19世紀フランスの画家カミーユ・コロー(1796-1875)の作品を見に雨が降る中、出かけた。
「ピエルフォン城の眺め」(1834年頃)が洒落ている。個人の印象が重視され光鮮やかに城が輝いて浮かび上がる。
「ドゥエの鐘楼」(1871)は印象派のシスレーの作品に霊感を与えた。
構図に関しルノワールまたモネの作品に影響を与えたのは「葉むら越しに見たヴィル=ダヴレーの池」(1871)である。
コローの「傾いだ木」(1865頃)は自然の中にある音楽的リズムを思い起こさせる。
人だかりがしていた「真珠の女」(1858-1868)は確かにモナリザを思わせるが年齢が若い。
「マンドリンを手に夢想する女」(1860-65)に見られるような時間・場所に縛られない抽象性はブラック、ピカソ、マティスに影響を与える。
コロー78歳の作品であるにもかかわらず「青い服の婦人」(1874)は青色の鮮烈さが若々しい。
構図にリズムを感じまた素晴らしいのは「サン=ル=ノーブルの道」(1873)である。ここでコローは風景とであったときの最初の感情を描くことをめざした。これは抽象画のカンディンスキーに深い影響を与える。
「モルトフォンテーヌの想い出」(1864)では霧の風景の中、木々と空が境界を持たず相互に溶け合う。コローの自然観がここに象徴的に示されている。ナポレオン3世がこの絵を気に入って購入した。
コローの死後、彼を“真の芸術家”と呼んだのはドラクロアである。
このコロー展を通して彼が風景画家であるだけでなく人物画も素晴らしく、また絵画への視点に関し多くの後の世代の画家たちに深い印象を与えたことがあらためて確認された。