まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

辻井伸行/垣内悠希/京響

2012-09-21 18:54:07 | kyokyo

2012年9月20日(木) 19:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 垣内 悠希 / ピアノ : 辻井 伸行 / 管弦楽 : 京都市交響楽団

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● ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品.18
テレビでのドキュメンタリー番組では幾度となく聴いている辻井伸行さん。 実演は初めて!
彼のことを「奇跡のピアニスト」と評したりしますが、まさにその形容に相応しい熱演でした。

初顔合わせ?となる指揮者&オーケストラ。 ピアノとの室内楽的「会話」の要素も高い曲。
そんな難条件を物ともしない高い音楽性、卓越した演奏技術、研ぎ澄まされた集中力。

辻井さんをリスペクトする思いが、ステージ上の音楽家、満場の聴衆をすっぽりと包み込み、
通常のヴィルトゥオーゾ的な協奏曲以上の大きな感動を、私たちにもたらしてくれました。

必然的に、辻井さんのピアノの方に聴衆の耳目が集まってしまうステージにもかかわらず、
垣内さん=京響も見事なパフォーマンス。 ハッ!とするような美しさに、思わず息を飲む。

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● チャイコフスキー : 交響曲第4番 ヘ短調 作品.36
後に続く交響曲の音楽的な洗練度と比べると、荒々しい、猛々しいという印象が強い第4番。
おー、なかなかエエやんか! 私の偏見、潜在意識をいっぺんに吹き飛ばしてしまった快演!

空間を引き裂くような金管・打楽器群の咆哮。 憂愁に満ち、儚げに漂うような木管楽器群。
全編、弦楽器のピチカートで奏される第3楽章も、印象的なアクセントになっている感じです。

ダイナミックな躍動感、明確な機能性、きびきびとした所作。 垣内さんの指揮ぶりの印象。
垣内さんは、生来のレフティーか? 左手による表情の付け方、雄弁さが際立っていました。

数年前までは致命的なミスが出ないように、少々心配しながら聴いていた京響の演奏。
それが今やどうでしょう! 期待に違わぬ充実した演奏内容、安定感が何とも頼もしい限り。

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この演奏を聴いて、来月定期のラザレフさん指揮の「第5番」への期待も一気に高まりました。
さらに、垣内さんと同じブザンソン優勝、山田和樹さん登場のニューイヤーも大いに楽しみ!

Tsujii


第16回 京都の秋音楽祭 開会記念コンサート

2012-09-17 21:05:58 | kyokyo

2012年9月16日(日) 14:00開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 広上 淳一(常任指揮者) / 管弦楽 : 京都市交響楽団

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● J.ウィリアムズ : オリンピックファンファーレとテーマ
J.ウィリアムズは映画音楽界の巨匠として、数々の世界的ヒット作の音楽を担当しています。
クラシック通の方には、ボストン・ポップス・オーケストラの指揮者としても有名な方です。

誇らしく高らかに歌い上げる金管楽器群、ダイナミックなリズムをシャープに刻む打楽器群。
これから始まろうとするスポーツの祭典に相応しい、湧き上がってくる高揚感に満たされます。

● ハイドン : 交響曲第104番 ニ長調 「ロンドン」
モーツァルトの煌びやかさでもなく、ベートーヴェンのヒロイックなダイナミズムでもない。
ハイドンの作品には、整然とした様式美を誇る「ヨーロッパ庭園」のような魅力を感じます。

広上さん=京響といえば、大編成のオケでガンガン鳴るという強烈なイメージがありますが、
こういう古典的な作品においても、確かな演奏技術と表現力でしっかり聴かせてくれます。

通常、この作品は室内(宮廷)オーケストラ規模の編成で、演奏されることが多いのでは?
その分、きびきびとしたという印象よりは、ゆったりとした「足どり」を感じさせるような演奏。

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● ホルスト : 組曲「惑星」 作品.32

火星  Mars, the Bringer of War
これぞ、広上さん=京響の真骨頂とも言えるような、圧倒的な迫力と推進力に満ちた熱演。
上手いアレンジを施せば、高校野球のコンバット・マーチの定番曲に使えるかもしれません。

金星  Venus, the Bringer of Peace
オープニング曲の「動」に対して、この曲は「静」の曲。 コントラストの妙が素晴らしい。
天空にひと際、美しく光り輝くヴィーナスに、優しく抱かれているような安らぎを覚えます。

水星  Mercury, the Winged Messenger
副題の「翼のある使者」というイメージからは、エンゼルとかペガサスを連想させますが、
ちょこまかと動き回る様はどちらかと言うと、バイクに乗った郵便配達のお兄さんのようです。

木星  Jupiter, the Bringer of Jollity
この組曲の白眉、包容力と慈愛に満ち溢れた中間部の旋律は、やはり感動的なものでした。
ブラームスの第1番、マーラーの第3番の交響曲の最終楽章と合い通じるようなイメージ。

土星  Saturn, the Bringer of Old Age
太陽から遥か遠く、光も熱も殆んど届かない暗黒の空間の中に、ただ独り浮かぶ巨大な星。
青壮年期の充実した日々を回想しつつも、静かにゆっくりと老成してゆく神話の巨人を想起。

天王星  Uranus, the Magician
手先を起用に使ったテーブルマジックというよりは、少々大掛かりなイリュージョンの魔術師。
何の脈絡もないのですが、ハリー・ポッターに登場する魔法学校の教授の姿が浮かびます。

海王星  Neptune, the Mystic
この宇宙の涯ては、或いは宇宙の中心は、いったいどのようになっているのでしょうか?
そして、その深奥の遥か彼方から微かに聞こえてくる旋律は…? 存在を超えた無限なもの。

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アンコール曲もイギリスにちなんで、ウォルトンの「戴冠式行進曲」の「王冠」という曲。
広上さんからの「明日もハッピーに、元気で生きていけるように!」というメッセージ付き。

Aki_kyoto