まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

第20回 京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート

2016-09-19 19:37:18 | kyokyo
2016年9月18日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 下野 竜也(常任客演) / ヴァイオリン : 三浦 文彰 / 管弦楽 : 京都市交響楽団


            *  *  *  *  *

● すぎやまこういち : 序奏MIYAKO(委嘱作品・世界初演)
すぎやまさんと言えば、ここ数年来の「ドラクエ」コンサートの開催や指揮が、話題になっています。
それでも、元々は敏腕の音楽プロデューサー。 経歴を拝見すると、なんと東京大学のご出身でした。

第20回を数える「京都の秋 音楽祭」の委嘱作品であり、京響創立60周年のお祝いを兼ねたもの。
勇壮なファンファーレと「越天楽」のモチーフからの展開。 作曲者としての高い能力がうかがい知れます。

委嘱作品で世界初演となれば、ご本人の登場も!と期待しましたが、さすがにそれは高望みというもの。
京響で言えば、12月には「くるり」の岸田繁さん作曲の交響曲初演も控え、新たな試みが続きます。

● シューマン : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
シューマンの4つの交響曲やピアノ協奏曲は演奏会でもよく採り上げられますが、この曲は希少作品。
1853年の作品ですが、初演と出版は没後の1937年になってからの実現。 いわくつきの作品です。

エンタメ性あふれる「超絶技巧」で魅せる三浦文彰さんですが、今日は落ち着いた雰囲気が漂う独奏。
第2楽章で奏される深沈として慈愛に満ちた独奏は、しみじみと心に染み入るような美しさを持っています。

聴きようによっては、凡庸で冗長な印象を与えかねない第3楽章の対処にも、下野さんのセンスの良さが。
愛らしくチャーミングで、喜びが湧き上がってくるようです。 オーケストラのコントロールも、実にお見事。

● マーラー : 交響曲第1番 ニ長調 「巨人」
この曲は、2014年3月の定期で広上さんの指揮で聴いています。 NHK・Eテレでも全国放送されました。
その後のサントリー賞の受賞や欧州公演の成功を経て、さらにスケール、パワーがアップした感の京響。

下野さんのきびきびとした躍動感のある指揮。 それに、すかさず反応する京響の高い機能性と演奏能力。
指揮者とオーケストラが一体となる「美しい」瞬間が何度も何度も訪れる、極めて完成度の高いものでした。

実演とCDの違いこそあれ、海外の著名な指揮者やオーケストラの演奏と比べても、遜色のないものでした。
広上さん、高関さん、そして、下野さんという指揮者3人体制の豪華さと贅沢さを、あらためて感じました。

            *  *  *  *  *

演奏会の終了後、ホールの外は、まるで最終楽章のフィナーレを思わせるような凄まじいゲリラ豪雨。
この日の演奏のことを忘れないで、ずっと記憶にとどめておくには十分過ぎるくらい強烈なインパクト。

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京響スーパーコンサート

2016-09-12 21:24:18 | kyokyo
2016年9月11日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 広上 淳一 / ヴァイオリン独奏 : 五嶋 みどり / 管弦楽 : 京都市交響楽団


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● モーツァルト : 歌劇「後宮からの逃走」序曲
あるプログラムには「後宮からの誘拐」ともありますが、これはドイツ語訳の違いで、同一の作品。
ストーリーの展開から言うと、「逃走」の訳の方がピッタリくるようです。 簡単に言うと、恋人の救出劇。

全体は「急-緩-急」の構成になっているようですが、軽快できびきびとした曲調が印象に残ります。
モーツァルトらしい、魅惑的で躍動感のある旋律。 オーケストラの機能性の高さを発揮した演奏でした。

● チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品.35
五嶋みどりさんの独奏を聴くのは、京都コンサートホールの開館15周年記念コンサート以来のこと。
その時はベートーヴェンの協奏曲でしたが、凄まじいばかりの集中力と求心力で圧倒的な存在感でした。

今回も、それに優るとも劣らない熱演。 緩急や音域を問わず、雄弁で説得力のあるヴァイオリン独奏。
呼応するオーケストラも、丁寧で配慮が感じられる、リレーの「バトン」の受け渡しを思わせるものでした。

第1楽章の終わりには、思わず大きな拍手が起こってしまいましたが、それだけ燃焼力が高かった証し。
アンコール曲のJ・S・バッハのパルティータも高い精神性が感じられ、心に染み入るような演奏でした。

● リムスキー=コルサコフ : 交響組曲「シェエラザード」作品.35
プロジェクション・マッピングでの一部演奏も含めると、京響でこの曲を聴くのは、これで4回目になります。
その間、5年余の期間がありますが、京響の演奏力の向上もあり、今回が最も充実したように感じました。

広上さんの指揮に即座に対応して、自由自在に動くテンポ。 常任指揮者ならではの手腕を感じました。
聴かせどころ満載の管楽器パートも、それぞれが個性的で色彩感に富み、存分に楽しませてくれました。

この創立60周年記念ツアーでのコンサートマスターは、室内楽の分野でも活躍されている豊嶋泰嗣さん。
フルートのトップは、大フィルの上野さんとのこと。 オーケストラ間の人的交流の柔軟性も興味深いところ。

            *  *  *  *  *

今日の演奏会は、「静岡-刈谷-三重」と続いた東海地方を巡るツアーの4日目に当たるものでした。
土日昼の時間帯なら、十分「遠征」可能な範囲。 是非、京都コンサートホールにもお越しくださいませ。

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