「小澤征爾×村上春樹」 音楽と文学という垣根を超えた、二大巨匠による珠玉の対話集。
「心の響き」を求めて耳を澄ませる小説家に、マエストロは率直に自らの音楽を語った。
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(インタビューでは)好奇心旺盛な、できるだけ正直な素人の聞き手であることを心がけた。
村上春樹さんの自然体の姿勢が、小澤征爾さんの心の「構え」を少しずつ溶かしていきます。
「さすが、小説家!」と唸らざるをえない、村上さんから紡ぎだされる的確で巧みな表現。
その言葉に触発されるように、小澤さんの思考も音楽(芸術)の核心へと向かっていきます。
「大物」同士の対談は、結局は上手く噛み合わず、すれ違いになるケースも多いと聞きます。
もちろん、認識の違いがぶつかり合いますが、そこから生み出される新たな発見と共感。
レコードやCDでの演奏を聴きながら進められていく対話。 一緒に聴いているような贅沢さ。
そして、「実際にCDを流しながら、読んでみたいっ!」という誘惑に駆られてしまいます。
「そういえば、俺これまで、こういう話をきちんとしたことなかったねえ」と語った小澤さん。
クラシック音楽の愛好者の方が本当に聞きたかった、興味深いエピソードが満載の一冊です。
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あとがきの中で小澤さんは、京都で毎年行われている「音楽塾」について触れられています。
去年は、小澤さんの体調不良でコンサートが中止になってしまったのは、本当に残念でした。