まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

広上淳一指揮 × 京都市交響楽団 @西宮

2017-10-17 13:51:20 | kyokyo
2017年10月15日(日)15:00 開演 @兵庫県立芸術文化センター・大ホール
独奏 : ボリス・ベルキン(ヴァイオリン) / 指揮 : 広上 淳一 / 管弦楽 : 京都市交響楽団


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● ウォルトン : 「スピットファイア」前奏曲とフーガ
ウォルトンは、20世紀のイギリスを代表する作曲家のひとり。 この曲は元々、映画のための音楽からの編曲版。
スピットファイアとは英国空軍を代表する戦闘機で、機の開発に従事した航空技術者の苦闘する姿を描いた作品。

映画は見たことがありませんが、BSプレミアムで放送していた海外ドラマ「刑事フォイル」と同時代でしょうか。
同じくイギリスの作曲家、エルガーを彷彿とさせるような格調の高さと愛国心にあふれた曲調が印象に残りました。

兵庫県立芸文センターの大ホールでクラシックを聴くのは、広上さん=京響が初登場した2011年以来のこと。
3階席で聴いたせいもあるのでしょうか? 響きが湧き上がってくるようで、耳が慣れるまでは、少々戸惑い気味。

● ショスタコーヴィチ : ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調
広上さん指揮の京響でベルキンさんの独奏を聴くのは、第535回定期以来。 ブラームスのヴァイオリン協奏曲。
個人的な感想ですが、どうも、美音を朗々と歌い上げるタイプではないような。 むしろ、内省的で細やかな表現。

今回も、テクニカルな部分を前面に打ち出すというよりは、内面的な情感を湛えた「懐」の深さを感じさせるもの。
悲しみ、痛み、怒り、不安など、根底に流れる複雑な感情。 そして、享楽的な熱狂の渦。 ユダヤ音楽の影響も。

初演は1955年10月、オイストラフのヴァイオリン独奏で、ムラヴィンスキー指揮のレニングラード・フィル。
どれほど凄まじい演奏になったであろうか!と、当時を想起させるには、十分すぎるほどのベルキン&広上=京響。

● ブラームス : 交響曲 第1番 ハ短調
この曲は、2015年9月の「京都の秋 音楽祭」のオープニングで、高関健さんの指揮の京響で聴いています。
きびきびとしたテンポで推進力のある演奏でしたが、個人的には、盛り上がりという点で、幾分の物足りなさも。

今回の広上さんの指揮では、ここ10年の間、良好な関係を築き上げてきたコンビならではの演奏密度と完成度。
歌わせるところはたっぷり歌わせ、ガツンと鳴らすところ大いに鳴らす。 堂々としたスケールを感じさせる演奏。

常任指揮者3人体制の京響。 それぞれが個性的な解釈と音楽性。 京響の演奏能力の柔軟性と機能性の高さの源。
もう一人の常任指揮者の下野竜也さんなら、どんな演奏に!? 贅沢なレベルで期待を抱かせてくれる京響です。

クラシックの愛好家なら、それぞれの人に「ベスト盤」と言える演奏があるだろう、まさに王道中の王道の名曲。
そんな聴衆の高いハードルを超えて、新たな感銘と満足をもたらしてくれました。 西宮まで遠征して正解でした。