退職金制度をもたない中小・零細企業の従業員が加入する中小企業退職金共済(中退共)が、平成25年3月期に資産運用で累積損失を解消したことが21日、分かった。
累積損失は、24年3月末時点で1741億円に上っていたが、円安と国内株式市場の相場回復が寄与した。
運用の好調が続けば、退職金に上乗せする付加給付が復活する可能性がある。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」効果は大企業を中心に現れているが、従業員の退職金アップの形で中小・零細企業に波及しつつある。
中退共は、資産運用の7割を国内株式、債券に投資しており、リーマン・ショックがあった21年3月期に運用で1698億円の赤字を計上。24年3月末時点では1741億円の累積損失があった。それが25年3月期は、安倍政権発足後の株価上昇が寄与したほか、円安により外貨建て資産の円換算価値が上がったことなどで、2590億円の黒字を上げて累損を一掃。費用や経費を除いても利益剰余金(内部留保)538億円を確保した。今後、累積損失が解消されるまで見送られていた付加給付が復活することも考えられる。
ただ、25年3月期まで年間28万件、3700億円台だった退職金支給額が、今期は4~10月の半期だけで約17万件、2300億円に増加しており財務状態の改善に水を差す恐れもある。
掛け金に国や自治体の助成があり、非課税扱いとなる中退共には、25年10月末時点で36万3306社(従業員328万501人)が加入している。資産運用残高は3月末比3・6%増の4兆1679億円。