負け惜しみ

2002年07月25日 | 小説 エッセイ

11時からの「ETV2002」教育テレビを観た。
川上弘美さんと松山巌氏が、
恋愛とは何か、そして孤独とは何か。
ということを話していた。
「人間と関係することがいやだ」
というようなことを川上弘美さんがいっていた。
「いやだけど、ふっと、恋愛したり、友だちになってしまう」
まったくそのとおりだ。
人間と関わりをもつことが煩わしい。
ひとりで生きていけるのならそうしたい。
でも、おれみたいな淋しがりやはそうもいかない。
孤独に憧れているくせに、ひとりが嫌いだ。

(煙草が吸いたい。でも、ない)

川上弘美さんを久しぶりに観て、
ああ…、変わってないな、と思った。
7、8年前か、ASAHIネットのオフで
池袋の飲み屋で話したことを思い出す。
あの頃彼女は、普通の主婦だった。
それが今では、有名な作家だ。
おれはリストラなどを経験して小さな会社の末端社員。
このことにおれは、こだわっていこう。
この“情けなさ”を心に抱いて生きていくんだ。

番組が終わる5分前ぐらいに、
女房から電話がかかってきた。
「雨降ってるから、迎えに来て」という。
今日は、フラメンコのカンテ(歌)の練習日だった。
テレビに心を残しながらも、家を出た。
フラメンコのスタジオは家から7、8分のパルコにある。
スタジオ前に着くと、
ちょうど女房たちが出てきた。
先生とギターの青年に挨拶した。

女房と家に向かって歩きながら、いった。
「おれは、小説あきらめないよ」
でました、九想の負け惜しみ。
雨は小降りになってしまった。
持っていった傘を、女房はたたもうとした。
「せっかく持って来たんだから、させよ」

コメント
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