ていて、
なんだかとてもウキウキして、そして少し怖かった。

私の読み方は、作家さんが意図しているとおりではないかもしれないけど、
「受け止めたい」と思える文章だった。
そう。文章としてあらわれる前に、作家さんが考えていることを知りたい、
そこと会話したい、と思わせてくれる作品ばかりだった。

今回、はじめて読んだのだけど、これまでの本も読んでみよう。
そして、これからも注目して読んで行こう。
そんな作家さんにまた一人出会えたのが嬉しい。

神なき時代の神―キルケゴールとレヴィナス

2009-02-25 22:03:08 | Weblog
岩田靖夫著、岩波書店刊。

この本は2008年8月に読んだんだけど、とても面白かった。
何と言っても難解なレヴィナスの哲学を、日本人が日本語で書いてくれているのがよかった。
翻訳書だと、どうしても読みづらい部分が残る。
特にレヴィナスは、何を言っているのかがわからなくなって、同じ行を何度も読み返してしまうことがある。
そんなとき、いつも原語で読めないことを恨めしく思っていた。

この本は、これまでのそんな不満を一気に払拭してくれた。
私のような素人が、レヴィナスの語る倫理や信仰といった面について知るのに、
とてもとても適しているいい本だと思った。

ただ、とても恥ずかしいことに、
私はその当時、キルケゴールの文章を読んだことがなかった。
だから今、キルケゴールの『死にいたる病』を読んでいる。
まだ最初の3分の1くらいだけど、これがまた面白い。

読書というのは出会いだと思う。
なぜ、今、まさにこのタイミングで、この本を読んでいるのかという、その偶然に感動することがある。

ドストエフスキーも読みたくなって来たなあ。
時間が欲しい。

話は変わって、今日、携帯電話が壊れて、電話の音が聞こえなくなった。
拡声器のほうのスピーカーは大丈夫だから、メール着信音は聞こえるし、
強引にハンズフリーにすれば、相手の声は聞こえる。
耳をあてる部分が壊れただけなので、ふだんメールでしか使ってないし、
あまり支障はないんだけど、壊れたと思うと、なぜかこの携帯に愛着を感じる。

かれこれ2年のつきあい。
そろそろ新しいものに換えたいと思っていたんだけど、
急に、もっと使ってやりたくなってきた。不思議。

2009-02-23 22:30:14 | Weblog
最近、色のなかで最も重要な色は「黒」ではないかと思っている。
印刷物もモニタもすべて、「黒」がバッチリ決まっているものは、見やすいし美しく感じる。

印刷物の場合、DTPが主流となったので、写植の頃に比べて、文字のつくりが大きくなったと思う。
最近は流麗な書体も出て来たから、かなり読みやすくなったけれど、
ひらがなも四角い枠いっぱいに大きく表示されていると、正直、今でも読みづらいと思う。

パソコンの画面を見慣れたので、以前ほどの違和感は覚えなくなったけれど、
文字や行における間の取り方は、本当に重要だと思う。

ほとんどの印刷物は4色「黄」「赤」「青」「黒」の掛け合わせなので、「黒」というインクがある。
いっぽう、モニタやは、RGBを使っていて「赤」「緑」「青」の3色の掛け合わせだ。
表現できる色域が違う。

そして、印刷物の4色のインクと一言でいっても、いろいろなインクがあって面白い。
最近、とても「黒」が美しい印刷物を見た。
また、「黒」がとてもしまっていると言われるプロジェクターのデモも見た。

帰りの電車の中で本を読んでいたとき、白い紙の上に広がる文字の流れを目で追って、
それぞれの本がもっている字面に、改めてちょっと感動してしまった。

日本の印刷技術はすばらしいと思う。
本やお札を見ると、特にそう思う。

生と死の北欧神話

2009-02-22 22:24:12 | Weblog
水野知昭著、松柏社刊。

先日読んだ「北欧神話の世界」と読む順序を逆にすればよかった。
この本は初心者でも十分に楽しめる本。
北欧神話の大枠と、神話にこめられた意味を概観できる。

ギリシャでも日本でも同じだけど、神話では、
「せい」という音の、生、性、聖が語られている。
そこには「生きる」ということの難しさと、
そのすべてを受け止める強さがこめられていると思った。

どこの国の、どの時代の人でも同じ。
「いかに生きるか」ということは、
生を受けたからには、考えずにいられない命題。

小学生の頃に読んだ、北欧神話の物語だが、
特に「性」の部分は、ほとんど当時理解できていなかったようだ。
こうやって、同じテーマの本を何年も経ってから読み直すと、
本当に、いろいろなことに思いいたる。

その時間が、たまに重すぎることがある。

話は変わって、前々から欲しいと思っていた観葉植物を買ってみた。
本当に小さい小鉢。
ヘデラという初心者でも安心して扱える生命力のある植物だ。
よく壁にはっている蔓の親戚。

なんだか部屋の中に、自分以外の「生き物」がいてほしくなったから。

テトリス

2009-02-21 23:53:43 | Weblog
週末になるとDSで対戦テトリスをやっている。
2人で対戦しているのだけど、どちらかがソフトを持っていれば、
通信して対戦できるから、便利。

相手は、毎日トレーニングをしていて、
テトリスのエンドロールを見たような人だから、力の差は歴然。
ハンディをつけている。
いつも2段階ほど、向こうの方が難しいレベルで対戦する。

今日はぐっすり寝た後だったので、わりと調子がよく、
いつもよりも粘ることができた。
かなり連勝できたので、ハンディを1段階に減らしたとたん連敗。

最後には、「少し強くなっといて」という言葉とともに、
テトリスのソフトを貸してもらった。

で、かれこれ3時間テトリスをやっている。

このゲームはまさに名作だと思う。
考えたのはロシア人だったか・・・。

DSにせよ、テトリスにせよ、よくできたゲームだと思う。
こんなゲームが手軽に買えるのだから、
不況だろうが、G20だろうが、日本は豊かで平和な国だと思う。

今日は、マラソンでレベル14、コンピュータとの対戦でレベル4を一回勝利。

このへんでやめるかな。眠れなくなる。

ラフマニノフ チェロ・ソナタ

2009-02-19 22:40:54 | Weblog
CD。作曲:ラフマニノフ、アルツシュラー、演奏:ハレル、アシュケナージ

収録作品
1. チェロ・ソナタop.19
2. チェロとピアノのための2つの小品
3. ラフマニノフの主題によるメロディ
4. ロマンス ヘ短調
5. ヴォカリーズop.34―14

久しぶりに聞いたら、やっぱりよかった。

ラフマニノフのチェロは、会話のようだと思う。
ピアノ協奏曲は、どんどん自分の中心に落ちて行くような感じがして、
まるで人生そのもののような気がするのだけど、
チェロは、親しい人に、ふと話しかけているような感じ。

「あの木に、リスが来てたよ」
「今日は散歩に行ったのね。ゆっくりできた?」

「音の色が見えるみたい」
「あたたかい日差しだね」

こんな会話が、ふと始まり、ふと終わる。
そんな、とても静かな日常が思い浮かぶ。

ラフマニノフはピアニストとして、チェロに恋したのかもしれない。
だから、恋人に話しかけるように、安心して、思いつくままに話しかけている。
そんな雰囲気が濃いような気がする。
ピアノ協奏曲も好きだけど、私はチェロの小品も大好きだ。

それにしても、最近ラフマニノフのCDが増えたなあ。
「のだめ」のおかげか?

探偵小説は「セカイ」と遭遇した その2

2009-02-18 22:00:29 | Weblog
笠井潔著、南雲堂刊。

今日は後半。
まず『容疑者Xの献身』について。

私もホームレスの下りで、「ここか。わかりやすいな」と思ったので、
私の探偵小説を読む目は、かなり笠井さんの影響を受けているのかもしれない。

それに、献身的な愛を捧げる数学オタクの男性。
正直なところ、純愛とは思えず、かなり気持ち悪いイヤなヤツ、と思ってた。
だいたい、あんなことまでして好きな人の人生に自分を「刻印」するなんて、
なんだか自分勝手だし、ストーカーに近い。
はっきり言って、最後も泣けるどころか、「きも~い」以外の感想をもたなかった。
作者がちりばめているキーワードを集めたら、あの最後はじゅうぶんに予測できるから、
ほぼ全編にわたって「気持ち悪い人の話」と思って読んだので、
当然、泣けるわけないんだよね。

でも、きっと著者は、そんなことも全部「お見通し」で、
あの小説を構築していると思えたから、プロットとしてしっかりしてる、と思った。

笠井さんは、私のこんな感情論とは違って、しごく論理的に文章を進めている。
いやはや、笠井さんの読書量は本当にすごい。いったい一日に何冊読むのだろう。
評論を書きながら小説を書くなんて、本当にどんな頭の構造をしているのか・・・。
とにかく影響を受けてます。

さて、話は変わって、
今日、テレビ番組「相棒」を見たら、岸恵子さんが出ていた。

岸さんは、いくつになっても美しい色気があるなあ。
岸さんというと、私は昔むかしに見た「悪魔の手毬唄」を思い出す。
本当に美しい人だと思った。

確かに今日ひさしぶりに見て、容姿は、年齢を感じるところもあったけれど、
あの身のこなしは、本当に若々しい。

女性の年齢が出やすいのは、下り階段。
どんなに美しく化粧をしてごまかしていても、年齢を重ねると、ついつい下り階段で膝があいてしまう。
あの姿は、本当にガッカリする。
でも、ラストシーンで階段を下りて来る岸さんの足のさばき方は、
まさに妙齢の女性そのものだった。

改めて尊敬。

探偵小説は「セカイ」と遭遇した その1

2009-02-17 22:49:03 | Weblog
笠井潔著、南雲堂刊。

とりあえず、今日は前半で思ったことを書きたい。
いつも漫然と見ていて、でも何となく「これはいったい・・・?」と思っていることを、
笠井さんの評論は、ミステリーという観点から、とてもスッキリまとめてくれる。

私は小学生時代から探偵小説が好きだったんだけど、中学生になった頃から、
母に「人が死ぬ話ばかりじゃなくて、もっと文学作品を読みなさい」とよく言われた。
それで、反抗してコバルト文庫に走った私は、なかなかどうして反抗的だったと思う。

その時どきの潮流である小説を、時代とシンクロさせて整理している笠井さんの評論は、
すでに20年前の読書趣味について、一晩でも語れる私としては、
目からウロコのことばかりだ。

探偵小説と伝奇小説の変遷については、
まさに自分の読んで来た文章の流れと符合していたりする。
特に、「リアル」の変貌については、すごく思い当たることがあった。
『空の境界』から語られる「日常ー非日常」の下りは、『空の境界』を読んだことがないけれど、
とても納得できるものがあった。

後半は、『容疑者Xの献身』について。
私は、この小説を「探偵小説」としてはとても凡庸だと思ったし、
正直なところ、前半でほとんどの謎がわかってしまったので、
最後のどんでん返しも、ぜんぜん意外性がなくて、あまり好きなミステリーではなかったんだけど、
この小説について、笠井さんがどんな文章を綴るのか、とても楽しみ。
もちろん、書きっぷりはよかったと思います。この小説。
単に「探偵小説」という切り口にしぼった場合、私にはあまり面白くなかったのです。

そして、番外編。
今売れているらしい耳かき「匠の技 最高級煤竹耳かき」。
買ってみた。

確かによい! とてもよい!
細くてしなやかで、とても気持ちいいです。


屋上ミサイル

2009-02-17 00:13:55 | Weblog
山下貴光著、このミス大賞受賞作、宝島社刊。

最初の2~3ページほどは、
文章があまりに独特なペースなため、波長があわせられないと感じたけれど、
いったん調子に乗ってからは、ぐんぐんと読めた。

なんといっても、登場人物たちが繰り広げる会話が面白い。
これは、文章で表現されている以上に、
著者が、人物や環境の設定をしっかりと行っているからだと思うので、
本当に綿密に構想された力作だと思った。

作中の重要な舞台として、登場人物たちが通う高校の屋上がある。
私が通っていた高校は、屋上に上がらせてくれなかった。
きっと危なかったから。
そしていま住んでいるマンションは、夜になると屋上を閉めてしまう。
どうやら、保安上の理由らしい。
確かに以前は、飛び降りたい人が来ていた。
住民にとっては迷惑な話だった。

都内のビルで屋上に上がれるところは少ないと思う。
確かにそのほうが安全だけど、同時に広い空も失われてしまったなあ。
高層ビルの窓から眺める空は広いけれど、視野が横向きなんだよね。

ふーっと息を吐き出しながら見上げて、
そこに青い空が広がっているなんて・・・、
そんな開放的な気持ち、もうずいぶん味わってないな。

この小説は、見事なミステリーなんだけど、
そんな屋上の開放感がずっと漂っていて、
なんだかとっても、のんびりした気持ちになった。