琵琶湖から特別な「力」を授けられた、二つの家系(日出家と棗家)の末裔たちの物語。
主人公は高校1年生の日出涼介。 名前の「涼」の字の「さんずい」に重要な意味があります。
で、その涼介くん。 栄えある奨学生として、日出本家の「城下町」・石走にやって来ます。
滋賀県でいうと彦根城を思わせる御殿での、現代の「お殿様」風居候生活が始まります。
毎日の登下校は、お城のお堀から町に巡らされた専用の水路を通って、「舟」での送り迎え。
お抱え運転手というか、お抱え船頭さんの「源爺」が、いつも通学のお供をしてくれます。
自分の部屋にたどり着くまで、いくつもの中庭を眺め、いくつもの廊下を渡って行きます。
朝夕の食事、学校に持って行くお弁当の超豪華メニュウ! 家の中で「流しそうめん」も!
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人間の心や身体(時間)を自由に操ることが出来る特別な「力」が授けられているとしたら…
通常、考えることとは裏腹に、自らの生活に制約が生まれ、自らの心を苛んでしまうなんて!
第七章「しゅららぼん」からの展開は、さながら一大スペクタクルを見るような感じがします。
その壮大なスケールと対照的に、登場人物の心情の動きは繊細に描かれ、熱く胸を打ちます。
タイトルの「しゅららぼん」は固有名詞ではなく、文法的に言うと「擬音語」にあたります。
音節的には「しゅらら」と「ぼん」に分かれます。 二つの力が発せられる時に出る大爆音。
ラストは、「続編」を期待させるような終り方。 物語のこれからの展開は? 気になります。
異空間へワープしてしまったようなストーリーと、現実との「辻褄合わせ」は如何に…?!
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今回の作品は、「あえて物語の構成を最後まで組み立てずに、連載を開始」されたそうです。
少々のアラは「勢い」でねじ伏せてしまうとか、「活き」のよさは、十二分に伝わってきます。
インタビュー記事によると、次回作は、京都・大阪を舞台とした「忍者もの」なのだそうです。
それも、「おぬし、なかなか出来るのう!」じゃない、愛すべき間抜けたちが主人公だとか。