ある暑い夏の夜、東京・八王子の新興住宅地で、夫婦が殺害されるという惨劇が起きます。
殺人現場に残された「怒」という血文字。 捜査の結果、警察は「山神一也」を指名手配に。
逮捕は時間の問題だと思われていましたが、殺人犯の「山神」は1年間も行方不明のまま。
行き詰まりを見せる捜査。 警察はTVでの公開捜査に踏み切り、情報提供を呼びかけます。
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千葉県・房総半島の漁師町に暮らす、洋平・愛子の父娘の前に現れた「田代」と名乗る男。
ゲイの男性たちが性交する相手を物色する、新宿のサウナで知り合った優馬と「直人」。
沖縄・波留間島に住む女子高生の泉と、沖合いの無人島で暮らす「田中」との偶然の出会い。
気候風土の違う三つの場所、前歴不詳の三人の男たち。 同時進行的に展開していく物語。
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自分の身近にいる人が、もしかすると、殺人事件で逃走中の「凶悪犯」なのかもしれない?
何も知らない過去、打ち明けられた秘密、膨れ上がる疑念。 徐々に蝕まれていく日常生活。
相手を信じたいと思う気持ち、信じ切れる自分でありたいという願い。 それは裏を返せば…。
背景として描かれている、同性愛、終末期医療、性犯罪(沖縄基地問題)というテーマも重い。