2014年11月23日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 飯守 泰次郎 / 管弦楽 : 京都市交響楽団(コンサートマスター:豊嶋 泰嗣)
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● ワーグナー : 歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
荒れ狂う大嵐の中、翻弄されるように漂う帆船。 さながら、ターナーの絵画のような1シーン。
ドイツロマン派音楽の典型とも言える描写場面。 緊迫感の漲る凄絶な状況が現出されます。
賑やかな酒宴で盛り上がるノルウェイ船の水夫達。 妖しげな気配が漂うオランダの幽霊船。
やがて、近年、大ヒットした「海賊映画」のような、激しい戦闘場面が展開されていきます。
ワーグナーが生涯のテーマとした「救済」。 さまよえるオランダ人の「魂」は救われたのか?
ラスト近く、宗教的な安らぎを思わせる旋律。 おそらく、永遠の呪縛から解放されたのでは。
● ワーグナー : ジークフリート牧歌
「今日のプログラムの中で寝られるとしたら、この曲くらいですね」と、紹介された飯守さん。
私自身、寝る前にというか、聴きながらよく寝てしまいます。 終始、穏やかで平和的な曲調。
室内オーケストラの様な小規模編成に変わりますが、京響のアンサンブルは安定そのもの。
楽団員の方々が日頃から、フル以外のさまざまなフォーマットで研鑽を積まれている「証し」。
バランスのよい響きの弦楽アンサンブルに、眠気も吹き飛んでしまうくらい美しい管楽器群。
この曲は、奥さんの誕生日のために用意された「サプライズ・プレゼント」だったそうですよ。
● ワーグナー : 歌劇「リエンツィ」序曲
さすがに、ワーグナーの作品が休憩なしに3曲も続くと、少々の気疲れを感じてしまいます。
それでも、中だるみとか力負けすることもなく、堂々と演じきった京響の逞しい演奏力に感服。
サッカーでも技術的に巧いだけでは、試合には勝てません。 プラス、フィジカル面の力強さ。
ここ最近の京響の演奏を聴くと、がっちりとした骨格に、しなやかな筋肉の造型美を感じます。
ワーグナー若気の至りとも言われるこの曲は、バイロイトでも演奏されることがないそうです。
確かに、洗練されているとは言い難いですが、勇壮軽快な曲調は十分に楽しめるものでした。
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● ブラームス : 交響曲第4番 ホ短調 作品.98
第1楽章冒頭の「魂」がゆらゆらと浮遊しているような印象的な旋律。 「死」との関連性も?
実際に聴いてみると、モノトーンの枯淡の境地というよりは、色彩感・躍動感も感じられます。
熟成された、深く豊かな美しさをたたえた第2楽章。 思いっきりはしゃいでみせた第3楽章。
第4楽章では、バッハ以来の伝統的な音楽形式に立ち帰って、最後の幕を引いてみせる。
人生の終焉を意識したブラームスが、最後の情熱と自らの作曲技量の全てを傾注した作品。
そんなイメージを飯守さんの指揮姿に重ね合わせては、何度も何度も胸が熱くなるステージ。
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私事ですが、今回の定期で、京響によるブラームス全交響曲の演奏を聴くことができました。
いずれも、常任の広上さん以外の指揮者で、1曲ずつ違うのもなかなか感慨深いものです。