まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第548回 定期演奏会

2011-07-25 17:10:33 | kyokyo

2011年7月24日(日)14:30 開演 @ 京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 大野 和士 / 独唱 : 手嶋 眞佐子 / 合唱 : 京響市民合唱団・京都市少年合唱団

            *  *  *  *  *

● マーラー : 交響曲第3番 ニ短調
舞台の奥行きまでたっぷりと使った、オーケストラの大規模な編成にまず目が奪われます。
8本編成のホルン、ティンパニーとハープは2台ずつ。 最後段には多彩な打楽器群がズラリ。

第1楽章には、マーラーの音楽世界を構成する重要なエッセンスがたっぷり含まれています。
壮麗なファンファーレ、民謡風のメロディー、賑やかな祝祭、軍楽隊(?)の行進などなど。

チラシには、「自然への賛歌を綴る史上最長の交響曲」とあります。 演奏時間は約100分。
第1楽章を聴いただけでも、思わず「ブラボー!」と叫びたくなるくらいの充実度でした。

ただ「自然賛歌」といっても、ベートーヴェンの「田園」風のイメージではありません。
もっと壮大なスケールをもった、「天地創造」の黎明を想起させるような印象を受けました。

            *  *  *  *  *

途中で集中力が途切れてしまいがちな第2・3楽章も、たっぷり音楽に浸ることが出来ました。
色彩感あふれる魅力的なメロディーが次から次へと、泉のように湧き上がってくるようです。

ちょっと驚いたのは、第3楽章のトランペットのソロが舞台裏で演奏されているということ。
演奏終了後、ポディウム席の後方から颯爽と! 影のヒーローの登場と言ったところでした。

第4楽章のアルト独唱は、体調不良の小山由美さんから、急遽、手嶋眞佐子さんへの変更。
コンディションやモチベーションの調整が難しい中、品格と威厳のある立派な歌唱ぶりでした。

続く楽章は女性合唱と児童合唱が加わり、いっそうの華やかさ・ドラマ性が増すような感じ。
ステージでの配置は? 入・退場は? 拍手はしたらいいの? いろいろ気になっていました。

            *  *  *  *  *

ようやく辿りついた最終の第6楽章は、宗教的とも言えるような崇高な美しさを湛えています。
冒頭部分は、ブラームスの第1番の終楽章と共通するような「救済」のイメージが浮かびます。

遥かなる高み(これが天上世界?)へ登りつめるように、この長大な交響曲は幕を閉じます。
まばゆい光のベールに優しく包まれるように、慈愛に満ち溢れた、心安らかなエンディング。

最近の充実ぶりが高評価されている「管」はもちろんのこと、「弦」も素晴らしい出来映え!
客演の方の応援があったとはいえ、バランスのとれた精緻なアンサンブルは感涙ものでした。

冗長、散漫に流れることなく、整然とコントロールされていた大野さんの卓越した指揮ぶり。
ヨーロッパの一流の歌劇場で、音楽監督を務められてきた統率力とカリスマ性を感じました。

Oono

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綾辻行人 「深泥丘奇談・続」を読んで

2011-07-17 12:54:18 | book

題名に「続」とあるのは、この作品が京都を舞台にした怪談・短編集の第2弾となるからです。
京都の超有名な心霊スポット「深泥池」を連想させる、「深泥丘」界隈で起こる不思議の数々。

            *  *  *  *  *

都市伝説風ホラー、土俗的・民俗的怪異譚、ナンセンスからシュールなタッチなものまで。
まさに、「手を変え、品を変えて」の実験的、意欲的、挑発的な作品がズラリと並びます。

いずれも、作者の綾辻行人さんをイメージさせる、京都在住の本格ミステリー作家が主人公。
彼を取り巻く、謎めいた妖しげな人たち。 深泥丘病院の石倉医師、若い女性看護士の咲谷。

            *  *  *  *  *

最初は、その掴みどころのなさに戸惑い、結末もちょっと拍子抜けの感じすら抱きました。
多用される「- のような気がする」という表現に、「これはズルイな」とさえ思いました。

ところが、しばらく間を置いて読み直してみると、じわじわと滲み出るような味わいが!
ゆったりととってある行間に潜む面妖な気配、読後に忍び寄ってくる独特な余韻が魅力です。

            *  *  *  *  *

加えて、この作品に更なる彩りを添えているのが、本の装丁と墨絵風の挿絵の美しさです。
ストーリーの展開にも大いに興味がそそられますが、ページをめくるもう一つの楽しみです。

Ayatsuji

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暑中お見舞い申し上げます

2011-07-16 10:44:06 | diary

この季節になると、決まって聴きたくなるアルバムがあります。
松岡直也さんの「夏の旅」。 私の夏の定盤です。

ジャケットのデザインも、とてもイイですね!
幼い頃、身体いっぱいで感じた、夏の原風景がここにあります。

皆さんの夏の定盤は、どんな曲なんだろうなぁー?
そんな思いをはせながら、夏のご挨拶。

                                      2011年 盛夏

Natsunotabi_3   

コメント (2)
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麻耶 雄嵩 「隻眼の少女」を読んで

2011-07-13 12:44:36 | book

京都大学推理小説研究会の出身で、京都市在住の麻耶雄嵩(まやゆたか)さんの長編小説。
第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリー大賞のダブル受賞に輝いた作品です。

            *  *  *  *  *

小説の舞台となるのは、観光ガイドブックにも掲載されていない山間の鄙びた温泉地の集落。
この集落には、「生き神」のように崇敬を集める「スガル」様を世襲する一族の存在があった。

冬の訪れを間近に控えたある日、身の毛もよだつような猟奇的な殺人事件が起こります。
殺害されたのは、後継者として修行中の三姉妹(三つ子)の長女。 その後、次女、三女と…

事件解明に乗り出すのが、翡翠の義眼を入れた隻眼の少女探偵、御陵(みささぎ)みかげ。
名声を博した母・御陵みかげの後継を宿命付けられた彼女は、これが初仕事となります。

            *  *  *  *  *

実父の命も奪われるという悲劇に見舞われる中、みかげの推理は事件の収束へと導きます。
しかし、十八年の歳月が流れたある冬の日、あの時と全く同じ手口で犯行が繰り返されます。

忌まわしい事件の再検証を進めながら、真犯人を絞り込んでいくのが「三代目」御陵みかげ。
母・みかげの極めて論理的思考の網をくぐり抜け、再び挑みかかってきた殺人鬼の正体は?!

この作品は、地方独特の因習、民間伝承、閉鎖的ゆえ濃厚な人間関係がベースにあります。
それが耽美的とも言える独特な世界を創り出し、待ち受ける「あっ!」と驚く衝撃的な結末。

            *  *  *  *  *

物語は、たまたま「助手見習い」に採用された、種田静馬の目を通して展開していきます。
彼の凡人なりの発想・疑問が、推理の展開を理解する上での、いい手助けとなりました。

Misasagi_mikage

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デューク・エリントン・オーケストラ ジャパンツアー 2011

2011-07-10 12:42:36 | jazz

2011年7月9日(土)5:00PM 開演 @ ザ・シンフォニーホール(大阪)
世界一の歴史を誇るジャズ・ビッグバンドの名門 2011年のジャパンツアーの初日です。

            *  *  *  *  *

デューク・エリントンに捧げられた、トリビュート・アルバムは何度も聴いてきましたが、
彼の名を冠する、正真正銘のビッグバンドの演奏に接するのは、今宵が初めての経験です。

オープニングのナンバーは、バンドテーマとしても有名な「A列車で行こう」からスタート。
さながら、ニューヨーク・ハーレムの「コットン・クラブ」への直通列車のような感じです。

花形ソロ・プレーヤーがずらりと並んだ、全盛時代のステージは知る由もありませんが、
次から次へとステージの中央に登場する、現役の「エリントニアン」の力量もさすが!です。

            *  *  *  *  *

彼らの名人芸が遺憾なく発揮されるのは、「昔はよかったね」から始まる後半のステージ。
ソロ・パートをたっぷり採った、「ジャック・ザ・ベア」や「ムード・インディゴ」は圧巻!

伝統ある名門バンドの演奏スタイル・サウンドを継承していくだけでも大変なことなのに、
クオリティーの高さを保ちつつ、新たな地平を拓いていこうとする姿勢がすばらしいです。

アンコールもお馴染みの「サテン・ドール」と「スイングしなけりゃ意味ないね」の2曲。
最後は真夏の暑さも吹っ飛ばすような、大いに盛り上がったエンディングに大満足です。

            *  *  *  *  *

ホール内の空調が少々効き過ぎていた感じで、上に羽織るものが1枚欲しいくらいでした。
それと個人的には、英語と指笛は是非ともマスターしたいなぁーと、つくづく思った次第。

Elington

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