まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第666回定期演奏会

2022-04-23 17:19:21 | kyokyo
2022年4月22日(金)19:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : ミハウ・ネステロヴィチ / 独奏 : 郷古 廉(ヴァイオリン) / 管弦楽 : 京都市交響楽団

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● キラール : 弦楽オーケストラのためのオラヴァ
昨今、ニュースでも耳にするウクライナのリビウ出身のポーランドの作曲家。 標題の「オラヴァ」とは川の名前。
映画音楽の世界でも有名な方だそうで、近年では「戦場のピアニスト」の音楽を担当されたとか。 一気に親近感。

全体の構成は、スメタナの「モルダウ」を連想させるもの。 源流域の泉から発し、滔々と流れゆく情景が浮かぶ。
民族色豊かな楽想が、斬新なアイデアによって次々と展開されていく。 京響の精緻で、強靭な弦楽アンサンブル。

● メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
個人的には余り聴く機会はありませんが、メンデルスゾーンは、とても優れた「メロディーメーカー」だと再認識。
冒頭の「あわあわと」揺れ動くような導入の下、独奏ヴァイオリンが登場するところなど、ぞくぞくするような感。

独奏は郷古廉(ごうこ・すなお)さん。 以前、井上道義さん指揮の京響定期の際に協演されて以来になるのかも?
伸びやかで「素直」な音色。 気負いや力みなども感じられず、まだまだ余力を感じさせる安定のパフォーマンス。

より緊迫感が増し、スリリングな展開のプロコフィエフやストラヴィンスキーの協奏曲なども、是非聴いてみたい。
ネステロヴィチ=京響も、好感の持てるサポートぶり。 オーケストレーションの巧みさが、管楽器の妙技を生かす。

● ブラームス : 交響曲第1番 ハ短調 作品68
普通にやれば、感動するように出来ている名曲中の名曲。 聴衆もそれぞれに、好みの演奏の形を持っているはず。
それだけに、指揮者の力量をはかる上では打ってつけの楽曲。 どれだけ、自らの個性や新味を表現できるかが鍵。

長いリーチを利した表現豊かな手振りで、オーケストラを巧みにドライブする。 初顔合わせとは思えないくらい。
全体的に音は大きめ。 くっきりとした輪郭線を描き、明瞭な音楽づくり。 久しぶりに「鳴らす」指揮者の登場だ。

ここ最近の演奏では、円熟味のある均整のとれたサウンドを聴かせてきた京響。 但し、やや「大人しめ」の感も。
個人的には、こういう熱量の高い京響が聴きたかった。 名手をそろえた各パートも、競い合うように妙技を披露。

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演奏会の最後に、ロシア軍の侵攻により犠牲となったウクライナの人々に、同国の作曲家による作品が捧げられた。
しみじみとした情感のあふれる曲想。 現地の悲惨の映像を思い浮かべつつ、一日も早い平和の訪れを祈るばかり。


コメント
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