久しぶりのタクシー

2005年09月25日 | 健康・病気

昨夜は九想話を書けなかった。
これはあいかわらず、私の酒のせいです。
かなり反省しています。

昨日、仕事が終わって職員会議のあと酒を飲んだ。
場所は上福岡の「江戸切りそば 英」というそば屋です。
ジャズがBGMに流れているいい雰囲気のそば屋だった。
そこで飲んだ「獺祭(だっさい)」という酒がまずかった。
いや、酒の味は最高といっていいくらい美味しかった。
だから何杯も飲んでしまい“まずかった”。
これから獺祭があったら必ず飲もうと思っています。
ほんとうにうまい酒だった。

何時頃上福岡駅で電車に乗ったのだろう。
朝霞台駅で、東武東上線から武蔵野線に乗り換え
所沢に帰るつもりだった。
ところが目が覚めたら池袋だった。
しかたなしに西武池袋線に乗って帰ろうとしたら、
保谷駅止まりだった。
平日ならまだ所沢までの電車はある時刻(12時半頃)なのに、
土曜日なのでそれが最終だった。

保谷駅で降りると雨が降っていた。
私は傘をさして歩き始めた。
所沢まで歩いて帰ろうと思った。
年収300万ちょっとの私なんかタクシーなど乗れない。
私だって45歳までは年収600万はあったんだけどな…。
酔っぱらって歩くのはわるくない。

女房にケータイでそのときのいきさつをメールする。
「タクシーで帰ってきなよ」とすぐ返事がくる。
(そりゃおれだってこんな真夜中に歩きたくない。
 50過ぎてタクシーも乗れない年収の仕事を
 おれはしているのだ)
などと、うだうだ考えながらとぼとぼ歩いた。
こんなことだったらiPodでも持ってくるんだったな。

そのうち雨が上がった。
少しの間、線路を歩いた。
枕木と歩幅が合わなかった。
砂利がごつごつして歩きずらかった。
道路に戻る。
車は少なかったが、タクシーが何台も通り過ぎていく。
それも空車が多かった。
へんだとは考えたが、気にしなかった。
「道を知っていれば車で迎えに行くんだけど」
などと女房からメールが来る。
「危ないからいいよ。歩いて行くよ」

駅が見えた。大泉学園駅らしい。
保谷と大泉学園との位置関係はどうだったっけ?
酔っている私はかまわず歩いた。
しかし、さすがにこの年になると足が疲れた。
1時間も歩いていると足が動かなくなってきた。
24、5のとき川越から東京まで
5時間ほどで歩いたことがある。

財布には6,000円しかない。
おそらくタクシーで行くと所沢までは足りない。
でも、もう限界だった。タクシーを停めた。
「所沢までお願いします」とドライバーにいうと、
「お客さん、反対の方向に歩いてましたね」という。
バカだった。私は東京方面に向かって歩いていたのだ。
それから運転手にタクシーを乗るまでのことを話した。

「おれも、タクシードライバーに
 なろうとしたときがあったんです」
そんなことをつい話してしまった。
45歳で会社がなくなり、
就職できなかったらタクシーに乗ろうと思っていた。
しかし、どう考えても運転のへたな私がなれるはずがない。
幸いにも会社に就職できた。
そんなことをしゃべると、運転手は、
「私も1年半ほど無職のときがありました。
 あのときは辛かったな」といった。

タクシーに乗るとき、ドライバーの顔をちょっと見た。
無精髭をはやしていたが、40代ぐらいだった。
やさしい目をしていたのが印象的だった。
くわしいことを訊くのはわるいので自分のことを話した。
「そのとき入った会社が、51 のとき閉鎖しましてね」
「それは、どうも…、大変だったですね」
「親会社の都合なんです。会社ごとリストラですよ」
「そんなこともあるんですね」
「今は、縁があって知的障害者と一緒に働いています」
「そうですか」
それから私は、ダウン症、自閉症などのことを話した。

メーターを見ると、5,000円を越えていた。
まわりを見ると東村山だった(所沢の隣の市です)。
「運転手さん、おれ今6,000円しか持ってないんです。
 この辺から歩いていきますから降ろして下さい」
「いいですよ。これから所沢までまだありますよ。
 気にしないで下さい」

「運転手さんは、インターネットはやりますか?」
「やりたいんですが、難しそうで…」
「おれは九想庵というサイトを持っていて
 毎日、クソ話を書いているんです。
 今日は、あなたのこと書かせてもらいます」

けっきょく、タクシーは新所沢の団地まで行ってくれた。
私は財布から5,000円札と1,000円札を運転手に渡した。
「申し訳ないです。お世話になりました。楽しかったです」
「私もです」

電車に乗り過ごして池袋まで行ったときは自己嫌悪。
保谷駅で電車がないことを知ったときは西武鉄道を呪ったが、
そのお陰で、心やさしいタクシードライバーに出会えた。
こんなことは人生で滅多にないと思う。
タクシーを降りたときのメーターは、7,840円だった。
1,840円は運転手が自腹を切るのだろうか。
こんなことがあると、人生まんざらでもないと思う。

コメント
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