陸自高等工科学校 靖国神社で350人「研修」
戦前回帰の危険な思想教育
穀田衆院議員質問で判明
陸上自衛隊高等工科学校の生徒約350人が2019年に「研修」として集団で靖国神社に行っていたことを15日、日本共産党の穀田恵二議員が衆院外務委員会の質問で明らかにしました。鬼木誠防衛副大臣は、生徒らが神社内の展示施設「遊就館」に行ったことは認めたものの、神社への集団参拝は否定しました。ただ防衛省側は徹底的に調査をしていないともしており、集団参拝があったかどうか否定しきれていません。
陸自高等工科学校は採用対象が15歳から17歳未満の技術関連の技能教育訓練をする施設です。校長を陸将補が務めます。
同校はX(旧ツイッター)に「市ヶ谷等現地訓練において市ヶ谷記念館研修、殉職者慰霊碑献花及び靖国神社遊就館研修を行いました」(2019年1月22日)と投稿していました。
侵略戦争を礼賛
この投稿を取り上げた穀田氏に、鬼木副大臣は「(遊就館で)衣装、遺品、絵画、武具などの資料の見学をおこなった」と認めました。
穀田氏は「遊就館は日本の侵略戦争を礼賛する靖国神社の中心施設だ。ここを研修の対象とするなど、軍国主義の精神的支柱だった靖国神社の参拝と併せて戦前回帰の思想教育にほかならない」と批判しました。
遊就館のホームページによると同館は「御祭神の遺徳を尊び、また古来の武具などを展示する施設」として構想され、1882年(明治15年)に開館。戦中に焼失し、1986年に再建。侵略戦争を美化、正当化する展示をしています。
さらに穀田氏は「8月28日~30日、1年生は市ヶ谷記念館・靖国神社を研修しました」「靖国神社では遊就館を見学し、戦前・戦後の歴史を学ぶことができました」(19年9月2日)という投稿を紹介しました。
この投稿には、動画がついており、生徒たちが整列して、本殿に向けて行進し、大鳥居や正門を通る様子が映っていました。
「研修」での靖国神社参拝の有無を尋ねる穀田氏に、鬼木副大臣は「研修において靖国神社への参拝はしていない」「動画は確認していない」と答えました。
参拝の調査せず
これに対して穀田氏は、「参拝していないと断言できるのか。過去も含めて徹底調査したのか」と追及。鬼木副大臣は「過去にさかのぼって徹底調査をしているわけではない」と、確認の不十分さを認めました。
さらに穀田氏は、靖国神社の社報(2019年10月号)に掲載された参拝者の感想を紹介。社報には当日参加したと思われる生徒の「私は陸上自衛隊高等工科学校生徒として日々勉学に励んでおりますが、靖国神社を参拝し、もっと努力しなければならないと思いました」という感想もあります。
穀田氏は、1974年の事務次官通達が、部隊の長等が職務上の地位を利用して特定宗教の奨励を禁じていることを強調。「学校が行う研修が通達に違反する疑いが濃厚だ。過去の実施状況も含めて研修の実態を調査し、その結果を公表すべきだ」とのべました。
隊員に参拝仕向ける
自衛隊員による靖国神社への集団参拝は、今年1月の小林弘樹陸幕副長(当時)ら幹部22人の参拝を皮切りに本紙の調べなどで相次ぎ発覚しています。
今回の陸自高等工科学校の1年生が「研修」で同神社に訪れていたのは、昨年5月にあった海上自衛隊練習艦隊の初級幹部らの参拝とよく似ています。
このケースでは、司令官の海将補はじめ165人が集団参拝しています。しかし防衛省は「研修の休憩時間を利用し、個人の自由意志により靖国神社を参拝した」としています。
参拝した165人は、研修に参加したと思われる初級幹部ら全員ともいえる人数です。
そもそも、「研修」自体が「歴史学習のため九段下周辺にある史跡等を巡る」というもの。官用バスで、靖国神社の近くまで、初級幹部らを運んでいたのです。
靖国神社の社報では、過去に初級幹部らが参拝前に、本殿の目と鼻の先にある遊就館を拝観していたと紹介しています。九段下にある歴史施設といえば、遊就館や靖国神社を思い浮かべるのが自然です。
「研修」の設定自体が、隊員らの靖国参拝に仕向けるものであるといえます。上位下達の自衛隊内で、司令官ら幹部が参拝するといえば、部下の隊員が“自発”的に参拝に付き合わざるをえなくなるのは想像に難くありません。
防衛省は、練習艦隊の参拝についての調査結果を明らかにしていません。当事者の“自発的な参拝”という説明をうのみにせず、「研修」の設定自体に部隊参拝の意図がなかったか検証する必要があります。
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