まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

万城目学さん 「とっぴんぱらりの風太郎」を読んで

2013-10-31 18:48:21 | book

万城目さん、2年ぶり待望の新刊は、なんと「国語辞典」ばりの分厚さを誇る時代小説長編。
伊賀柘植の落ちこぼれ忍者、現在はニート生活を送っている風太郎(ぷうたろう)が主人公。

            *  *  *  *  *

● ひょうたんから…
冗談のような意外なものが飛び出した時に使うことわざですが、出てきたのは「駒」ならぬ
もはやレジェンドとなった幻術師「果心居士」の片割れと称する「因心居士」。 何の因果か?

● ひさご様
物語半ばから登場する「謎」の人物。 高台院ねね様との関係から容易に特定できますが…。
従来のイメージよりは、大らかでユーモラス。 「さよか」(左様か)という口癖も大坂風だ。

● 著者、新境地!
戦場における殺戮、とりわけ、まだ年端もいかぬ若者たちが無残に命を落としていくシーン。
文章から滲み出る悲惨さ、無情さ、無意味さ。 これまでの作品には感じられなかった情感。

● 滅びの美学
燃え盛る大坂城とともに滅びゆく豊臣家。 凄惨を極める大坂夏の陣。 渦中の風太郎たち。
臨場感あふれる迫力満点の描写の中に、万城目さんの「大坂愛」「豊臣愛」「美学」を見る。

● 信頼と友情、覚悟
栄達とか利害関係を度外視して、己を信じてくれた人への信頼と友情に応えたいという思い。
そして、自己犠牲も厭わない覚悟が死の恐怖を超える! 彼らが命を賭けて守ったものとは。

● プリンセス・トヨトミ
さすがに、当代きっての「幻術師」、万城目学! 壮大な「仕掛け」が用意されていました。 
なんと、風太郎決死の「脱出劇」は、「プリンセス・トヨトミ」のプロローグだったのです。

            *  *  *  *  *

現在、出版元の文藝春秋社では、この作品のキャッチー・コピーのコンテストを実施中です。
万城目さんが選ぶ最優秀作品には、「サイン入り・因心居士のひょうたん」がもらえるのだ!

Pootaro

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京都市交響楽団 第573回定期演奏会

2013-10-22 10:46:34 | kyokyo

2013年10月20日(日) 14:30 開演 @京都コンサートホール
指揮 : ジョン・アクセルロッド / 独奏 : アレクサンドラ・スム(ヴァイオリン)

            *  *  *  *  *

● ベートーヴェン : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品.61
京都コンサートホール15周年記念コンサートでの、五嶋みどりさんの独奏は圧巻のひと言。
圧倒的な存在感、研ぎ澄まされた集中力、そして、息を飲むような美しさ。 感動的な名演。

今回のスムさんの独奏には、みどりさんとは異なる、ゆったりと包み込むような安らぎが。
リラックスした雰囲気の中で、音楽に浸ることが出来ました。 カデンツァも堂々としたもの。

アクセルロッドさんの溌剌とした指揮に応えた京響の演奏も好調をキープ、充実した響き。
従来のよく「鳴る」という印象に加え、ここ最近では、弱音での精緻なアンサンブルも快い。

私の場合は、五嶋みどりさんの体験というのがあって、今回のスムさんの演奏を聴きました。
その「下敷き」の違いによって、私と全く違う感想を抱かれた方も当然いらっしゃるはず。

            *  *  *  *  *

● ワーグナー : 楽劇「ワルキューレ」第3幕から「ワルキューレの騎行」
この曲は、フランシス・F・コッポラ監督作品「地獄の黙示録」の中で使われ、より有名に!
アメリカ軍の攻撃用ヘリコプター部隊が編隊を組んで、入り江を渡って襲来してくるシーン。

ワルキューレとは、馬にまたがり天空を駆け巡る「戦場の女神」たちのことを言うそうです。
勇壮な「ワルキューレの動機」が繰り返され、ワグネリアンならずとも気持ちが高揚します。

ヘリコプター部隊による、激しい戦闘シーンのイメージが影響したことは否定できません。
もっと「ド迫力」の演奏を想定していましたが、「ド」の取れた抑え気味の表現だったかも?

            *  *  *  *  *

● ワーグナー : 楽劇「神々のたそがれ」第3幕から「ジークフリートの死と葬送行進曲」
陰謀や策略に巻き込まれ非業の死を遂げた英雄、ジークフリートの亡骸を運ぶ葬送の列。
深い悲しみの中、厳粛な葬送の調べが静かに流れていく。 普通はそうなのですけど…。

ベートーヴェンの交響曲「英雄」や「第7番」の葬送行進曲とは、イメージが少々異なります。
中間部の盛り上がり方は「葬送」というよりは、むしろ、「凱旋行進曲」の方がピッタリ来ます。

出だしの数小節を聴いただけで、身体に「戦慄」のようなものが「ぞぞっ」と走りました。
この「ぞぞっ」と走る感覚が、私の場合、演奏の優劣を判断するバロメーターになります。

            *  *  *  *  *

● ワーグナー : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
つい最近見た「メランコリア」という映画の中で、この前奏曲が効果的に使われていました。
巨大惑星が地球に異常接近。 世界の終焉に立ち会うことになった人々の心理状態を暗示。

その圧倒的な「映像美」の世界と不安定な半音階の転調が、とてもよくマッチしていました。
曲は切れ目なく演奏されますが、曲想が変わるところから「愛の死」への移行がわかります。

浄化される死?(愛)。 この作曲家特有とも言える、うねるような息の長いフレージング。
途中での弛みとか緊張感を欠くといったところもなく、しっかりと演奏し切った京響は見事!

            *  *  *  *  *

聴衆の語学力を考慮したゆっくりとした口調。 簡潔なフレーズで通訳の方にバトンタッチ。
優しい配慮にマエストロの人柄を見る思い。 楽団員の方々が再演を熱望したのも頷けます。

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西本智実のシェエラザード

2013-10-15 11:17:15 | kyokyo

2013年10月13日(日) 午後2時30分 開演 @京都コンサートホール
指揮 : 西本 智実 / 管弦楽 : 京都市交響楽団

            *  *  *  *  *

● チャイコフスキー : バレエ組曲「眠りの森の美女」 作品.66Aから「ワルツ」
このワルツは、西本さんとロシア・ボリショイ交響楽団によるCDにも収録されています。
もちろん、お得意のレパートリーのひとつだと思いますが、余裕たっぷりの手慣れた演奏。

いっぱいの花で飾られた枝のアーチ。 ステージで繰り広げられる村人たちの祝福の踊り。
この曲は、もうひとつの「花のワルツ」。 同じ日のコンサートで、二つ同時に聴ける幸せ!

長身でスレンダーな体型の西本さん。 たぶん、常任の広上さんよりはるかに背が高いはず?
さながら、宝塚歌劇の「男役」スターのようなカッコよさ。 西本さんにも「華」があります。

            *  *  *  *  *

● チャイコフスキー : バレエ組曲「くるみ割り人形」 作品.71A
この曲(第2幕全曲)は、一昨年の「京都の秋音楽祭」開会記念コンサートで聴いています。
音楽する喜びに満ちあふれた広上さんの表情・しぐさ。 聴いている私たちも踊り出しそう。

ユーモラスな広上さんの指揮に対して、今日の西本さんはクールでスタイリッシュな印象。
オーケストラを目いっぱい強奏させるのではなく、すっきりと整然としたコントロールぶり。

私が抱いていた「ロシア音楽」のイメージよりは、もっとクリアで洗練されたサウンド。
ロシアで研鑚を積まれてきた西本さんの音楽観や、女性らしい感性が反映されている?

            *  *  *  *  *

● リムスキー=コルサコフ : 交響組曲「シェエラザード」作品.35
この曲は、昨春の「京響・大阪特別公演」でも聴いています。 指揮は、もちろん広上さん。
ライバル・オケがひしめく「アウェー」の地に乗り込んでの、気迫のこもった濃厚な演奏。

ここは、常任と客演指揮者との違いでしょうか? 西本さんは、少し抑制を効かせたドライブ。 
オーケストラを自由奔放に鳴らすというよりは、バランス面に配慮された丁寧な音楽作り。

それでも、楽曲の聴きどころをしっかり押え、クライマックスへ導いていく手腕は、お見事!
今回のシェエラザードの独奏は泉原さん。 思い入れたっぷりのソロには魅了されました。

            *  *  *  *  *

アンコールは、第3弾のCDにも収録されているハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」から。
デザートまで考えてコース設定するのが「シェフ」の仕事なら、今日は申し分ありません!

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米田 彰男さん 「寅さんとイエス」を読んで

2013-10-05 18:29:26 | book

著者の米田彰男さんは、京都市上京区にあるドミニコ会の修道院、聖トマス学院の司祭さん。
清泉女子大学でも教鞭をとられていますが、なんと「男はつらいよ」の寅さんの大ファン!

「寅さんとイエスが似ている」という独自の視点。 「真の幸福な人生とは?」を問い掛ける。
発売から1年で1万部を超えるという、「宗教書」としては異例のヒットを続けています。

学生の頃には「宗教学」という講義も受講しましたが、ほとんど記憶にすら残っていません。
本書によって、キリスト教とユダヤ教の関係とか、4つの福音書のこととか、勉強のし直し。

イエスは信仰の対象としてではなく、もっと人間くさくユーモアに満ちた面白い男だった!
米田さんの「寅さん愛」の溢れる文章のおかげで、イエスの実像に少しは近づけたかも…?

Torasan

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野村克也さん 「私の教え子 ベストナイン」を読んで

2013-10-01 10:21:13 | book

南海‐ヤクルト‐阪神‐楽天。 監督生活通算24年の名将、ノムさん選出のベストナイン。
投手は先発とリリーフ、センターが2人。 「再生工場」から投手と打者を一人ずつ計13人。

ノムさんのこの新刊が発売されたのは、東北楽天イーグルスのパ・リーグ制覇の決まる直前。
今年の大活躍を考えれば、ベストナインの先発には田中将大投手が選ばれていたかも!?

Nomu_2


● 打線(打順)を組んでみました!

ノミネートされた候補者50人の中から「ベストナイン」を選ぶだけでも、実は大変な作業。
さすがに本書では打線までは組んでありませんでしたので、僭越ながら私が組んでみました。

センターは広瀬叔功選手と飯田哲也選手を選出。 よって、AとBの2プランがあります。
私の売りは、左の長距離砲の稲葉篤紀選手を「斬り込み隊長」役に起用しているところ。

Nine

コメント (4)
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