明日までは天気がよさそうな札幌から、ren.です。
やっぱり、雪祭りが終わると天気が安定するなぁ(w
明日まだ様子がよかったら、近代美術館に「Ainu Art」展を観てこようかしら。
さて、今日はこちら。
● 「未完少女ラヴクラフト」 黒史郎 スマッシュ文庫
クトゥルフ神話をご存知の方なら、必ず完全に表紙買いするはず(w
知らない方のために、こちらもどうぞ。
● 「ラヴクラフト全集」 創元推理文庫
あとがきで作者さんも、この表紙について言及しています。
さらに、帯にも。
でも、この表紙じゃなかったら、私は絶対に店頭で見落としていたと思うから、正解かと(w
せっかくなので背表紙の色も変えて欲しかったけれど、そこまでは高望みですな。
ちなみに、こちらでは、表紙と帯のネタで遊ばれています。
しかし、ただの遊びではなく、ラヴクラフト関連著作の帯コレクションという、資料的価値も。
本作中でも言及されている、ラヴクラフトの女装姿もちらり(w
さて、本の中身について。
「妖神グルメ」から「ニャル子さん」にいたるまで、和製クトゥルフ神話の血族は、本格怪奇小説からライトノベルまで、脈々と文学界を侵食し続けてきましたが、意外に誰も手を出さなかった(出せなかった?)のがラヴクラフト本人の美少女化です。
本作はそれに挑戦するだけでなく、一発ネタではない理由をクトゥルフ神話原典や派生作品、そして元ネタとなる古代神話にいたるまでにしっかりと求められており、ラヴクラフトファンも納得できる設定になっています。
内容もラノベ特有のジュブナイルのラインは守りつつ、「未知なるカダスを夢に求めて」のような狂気的な異世界冒険譚が題材。
全体的には「不思議の国のアリス」や「オズの魔法使い」のような読み進めやすい筋立てで、しかし、もちろん出会うのはウサギやカカシではなく、化け物とも一口に名状しがたきモノ共達。
クトゥルフ神話のエッセンスがそこかしこに潜み、ファンを喜ばせるだけでなく、脚注には簡潔な説明書きも用意されており、初心者の入門書としてもお勧めできます。
原典などを読んでから、もう一度読み返すと、さらに理解が深まるでしょう。
主人公は、アーカム(と、地名変更が行われたマサチューセッツ州の町)に住む、美少女と見まごう少年、カンナ。
見た目だけでなく、気も心も弱く、些細なショックで気絶や混乱、失禁してしまうという、SAN基本値の低い彼は、ひょんなことから裏側の世界"スウシャイ"へと迷い込んでしまう。
そこで出遭ったのが、ラヴクラフト本人を名乗る少女、ラヴ。
カンナは元の世界に戻るため、ラヴとともに禁断の知識を求めて旅を始める。
原典の何度も機械翻訳を繰り返したような難解な文章ほどではありませんが、場面によっては脳が理解を拒むような文体をよく再現しており、それがラノベ的なゆるいシーンとのギャップを生んで、より恐怖や奇怪さを感じさせます。
これが狙ってか狙わずか、カンナへの感情移入がしやすくなる仕掛けになっています。
耳慣れないカタカナ語も多く登場しますが、一つ一つが丁寧に表現・解説されているため、読み進めるうちに「ユッグゴッツってなんだっけ?」というようなことはないはずです。
クトゥルフ神話作品だけに気色の悪い場面も多いですが、そこはラノベのお約束。
ネタバレは避けますが、しっかりとしたボーイ・ミーツ・ガールでした……ラヴの中身は面長のおっさんだけど(w