2023年4月15日(土) 開演 : 14:30 @京都コンサートホール
指揮 : 沖澤 のどか(第14代常任指揮者)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団
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指揮 : 沖澤 のどか(第14代常任指揮者)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団
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● プレトーク
沖澤のどかさんの常任指揮者就任披露演奏会ということもあり、その最初のスピーチだけは聴き逃すまいと、開演30分前の14時には、ホールの中でスタンバイしていました。幼いお子さんの成長の様子(梅小路公園に遊びに行かれた際に、初めて立ち歩きが出来た!)など、プライベートな話題を交えつつ、気さくでフレンドリーな雰囲気でのスピーチでした。
沖澤さんの気取らない、飾らない、自然体の姿勢が好ましく、音楽に対する誠実で真摯な態度や、常任指揮者就任への熱い思い、意欲もしっかりと伝わってきて、魅了されました。
指揮者としてのリーダーシップ、指導力、カリスマ性は重要な要素であることは言うまでもありませんが、その「愛されキャラ」的なお人柄は、京響の楽団員さんや京響ファンの人たちとの関係性を築く上で、大きな力を発揮することでしょう。そのあたりは、前任の広上淳一さんと合い通じるものを感じました。
● メンデルスゾーン : 序曲「ルイ・ブラス」作品95
「ルイ・ブラス」とは、文豪ヴィクトル・ユゴーが発表した戯曲のタイトル。悲劇的な結末を持つ戯曲については、メンデルスゾーンは好みではなかったようで、「劇場基金のための(チャリティー)序曲」と名付けたかったというエピソードが残っています。
沖澤さんのコメントでは、今回の定期のプログラムを組むときに、次に演奏する、同じくメンデルスゾーン作曲の交響曲第4番「イタリア」の、明るく快活な雰囲気とのコントラストを強調するために、あえて演奏機会の少ないこの序曲を選んだということを紹介されていました。メンデルゾーンには珍しく、緊迫したドラマチックな曲想を持つ作品。沖澤=京響、上々のオープニングとなりました。
● メンデルスゾーン : 交響曲第4番 イ長調 作品90「イタリア」
メンデルスゾーンが、友人だった文豪ゲーテ(すごい交友関係だ!)と共にイタリアを旅行中に、作曲が着手されたと言われています。自身が「国(イタリア)のすべてがお祭りのような雰囲気」と形容したように、祝祭的なうきうきとした気分があふれる作品。もちろん、単純な「描写音楽」ではありませんが、「優れた風景画家」と称された卓越した作曲能力が、遺憾なく発揮されています。
沖澤=京響の演奏は、きびきびとした推進力、テンポ感、めりはりのある表現。細部の旋律やリズムも、くっきりと浮かび上がらせる明瞭なサウンド。まだ、定期2回目の登場だとは思えないくらい、両者の相性の良さは際立っています。
メンデルスゾーンの交響曲では、第3番の「スコットランド」を、昨年10月の第672回定期で聴いた記憶も新しいところ。指揮は、斎藤友香理さん。作品のスケール、ボリューム感が、体力的な意味で、女性指揮者には適正のサイズなのでしょうか? いわゆる「大曲」の類は、来シーズンから首席客演指揮者への就任が決定している、オランダ人のデ・フリーントさんが担われるのでしょうか?
● ブラームス : 交響曲第3番 ヘ長調 作品90
私が京響の演奏で、この交響曲を聴くのは、これが3回目のことになります。ギュンター・ノイホルトさん指揮の2011年11月の第552回定期と、広上淳一さん指揮の2017年7月の第614回定期以来のことになります。第1番と第4番に比べると、演奏機会も少なく、地味な印象を受けますが、いかにも「渋め」で、玄人好みのする傑作というイメージがあります。
プレトークの場で、沖澤さんは、「今日は、ベルリンの師匠、キリル・ペトレンコから教わった『マイニンゲンの伝統』に則ったスタイルで演奏します。しっかり時間をかけて、練習してきました」と、コメントされました。『マイニンゲンの伝統』なるものがどいうものなのか、とてものこと、言葉で表現するだけの能力はありませんが、確かに、家で聴いているカラヤン晩年の録音(CD)とは、旋律の歌わせ方、アクセントの付け方などに、宮廷劇場(楽団)由来の(演歌でいう)節回し、こぶしみたいなものがあるように感じました。
前段のことを、限られた時間の中で、オーケストラに落とし込む(しかも、演奏会にかけられるレベルにまで)には、トレーナーとしての相当の技量、手腕を要求され、また、それ相応の自信と覚悟がなければ、容易に為せる業ではありません。加えて、オーケストラ・メンバーの音楽性、技量に対する信頼も、大きな要素になります。指揮者とオーケストラの関係性、演奏会の成否は、リハーサルで決まる!と言われる所以も、このあたりにあるように思いました。
最後に、京響のことについて。14年間の長期にわたる広上体制の下、高関さん、下野さん、アクセルロッドさんなど、国内外の著名な指揮者の数々の要求に応えて、着実に経験と実績を積み重ねてきた京響。オーケストラとしてのポテンシャルの高さ、とりわけ、フレキシビリティー(柔軟性、対応力)の高さを証明した演奏となりました。
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新しい常任指揮者の就任を祝う、温かな空気で包まれたホール内。久しぶりの満員の聴衆の拍手喝采。とても華やかで、晴れやかな「お披露目」演奏会となりました。これから、聴衆の一人として、沖澤=京響と共に歩んでいけることへの喜び、期待、高揚感をかみしめながら、家路につきました。
沖澤のどかさんの常任指揮者就任披露演奏会ということもあり、その最初のスピーチだけは聴き逃すまいと、開演30分前の14時には、ホールの中でスタンバイしていました。幼いお子さんの成長の様子(梅小路公園に遊びに行かれた際に、初めて立ち歩きが出来た!)など、プライベートな話題を交えつつ、気さくでフレンドリーな雰囲気でのスピーチでした。
沖澤さんの気取らない、飾らない、自然体の姿勢が好ましく、音楽に対する誠実で真摯な態度や、常任指揮者就任への熱い思い、意欲もしっかりと伝わってきて、魅了されました。
指揮者としてのリーダーシップ、指導力、カリスマ性は重要な要素であることは言うまでもありませんが、その「愛されキャラ」的なお人柄は、京響の楽団員さんや京響ファンの人たちとの関係性を築く上で、大きな力を発揮することでしょう。そのあたりは、前任の広上淳一さんと合い通じるものを感じました。
● メンデルスゾーン : 序曲「ルイ・ブラス」作品95
「ルイ・ブラス」とは、文豪ヴィクトル・ユゴーが発表した戯曲のタイトル。悲劇的な結末を持つ戯曲については、メンデルスゾーンは好みではなかったようで、「劇場基金のための(チャリティー)序曲」と名付けたかったというエピソードが残っています。
沖澤さんのコメントでは、今回の定期のプログラムを組むときに、次に演奏する、同じくメンデルスゾーン作曲の交響曲第4番「イタリア」の、明るく快活な雰囲気とのコントラストを強調するために、あえて演奏機会の少ないこの序曲を選んだということを紹介されていました。メンデルゾーンには珍しく、緊迫したドラマチックな曲想を持つ作品。沖澤=京響、上々のオープニングとなりました。
● メンデルスゾーン : 交響曲第4番 イ長調 作品90「イタリア」
メンデルスゾーンが、友人だった文豪ゲーテ(すごい交友関係だ!)と共にイタリアを旅行中に、作曲が着手されたと言われています。自身が「国(イタリア)のすべてがお祭りのような雰囲気」と形容したように、祝祭的なうきうきとした気分があふれる作品。もちろん、単純な「描写音楽」ではありませんが、「優れた風景画家」と称された卓越した作曲能力が、遺憾なく発揮されています。
沖澤=京響の演奏は、きびきびとした推進力、テンポ感、めりはりのある表現。細部の旋律やリズムも、くっきりと浮かび上がらせる明瞭なサウンド。まだ、定期2回目の登場だとは思えないくらい、両者の相性の良さは際立っています。
メンデルスゾーンの交響曲では、第3番の「スコットランド」を、昨年10月の第672回定期で聴いた記憶も新しいところ。指揮は、斎藤友香理さん。作品のスケール、ボリューム感が、体力的な意味で、女性指揮者には適正のサイズなのでしょうか? いわゆる「大曲」の類は、来シーズンから首席客演指揮者への就任が決定している、オランダ人のデ・フリーントさんが担われるのでしょうか?
● ブラームス : 交響曲第3番 ヘ長調 作品90
私が京響の演奏で、この交響曲を聴くのは、これが3回目のことになります。ギュンター・ノイホルトさん指揮の2011年11月の第552回定期と、広上淳一さん指揮の2017年7月の第614回定期以来のことになります。第1番と第4番に比べると、演奏機会も少なく、地味な印象を受けますが、いかにも「渋め」で、玄人好みのする傑作というイメージがあります。
プレトークの場で、沖澤さんは、「今日は、ベルリンの師匠、キリル・ペトレンコから教わった『マイニンゲンの伝統』に則ったスタイルで演奏します。しっかり時間をかけて、練習してきました」と、コメントされました。『マイニンゲンの伝統』なるものがどいうものなのか、とてものこと、言葉で表現するだけの能力はありませんが、確かに、家で聴いているカラヤン晩年の録音(CD)とは、旋律の歌わせ方、アクセントの付け方などに、宮廷劇場(楽団)由来の(演歌でいう)節回し、こぶしみたいなものがあるように感じました。
前段のことを、限られた時間の中で、オーケストラに落とし込む(しかも、演奏会にかけられるレベルにまで)には、トレーナーとしての相当の技量、手腕を要求され、また、それ相応の自信と覚悟がなければ、容易に為せる業ではありません。加えて、オーケストラ・メンバーの音楽性、技量に対する信頼も、大きな要素になります。指揮者とオーケストラの関係性、演奏会の成否は、リハーサルで決まる!と言われる所以も、このあたりにあるように思いました。
最後に、京響のことについて。14年間の長期にわたる広上体制の下、高関さん、下野さん、アクセルロッドさんなど、国内外の著名な指揮者の数々の要求に応えて、着実に経験と実績を積み重ねてきた京響。オーケストラとしてのポテンシャルの高さ、とりわけ、フレキシビリティー(柔軟性、対応力)の高さを証明した演奏となりました。
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新しい常任指揮者の就任を祝う、温かな空気で包まれたホール内。久しぶりの満員の聴衆の拍手喝采。とても華やかで、晴れやかな「お披露目」演奏会となりました。これから、聴衆の一人として、沖澤=京響と共に歩んでいけることへの喜び、期待、高揚感をかみしめながら、家路につきました。