まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第634回定期演奏会

2019-05-21 09:42:26 | kyokyo
2019年5月18日(土)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : カーチュン・ウォン / 独奏 : ラグンヒル・ヘムシング(ヴァイオリン) / 京都市交響楽団


            *  *  *  *  *

● 吉松隆 : 鳥は静かに… 作品. 72
プログラム・ノートには、「吉松の偏愛する鳥をモチーフとした作品群のひとつにあたる」との記述があります。
清澄な弦楽合奏の調べ。 国語の教科書に載っていた「キジの儀式」という短編を思い出しながら聴いていました。

吉松さんは、瀕死の鳥に安らかな死を与えたかったのでしょうか? 鳥は、群れの仲間と共に天へと飛び立ちます。
曲は静かに終わりを告げ、切れ目なくシベリウスのヴァイオリン協奏曲へ。 カーチュン・ウォンさんの演出です。

● シベリウス : ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品. 47
なんとソリストのヘムシングさんは舞台袖から、冒頭の主題を弾きながらステージの中央へ進むという趣向でした。
彼女のベースには民俗音楽の伝統があるとのことですが、端正な容姿から受ける印象のとおり、美しく気高い独奏。

アンコールでは民俗楽器に持ち替えて、ノルウェーの質朴な民謡を披露。 心に染み入るような調べに癒されました。
同時に足をタップしながらリズムを刻む音(?)も聴こえてきましたが、村人たちの楽しい踊りの輪が広がるよう。

対する京響も独奏の引き立て役に終始するのではなく、とても堂々としたダイナミックな響きで応えてくれました。
私たちが北欧からイメージする透明感や神秘性、純朴さ、雄渾さも過不足なく表現されていた、三者の協奏でした。

● フランク : 交響曲ニ短調
かつては著名な指揮者やオーケストラが好んで演奏、録音した作品だそうですが、ここ数年はそういう機会も減少。
フランス音楽というよりは、ブルックナー風の曲想。 教会のオルガニストを勤めていた経歴と無縁ではなさそう。

カーチュン・ウォンさんは重からず軽からず、程よいテンポ設定と重心で演奏を展開。 端正で機能的な指揮ぶり。
舞台中央の後ろにコントラバスを、ずらりと並べた配置も新鮮。 京響の誇る金管パートが小気味よく炸裂します。

今回のカーチュン・ウォンさんといい、昨年登場のリオ・クオクマンさんといい、アジア勢の躍進ぶりが光ります。
これから世界へと打って出ようとするアジアの若き逸材を、積極的に客演指揮に招く京響の人選も、大変好ましい。



コメント
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