まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」

2023-12-31 18:00:26 | kyokyo
2023年12月28日(木)19:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 大友直人(桂冠指揮者)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団 / 合唱 : 京響コーラス
独唱 : 小林沙羅(ソプラノ)、鳥木弥生(メゾ・ソプラノ)、西村悟(テノール)、大西宇宙(バリトン)


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● ベートーヴェン : 交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
指揮は、京都市交響楽団・桂冠指揮者の大友直人さん。広上淳一さんの1代前、第11代常任指揮者を勤められていました。私は「広上体制」になってから本格的に京響を聴き始めたので、大友さん=京響の演奏会は、正直なところ、全く聴く機会がありませんでした。

また、2020年4月の第644回定期は、チケットを購入して楽しみにしていましたが、コロナウイルス感染症の拡大のため、残念ながら公演は中止となってしまいました。調べてみると、初めて聴いたのは、2016年2月の第598回定期にまでさかのぼります。独奏に今井信子さんを迎えてのエルガーのチェロ協奏曲(ヴィオラ版)と、ドヴォルザークの交響曲第8番という魅力的なプログラムで、聴き応えのある演奏会だったという記憶が残っています。

さて、今回の大友=京響の「第九」は全体として、きびきびとした推進力のあるテンポ設定と、輪郭線をくっきりと描くようなフレージングが印象的な演奏。第3楽章も、「アダージョ・モルト」の指示を優先するというよりは、メトロノームの数字に準拠した、いくぶん速めの演奏でした。大友さんの上品で優雅な挙措から、端正でスタイリッシュな音楽作りだろうと、自分勝手に思い込んでいましたが、そのイメージを覆すような躍動感にあふれ、熱量の高い「第九」でした。

4人の独唱者の中では、合唱を先導するバリトンの大西宇宙(おおにし・たかおき)さんの圧倒的な存在感が特筆ものでした。「勢い余って」という感も無きにしも非ずでしたが、4人のバランスを崩しかねない、ぎりぎりのところまで攻めたアグレッシブな姿勢は、評価したいと思います。(サッカーの感想みたい!?)

女声ソリストもよく健闘されていましたが、声量的にも目一杯のところがあり、ややゆとりに欠けるところがあったように感じました。もちろん、それぞれのパートの難易度(歌いやすさ、歌いにくさ)がありますし、一概に優劣を比較することはできませんが…。また、私が日頃から愛聴しているCD、「ショルティ=シカゴ響」盤のソプラノが、全盛期のジェシー・ノーマンだったということも、その印象にかなり影響していたかと思われます。

飛沫対策という制約から解放された京響コーラスも、伸び伸びとした立派な歌唱でした。ステージ上の人員配置から、ソプラノに若干名の欠員があったようにお見受けしましたが、バランス的に聴き劣りすることもなく、堂々と「フロイデ(歓喜)!」を歌い上げられていました。



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京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー 第3回 チャイコフスキー・アンド・ヒズ・フレンズ

2023-12-07 19:21:51 | kyokyo
2023年12月3日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 原田 慶太楼 / 管弦楽 : 京都市交響楽団 / ナビゲーター : ロザン


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● チャイコフスキー : 序曲「1812年」作品49からエンディング
この作品は、1812年、フランス(ナポレオン1世)の遠征軍にロシアが勝利したという歴史を祝して、作曲されたものです。演奏(録音)の中には、実際に鳴り響く教会の鐘の音や、祝砲(本物の大砲)を使った大がかりなものも残されています。

現代のロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、演奏される機会もめっきり少なくなりましたが(むしろ、抗議の意味を込めて拒否されている)、原田=京響の演奏はオープニングにふさわしく、勇壮で輝かしく、実に堂々としたものでした。

● プロコフィエフ : 組曲「キージェ中尉」から第4曲「トロイカ」
プロコフィエフといえば、京響の定期でも交響曲(第5番、第7番、古典交響曲)や、ヴァイオリン協奏曲(第2番)がプログラムに採り上げられ、比較的馴染みのある作曲家の一人と言えますが、私の中では小学生の時、音楽の授業で聴いた音楽物語の「ピーターと狼」の作曲家というイメージが強いです。

この組曲は映画音楽として作曲されたそうですが、雪原をひた走るトロイカ(3頭立ての馬ぞり)の情景が目に浮かぶようで、ウインターソングの定番?「鈴の音」も効果的に使われていました。これから迎えるクリスマス・シーズンと相まって、サンタさんのイメージと重なりましたが、実際の映画の中では、酔っぱらった役人たちがキージェ中尉を迎えにいく場面で使われているそうです。勢い余って、道端の木に衝突するアクシデントも!

● ムソルグスキー(ラヴェル編): 組曲「展覧会の絵」から第9曲、第10曲
この作品は演奏会でも度々採り上げられる人気曲ですが、個人的には、京響の演奏会で聴くのは今回が初めてのことになります。実は、2019年1月の京響第630回定期(指揮、マルク・アンドレーエさん)でも演奏されているのですが、あいにく前日からの発熱のため、やむなく断念したという苦い思い出があります。第9曲「バーバ・ヤガーの小屋」~第10曲「キエフ(キーウ)の大きな門」というラスト2曲だけでしたが、ようやく念願が叶うことになりました。

オープニングのロシアの勝利を讃える「1812年」に対して、ここではウクライナの首都、「キエフの大きな門」という微妙なバランス(配慮)を感じざるを得ませんが、そういう事情を抜きにしても、豪壮で威厳に満ちた原田=京響の演奏でした。

● チャイコフスキー : バレエ組曲「眠りの森の美女」から「ワルツ」
この作品は、後半のプログラム「くるみ割り人形」とともに、2013年10月、西本智実さん指揮の京響の演奏で聴いています。本場のロシアを拠点に活躍されていた西本さんの指揮姿がとても凛々しく、見惚れてしまったのをよく覚えています。

原田さんとロザンのお2人のトークの中で、このワルツの冒頭部分に仕掛けられた作曲者の意図、華やかな雰囲気の中に忍び寄る不穏な空気のお話は、とても興味深いものでした。ロザンのお2人も感心しきり。

● チャイコフスキー&エリントン : バレエ組曲「くるみ割り人形」スペシャル
ここにある「エリントン」とは、もちろん、ジャズ界の巨人、あのデューク・エリントンのこと。オーケストラに、ドラムス、ベース、テナーサックスの客演奏者の方が加わり、何とも豪華なストリングス付きのビッグバンドの誕生!

京響の皆さんにとっては、これまで山下洋輔さん、小曽根真さん、国府弘子さんといった、日本を代表するジャズピアニストの方々との協演経験があり、ジャズやブルースのエッセンスが盛り込まれたガーシュインの名曲(「ラプソディー・イン・ブルー」とか、「パリのアメリカ人」とか)も定期で披露されていることから、けっこう手慣れたお得意なレパートリーだと推察されます。

当然ながら、「メロディーメーカー」としてのチャイコフスキーの才能、魅力がいっぱい詰まった作品ですが、それにジャズのアレンジが加わると、華やかさ、楽しさがいっそう際立つ感じがします。ジャズ演奏の花形楽器であるサキソフォン、トランペット、トロンボーンなど、圧巻のアドリブ・ソロが展開されました。

● ハチャトゥリアン : バレエ組曲「ガイーヌ」から「剣の舞」(アンコール曲)
演奏時間の関係から、「今日はアンコールがあるな!」と予想していましたが、まさか「剣の舞」がくるとは、ちょっと意外なところを突かれた感じでした。私の「ベタ」な予想では、大本命(◎)で「白鳥の湖」かなと思っていました。

この作品は、2014年4月の京響スプリングコンサートにおいて、大阪市音楽団との合同ステージで聴いています(指揮、ダグラス・ボストックさん)。京響&市音という質量とも充実したホーン・セクションを擁しての、圧倒的迫力に満ちた演奏でした。

また、父が生前よく聴いていたので、私にとっては、子どもの頃から慣れ親しんできた曲でもあります。父に連れられて、京響の地域巡回のコンサートに聴きに行ったときの思い出など、ちょっと感傷に浸ることができました。



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