まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

エベーヌ弦楽四重奏団

2013-09-26 11:40:31 | concert

2013年9月23日(月・祝) 17:00 開演 @京都コンサートホール・小ホール

            *  *  *  *  *

● ハイドン : 弦楽四重奏曲 第77番 ハ長調 作品.76‐3 「皇帝」
ワールドカップやユーロなどの国際試合の前、スタジアムが一体となる感動的な国歌斉唱。
馴染み深いドイツ国歌(当時はオーストリア帝国)は、この曲の第2楽章の変奏主題です。

是非、一度は「原曲」を生演奏で聴いてみたい!という念願が、今夜ようやく実現しました。
もちろん、その他の楽章も個性がくっきりと際立ち、整然とした様式美を堪能できます。

第1楽章の中盤、まるでバグパイプで奏されるスコットランド民謡のような響きが印象的。
彼らの「色」がどこまで反映されているのかわかりませんが、とても上質な演奏でした。

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● メンデルスゾーン : 弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品.13
まずは冒頭の序奏部分。 その安らぎと癒しを感じさせる美しい旋律と響きに魅了されます。
これは、メンデルスゾーン自作の歌曲「そは真実か」という恋の歌からの引用。 なるほどね!

他の部分はこの「問いかけ」に対して、思い悩む作曲者自身の姿を投映させたものかも?
私の思い込みのせいか、時として、痛みや疼きを伴う心の叫びのようにも聴こえました。

作曲者の十八番(おはこ)と言われる「妖精的スケルツォ」。 そして、決然とした最終楽章。
たった4人のカルテットにもかかわらず、オーケストラのようなドラマ性を感じさせます。

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● ジャズ・プログラム
枝雀師匠いわく「緊張の緩和」というか「緊張からの開放」というか、ホールの空気が一変!
チラシの「ジャズ・バンドへ自在に変容することができる」というコピーは、正真正銘の本物。

チェロがウッド・ベースのように低弦のリズムを刻み、ヴァイオリンが自由奔放にスイング。
それに、ヴィオラがギターのような合いの手。 ジャズ・クラブのステージような雰囲気に!

もちろん、演奏法を変えただけでジャズになるかと言うと、それほど甘いものではありません。
クラシックで培われた高い演奏技術と、柔軟で瑞々しい音楽性の成せる業だと言えます。

            *  *  *  *  *

● アンコール Someday My Prince Will Come (ディズニー映画「白雪姫」より)
今やスタンダードと言ってもいい人気のナンバー。 冒頭は、なんと、ア・カペラでの演奏!
その絶妙なハーモニーは、本職のジャズ・ヴォーカル・グループも顔負けの腕前でした。

クラシックの品位と節度を保ちながら、聴衆を酔わせてしまう豊かなエンターテイメント性。
クラシックの演奏家がジャズを演奏するときのちょっとした違和感は、微塵も感じさせません。

最近では、山下洋輔さんや小曽根真さんなども、頻繁にクラシックの演奏会に登場されます。
ジャンルの垣根を越えた出会いが、新たな音楽を創造する可能性を感じさせたステージ。

Ebene

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京都市交響楽団 大阪特別公演

2013-09-22 14:39:25 | kyokyo

2013年9月21日(土) 14:00 開演 @ザ・シンフォニーホール
指揮 : 広上 淳一 / ピアノ : 山本 貴志 / 管弦楽 : 京都市交響楽団

            *  *  *  *  *

● デュカス : 交響詩「魔法使いの弟子」
この曲は、ディズニー映画の「ファンタジア」の中で使われていたことで知られています。
ミッキーマウス扮する修行中の弟子が、部屋の中を大洪水にしてしまう大失態を演じます。

広上さんの指揮姿は、そのミッキーに見えたり、バケツを持ったホウキに見えたりします。
絶体絶命のピンチが迫ったとき、師匠の大先生のご帰宅。 なんと大洪水は跡形もなく収束!

最近は「魔法使い」の棒をお持ちにならず、両手を使って指揮されることが多い広上さん。
デュカスの描いたストーリーを見事に具現化してみせる、さながら「魔法使い」のようです。

            *  *  *  *  *

● ラフマニノフ : パガニーニの主題による狂詩曲
山本貴志さんのピアノは、これが2回目。 金聖響さん指揮のOEKで、シューマンの協奏曲。
全身を使った思い入れたっぷりの演奏に引き込まれてしまった、鮮烈な記憶が残っています。

広上=京響のCDに収録されている、同曲の河村尚子さんとのステージに優るとも劣らない。
やはり、ライブで聴く(見る)と、高い演奏技術と表現力を要求される難易度の高さを実感。

ぞくぞくするような戦慄の中、「怒りの日」のメロディーが登場する変奏の部分が印象的。
極度の集中力を保ち、全身全霊を傾けたピアノ。 アンコールがなかったのも頷けるのでは…。

            *  *  *  *  *

● リムスキー=コルサコフ : スペイン奇想曲 作品.43
去年の大阪特別公演のメインは、同じリムスキー=コルサコフ作曲の「シェエラザード」。
今回採り上げられたのは、「スペイン奇想曲」。 広上さんお気に入りのレパートリーかも。

ホールの中はかなり空調が効いていましたが、スペインの熱く乾いた風が吹き渡る心地よさ。
野趣に富んだ楽しげな田園舞曲風の曲調に、近くの席にいた小さな女の子も踊り出したよ!

管楽器パートの首席奏者たちが揃った後半は、よりいっそうの華やぎと輝きを感じました。
若きコンサートマスター・泉原隆志さんの独奏パートもたっぷりあって、素敵なステージ。

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● ラヴェル : ボレロ
ラストを飾るのは、「超」が付くくらいの人気曲の「ボレロ」。 豪華絢爛たる音の饗宴!
数える人も数える人ですが、冒頭の小太鼓のリズムが延々と169回も反復されるそうです。

A・B各8小節の主題が形を変えずに繰り返されていく。 原初的、呪術的な高揚感・陶酔感。
フルートから始まる様々な管楽器のソロは、次に何が登場するのやら、わくわく感いっぱい!

クライマックスへ向っての弛みないクレッシェンド! 次第に弦楽器群が加わって厚みが増し。
最後は、まさにフル・オーケストラの咆哮! 「魔法使い」でも止められない音の大洪水!

Osaka_2

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第17回 京都の秋音楽祭 開会記念コンサート

2013-09-16 18:49:24 | kyokyo

2013年9月15日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール
指揮 : 広上 淳一 / ヴァイオリン : 松田 理奈 / 管弦楽 : 京都市交響楽団

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● ジョン・ウィリアムス : リバティ・ファンファーレ
今回のプログラムは、京都市と姉妹都市提携を結んでいる都市に縁のある曲を集めたもの。
作曲者自らの指揮で、「ボストン」・ポップス・オーケストラが初演したことのつながり。

自由の女神像の建立百周年を祝うために作曲。 自由を謳歌する華やかな気分が溢れる。
大きなスタジアムなどでの、躍動感のあるマーチング・バンドの演奏が似合いそうな曲調。

ちなみに、京都市交響楽団は姉妹都市でもある「プラハ」交響楽団と提携を結んでいます。
姉妹提携を結んでいる都市の多くは、有名なサッカークラブとオーケストラを持っています。

            *  *  *  *  *

● ブルッフ : ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調
この協奏曲は、ブルッフがケルン(ドイツ)生まれの作曲家ということで選ばれたもの。
同じ作曲者による「スコットランド幻想曲」と共通する、民謡調の旋律が郷愁を誘います。

たたみ掛けるような迫力を感じさせる第1楽章。 切れ目なく、安らぎに包まれる第2楽章。
そして、湧き上がってくる歓びの終楽章。 文句の付けようのない、素晴らしい演奏でした。

松田理奈さんはお若いながらも、確かなテクニックと表現力を兼ね備えたヴァイオリニスト。
ルックス的にも、とってもキュート! シックな装いが美しさをより際立たせていました。

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● ムソルグスキー(ラヴェル編曲) : 組曲「展覧会の絵」
組曲のフィナーレを飾る「キエフの大門」。 キエフも京都の姉妹都市で、ウクライナの首都。
平安京で言うなら、「羅城門」に相当する建造物か? 圧倒的な迫力に打ちのめされる感。

間奏曲風に繰り返される「プロムナード」。 アルトサックスの旋律が印象的な「古城」。
その他、画風(曲想)の異なる作品が絶妙に配置され、さながら展覧会場を進んでいくよう。

今日の座席は、管楽器のパートが見えないくらいの前方。 その分、広上さんの指揮を堪能。
チャーミングな仕草・表情にすっかり魅了。 スポーツ選手のような肩の稼動領域には驚嘆!

2015_aki

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綾辻行人さん 「Another エピソードS」を読んで

2013-09-05 21:37:33 | book

累計65万部のベストセラー、学園ホラーの傑作、「Another」の続編が待望の登場です。
孤高の異能少女・見崎鳴(めい)と、消えた自分の死体を探す「幽霊」との数奇な冒険を描く。

            *  *  *  *  *

「見えるの? きみには、僕が」。「見える……けど」。 - 三崎鳴と「幽霊」との出会い。
「夏合宿」の直前、彼女が夜見山を離れた「空白」の1週間。 もう1人の「サカキ」との再会?

            *  *  *  *  *

実は、幽霊・賢木晃也も夜見北中の3年3組で、例の「災厄」現象を体験した卒業生だった。
前作とリンクする「仕掛け」がファンには嬉しいところ。 よって、前作は事前に読んでおくべし!

            *  *  *  *  *

標題の「S」はいろいろな解釈も可能ですが、やっぱり、「Summer」の「S」が似合うようです。
「ホラー」作品とは言いながらも、ある意味、「ラブ・ストーリー」の切なさが漂うラストも秀逸。

Episodo_s

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