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まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

小川洋子 「カラーひよことコーヒー豆」を読んで

2010-02-19 13:54:12 | book

雑誌「Donami」に連載されていたものをまとめた、小川洋子さんの最新エッセイ集です。
NHKラジオ土曜日朝の番組、「著者に聞きたい本のツボ」でも紹介されていました。

          *  *  *  *  *

■ 私が、この本を「是非、読みたい!」と思ったのは、上のラジオ番組がきっかけでした。
  本の中身そのものよりは、小川洋子さんの誠実で丁寧な語り口に魅せられてしまったから。

■ ラジオですから、もちろん耳で聴いて、イメージを頭の中で想像するしかないのですが、
  お人柄が滲み出てくるようなインタビュー。 「きっと文章もそうだろう!」と思った訳です。

■ 番組の中では、「小さな命に救われながら」というエッセイが採り上げられていました。
  小川さんと二歳になる姪のAちゃんとの、心温まるお電話でのやりとり(?)です。

■ 読書の傾向でもそうなんですが、私は、あまり冒険はしない「慎重派」タイプです。
  だから、これまで読んだことのない作家の作品は、どうしても気がひけていたのですが…

■ それでも、今こうしてブログの記事に書けることを、とてもうれしく思っています。
  一冊の本との出会い。 ブログをご覧いただいている皆さまにも、そんなきっかけになれば♪

          *  *  *  *  *

題名の「カラーひよこ」は、昔、縁日で売っていたらしい?色付けられたひよこのこと。
そして、小川さんの愛犬にできたイボの形状が、「コーヒー豆」にそっくりなんですって!?

Hiyoko 

コメント (2)
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万城目学 「鴨川ホルモー」を読んで

2010-02-15 13:32:44 | book

万城目学さんの、なんとこれがデビュー作! 映画化もされ、ずいぶん話題になった作品です。
私は、最初に「鹿男」を読んで、続いて「プリンセス」。 そして、この「ホルモー」です。

            *  *  *  *  *

■ タイトルの「ホルモー」とは、いったい何語なのか? 意味不明の謎めいた言葉です。
  どうやら、「オニ?」を使った、大学(サークル)対抗の対戦型ゲームのようですが…?!

■ 京都の市中が舞台となっています。 身近で懐かしくもある地名が幾つも登場してきます。
  本を読みながら、学生時代の思い出に浸ること、しばし…♪ みんな、今どうしてるかな?

■ 登場する学生たちは、京都市内の東西南北にキャンパスをもつ大学に通っています。
  幸か不幸か、私の母校は真ん中あたりに位置するので、ホルモーには不参加のようです。

■ 各大学のクラブ・サークル内には、代々伝えられてきた「儀式」があるんですねー!
  もう時効ですが、KBS京都あたりで放送されると、問題になりそうなものもありました。

■ さすが、京大生! 何気ない会話の端々にも「いんてりじぇんす」を感じさせます。
  こういう時、「イカキョー」と言うのだそうです。 ← 「いかにも京大生」の略だって!

■ 読者の想像を越えた、荒唐無稽・奇想天外なストーリーが展開されていきますが、
  陰陽五行説とか四神図が下地になっているので、妙な「説得力」を感じてしまいます。

            *  *  *  *  *

「京都文学散歩」という本があるくらい、古今、京都を舞台とした文学作品は数知れません。 
そして、この「鴨川ホルモー」も、その中の一冊に加えられる、新たな小説になると思います。

Horumo

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万城目学 「プリンセス・トヨトミ」を読んで

2010-02-07 09:07:00 | book

前作の「鹿男あをによし」と同じく、この小説も歴史的な史実がベースになっています。
そこから展開される、まさに「マキメ・ワールド」呼ばれる世界! 最高傑作との呼び声も!

            *  *  *  *  *

■ 題名の「トヨトミ」とは、天下統一を成し遂げた「太閤」さんの「豊臣」氏のことです。
  そうすると、滅亡したはずの豊臣氏の王女様が、まだこの世に存在するのでしょうか?!

■ 物語は、大阪を訪れた会計検査院第6局検査官の実地検査にしたがって進行していきます。
  そして、突き当たったのが「社団法人OJO」という、謎めいた組織の存在。 

■ ここから先は、これから読まれる方のために触れることは差し控えたいと思いますが、
  例の「王女」の存在をめぐり、「大阪(都市機能)全停止」という尋常ならざる事態に!?

■ 物語では、豊臣家ゆかりの大名や家臣と同じ「姓」をもつ人物が、続々と登場してきます。
  その末裔とオーバーラップする人たちが奔走する様は、現代版「歴史絵巻」のようです。

            *  *  *  *  *

■ お読みになった大阪の男性諸氏は、心意気と誇り、連帯意識を強く感じられるでしょう!
  それと同時に、大阪の女性の皆さんは、大きな共感と満足感を得られることと思います。

■ 「京都人」の私は、そんな「大阪の人」たちに、つい、羨望の思いを抱いてしまいます。
  「大阪人」気質の根源には、こういう精神的風土、拠りどころがあるのでしょうねー。

■ この小説の魅力は、「前代未聞・驚天動地のエンターテインメント」性にあるわけですが、
  同時に、家族とか近隣社会の担ってきた機能・役割にも、光りを投じている点にあります。

■ 親から子へ(父から息子へ、母から娘へ)、そして、その子が親となって、自分の子へ。
  世代を越えて脈々と伝えられていく「大切なもの」が、今もしっかりと根付いている…??

            *  *  *  *  *

余談ですが、現大阪府知事は、さかんに、地域主権・地方分権・道州制導入を提唱しています。
知事が、例の「OJO」のメンバーであるどうかは未確認ですが、ちょっと興味をそそります。

Toyotomi

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万城目学 「鹿男あをによし」を読んで

2010-01-19 21:42:04 | book

題名の「あをによし」とは、「奈良」という言葉をリズムよく導き出すための枕詞。
そして、その「奈良」は今年、平城遷都1300年のメモリアル・イヤーを迎えました。

            *  *  *  *  *

■ 主人公の青年は、産休教員の代理として、奈良の女子高に赴任してきた現役の大学院生。
  そして、奈良にやって来てほどなく、なんと、公園の鹿から話しかけられるのです?!

■ 古くからの民間伝承をベースに、世にも不思議なストーリーが展開されていきますが、
  主な舞台が学校ということもあって、「青春学園物語」のような感覚でスイスイ読めます。

■ おまけに、私の住んでいる京都(伏見)も、物語の重要な舞台のひとつになっています。
  近鉄・京阪電車、ついでに奈良健康ランドとくれば、親近感が湧かないはずはありません。

            *  *  *  *  *

■ 全体の4分の3を読んだあたりで、いろいろな「?」が一挙にクリアになります。
  「ああ、そういうことかー!」と、前半のその場面に戻って読み返したいくらいです。

■ さらに、その「?」は、古代史最大のミステリー&ロマンへと繋がっていくのです。
  この壮大なストーリーの流れには、思わず「ぞくぞく!」とくるような興奮を覚えます。

■ 物語がクライマックスを迎えた後も、なかなか気の利いた「演出」が施されています。
  爽やかな感動と余韻を残しつつ、とても素敵なエンディングが用意されています。

            *  *  *  *  *

著者の万城目(まきめ)学さんは出身が大阪で、学生時代を京都で過ごされたそうです。
物語の「小道具」にも落語が出てきますが、関西人らしい笑いのセンスにも好感が持てます。

Sikao

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石田衣良 「再生」を読んで

2010-01-09 14:07:18 | book

私が、「この本を読もう!」と思ったのは、NHKのラジオ番組で紹介されていたからでした。
著者ご当人が、執筆中のエピソードを交えながら、本の「ツボ」を教えてくださいました。

            *  *  *  *  *

■ 最初の短編は、標題作の「再生」。 「あれっ、こんな小説なの?」と、意外な感じ。
  ファンタジー仕立てのストーリーで、ヒットしたハリウッド映画ような印象を受けます。

■ どことなく作為的な感じのストーリーが続き、ついつい突っ込みも入れたくなります。
  本の帯に書いてある「平凡な日常に舞い降りた小さな奇蹟」とは、このことなのですか?

■ けれど、こうした「負」の印象を一掃してしまうのが、「東京地理試験」という作品。
  石田さんがたまたま乗り合わせたタクシー。 その運転手さんが語った心温まる体験談。

■ 上のお話(↑)のように、ストーリーの多くは、実際の体験談がベースになっています。
  私たちの身の周りにいる、悩みを抱え、不安感に苛まれ、苦しんでいる人たちの物語。

■ 暗いトンネルの中で出口を見失った人たちが、やっとの思いで見つけた一筋の明かり。
  そして、「再生」に向けて、小さいけれど、確かな一歩を踏み出す様が描かれています。
 
■ 完全に抜け出すまでには、まだまだ克服すべき試練が待ち受けていることでしょう。
  それでも、何かしら明るい希望、前に進む勇気を感じさせながら、物語は結ばれています。

■ 文芸誌に最初の作品が掲載されたのが、06年の12月。 その後、約3年間続きます。
  最初のファンタジー調から、石田さんの筆致が少しずつ変化していくのも、興味深いです。

            *  *  *  *  *

最後は余談。「石田衣良」というペンネーム、いったいどう読むの? 女性作家なの?
例のラジオ番組で、「いしだいら(石平?)」という本名から採ったと、披露されていました。

Saisei

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