この作品の主人公は、大手証券会社のエリート社員からホームレスに落ちぶれてしまいます。
所持金三円という極貧の路上生活から、ビジネスとしての「宗教」を興していき、やがて…。
* * * * *
前半は、ホームレスの人たちの日常生活がリアリティーのある描写で綴られています。
彼らなりの(必然的な)生活リズムとか、コミュニティーの中にある暗黙のルールとか。
安息の場を求めて辿りついた公園で出会ったのが、如何にも胡散臭そうな辻占い師の龍斎。
そして、超イケメンであり、カリスマ的素養に恵まれた、謎の青年ホームレスのナカムラ君。
この三人のタッグが、ナカムラ君を「教祖」とする新興宗教「大地の会」を立ち上げます。
巧妙に仕立て上げられた虚像が膨張し続ける中、極貧生活から奇跡的な生還を果たす三人。
* * * * *
しかし、当初の設計図や思惑をはるかに超えて、暴走化し始める狂信的な教団・信者たち。
三人の間に生じる不協和音が修復しがたい亀裂を生み、制御不能となった集団の向う先は…。
砂の上に建てた天を突き抜けるように聳える塔が、足もとから崩れ落ちていく時の恐怖感。
木島礼次と名乗る主人公・山崎遼一の、精神病理的に侵されていく過程がとても痛々しい。
あの「オウム真理教」とイメージが重なり合い、リアリティーのある恐怖感が迫ってきます。
現代情報化社会が生み出した新たな「宗教」、インターネットについても考えが及びます。
* * * * *
加速度的な展開で迎えるスリリングな結末は、この後の「続編」を匂わせています。
主人公・山崎遼一の本当の物語(リベンジ)は、ここからスタートするのかもしれません。