その話、何度も聞いてるよ

1998年09月27日 | 健康・病気

 Uは、自分の高校の文化祭に行き、まだ帰ってこない。Kは、昨夜家に泊ま
った友だちと出かけている。女房は、先日亡くなった会社の人のお通夜に夕方
出かけた。
 私は、なんとも暗い気持ちで一人家にいた。
 相撲を見た後、6時10分からの「特報・首都圏98 昨日のことが記憶で
きない・交通事故が奪う“脳機能”」というNHKの番組を見た。
 交通事故で脳の機能が奪われ、記憶力が衰えた若い人のことを報道していた。
 近くのスーパーマーケットに買い物にいっても、帰り道が分からなくなる女
性、仕事を教わってもなかなか覚えられない男性。
 男性は、今は仕事を覚えスーパーマーケットに就職し、パソコンでプライス
を作る仕事をしている。女性は、毎日家にいる。両親は、「この子のことを考
えると、心配で死ねない」といっていた。
 私もあらためて、交通事故には気をつけようと思った。車を運転する現在の
私は、加害者になる確率が高いはずだ。
 7時前、シャワーを浴びてるとKが帰ってきた。
「晩飯、Uが帰ってきてからでいい」
 と訊くと、
「お腹が空いてるからすぐ食べたい」
 という。
 女房が作っていった、肉じゃがと野菜の天ぷらで、Kは食事した。私は、ビ
ールを出し飲んだ。
 テレビでは、「K1グランプリ」をやっていた。Kが好きなのだ。
 K1のこと、私はあまり知らないので、Kにいろいろ質問した。
 見ていて、ふっと23歳で死んだ友人を思い出した。一昨年、Kと山口まで
墓参りに行った岡本のことを。彼は一緒の会社で仕事をしていた20歳のとき、
ボクサーのプロテストを受けて合格したが、人に殴られること、人を殴ること
が恐くなってボクシングを辞めたのだ。
 テレビがCMになったとき、
「岡本がいってたよ。『試合の前の夜、恐くて眠れないんだよ』って」
 私が、Kにいうと、
「その話、何度も聞いてるよ」
 と、唇の端をゆがめていった。
(ああ…、またおれはやってしまった)
 いつも女房にバカにされてるのだ。「ヒサシ君は、何度もなんども同じ話す
るんだから」と…。
 私は、明日の会社のことを考えるととても憂鬱なのに、それ以上に立ち直れ
ない気分になった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする