議員が“私物化”? 福祉施設で何が
長崎県議会の議員が理事長を務める社会福祉法人が、運営する施設で働く職員から毎月の給料日などに職場で寄付を集めて議員に献金をしていたことが、NHKの取材で明らかになりました。複数の職員や元職員が「職を失うのが怖くて断れなかった」などと証言する寄付集めは、20年以上前から続けられていて、職員から集めた寄付はおよそ2億円にのぼると見られます。取材を進める中で見えてきたのは社会福祉法人が議員に“私物化”され、政治活動に利用される実態でした。
(長崎放送局記者 馬場直子 安井俊樹)
https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2018_0222.html
同じ肩書の個人献金
今回の取材の端緒は去年8月にさかのぼります。
長崎県の「政治とカネ」の実態を調べようと、県内の政治団体が毎年選挙管理委員会に提出している収支報告書のチェックを始めました。日々の取材の合間を見つけては、インターネット上で公開されている収支報告書を読み込んで、おかしな支出入がないか確認を進めました。
そして9月7日の深夜、議員の後援会などを中心に調べていた記者のページをめくる手が止まりました。ある団体の収支報告書に違和感を覚えたからです。
「なぜ、個人献金をした人がほぼ全員同じ肩書なのだろうか」
収支報告書には、献金をした人の名前や住所、そして献金額に加えて肩書も書かれています。
一般的には「会社役員」や「自営業」の肩書が多いなか、この団体に個人献金をしたほぼ全員のおよそ100人がみな「施設職員」だったのです。
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政治とカネの問題に詳しい神戸学院大学法学部の上脇博之教授は、「政治団体が社会福祉法人を悪用しているケースだ」としたうえで「職場の関係を悪用して強制的に寄付をさせているように思われる。政治資金規正法に触れるか、そこまでいかなくても政治的道義的に問題があったと考えるべきだ」と指摘しています。
社会福祉法人や施設を指導監督する立場にある長崎県や佐世保市のチェック機能も厳しく問われています。
「企業・団体ぐるみ選挙」は、その問題が指摘されながら依然として続けられています。政治献金や選挙運動は、個人の思想信条の自由に深く関わります。企業や団体は、意図にかかわらず、雇用関係が人の意思を拘束する可能性があることに配慮して、職場での政治活動については慎重であるべきではないでしょうか。