まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第541回 定期演奏会

2010-11-28 16:52:00 | kyokyo

2010年11月27日(土)14:30 開演 @ 京都コンサートホール 大ホール
指揮: 飯森 範親 / 独奏: 三村 奈々恵(マリンバ) / 管弦楽: 京都市交響楽団

            *  *  *  *  *

● 西村 朗: 桜人(さくらびと)- オーケストラのための -
正直なところ、この手の現代作曲家によるオーケストラ作品は、私の理解を超えています。
頭で理解しようとする姿勢がわざわいするのか、聴いていて、けっこうストレスを感じます。

かといって、曲の展開が読めないので、音楽にとっぷり浸ってしまうことも出来ません。
最終部で、日本古謡の「さくら」の旋律が聴こえてきて、ホッとひと安心したくらいです。

満開の桜のトンネルの中を通る時に感じる、「桜の精」に導かれているような不思議な感覚?
美しさの中に潜む妖しさ、そんなイメージが頭に浮かびましたが…。 ピント外れかも?

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● 吉松 隆: マリンバ協奏曲「バード・リズミクス」(なんと世界初演です!)
マリンバの音色・響きは予想以上に魅力的で、オーケストラとの相性もなかなかイイです!
もっと評価されてもいい楽器だと思うし、楽器としてのさらなる可能性も感じました。

パーカッションのリズムに乗って奏でられると、アフリカ原産の楽器らしい響きがします。
それでいて、硬質で透明感のある音色は、都会的でクールな印象も与えてくれるようです。

会場を包む大きな拍手に応えて、三村奈々恵さんはアンコール曲も披露してくださいました。
マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。 しみじみと心に染み入る演奏。

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● ブラームス: 交響曲第2番ニ長調 作品73
ブラームスの「田園」交響曲とも言われる滋味深い名曲。 安定したオーソドックスな演奏。
それでも、第4楽章のフィナーレに到達するまでの道のりが、私にとってはいささか長い?

私の持っているCDは、第2番と第3番がカップリングしたもの。 そのせいでしょうか…
各楽章の出だしが、私の記憶とは全然違っていた?! やはり、最低限の予習は必要だ!

飯森範親さんには、華やかなスター性を感じさせます。 掛け値なしにカッコいい方です!
終演後のホール楽屋口には、彼の登場を待ちわびるファンの方々が集まっていました。

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以下、余談ですが。 この度、京都市交響楽団が9年ぶりとなるCDをリリースしました。
広上淳一さん気合のうなり声もきっちり収録された、臨場感たっぷりのライブ演奏です。

Img002

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角田光代 「ツリーハウス」を読んで

2010-11-07 17:17:09 | kakuta

本の帯に「翡翠飯店 クロニクル」とあります。 「クロニクル」とは「年代記、編年史」の意。
戦後、旧満州から引き揚げてきた祖父母。 彼らから現在に至る家族の歴史が綴られています。

            *  *  *  *  *

登場する三世代家族の歴史。 それぞれの「今」をそれぞれの視点で読み進めていくうちに、
この小説のもう一人(ひとつ)の主人公は、「時代」そのものであるような気がしてきます。

特に「昭和」という時代。 戦前と戦後では、別の国家であるかのような「日本」という国。
時代のうねりの中で、たとえ「逃げる」にしても「生き」続けなければならなかった人たち。

昭和 - 生活の「色」や「におい」、人々の「息遣い」が今よりももっと鮮明だった時代。
今は、生活の実感を時代がのみこもうとしているのか? 私たちは流されているだけなのか?

            *  *  *  *  *

題名の「ツリーハウス」とは、いかにもエコロジー風の小洒落た小屋のことではありません。
文字どおり「樹上の家」であり、土台のないところに建てられた、根っこのない家のこと。

大地に根ざしていない家は見た目には不安定で、不細工で、いかにも頼りなさげに映りますが、
思いのほか丈夫で、なかなか居心地のいいもの。 私たちの「家族」に似ているような…?

辞書で調べると、英語では「家系図」のことを「a family tree」というのだそうです。
題名の「tree house」とは無関係なのかもしれませんが、イメージを少し重ねてみました。

Treehouse

コメント (4)
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京都コンサートホール 15周年記念コンサート

2010-11-01 12:48:52 | kyokyo

2010年10月31日(日)14:00開演 @ 京都コンサートホール 大ホール
ヴァイオリン:五嶋 みどり / 指揮:外山 雄三 / 管弦楽:京都市交響楽団

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● ベートーヴェン:付随音楽「シュテファン王」序曲 作品117
この曲は、私にとって、CD・演奏会を含めて初めて聴く序曲です。 番号からすると晩年作。
ハンガリー新劇場のこけら落とし用に作曲されたもので、今日の祝典にふさわしい曲でした。

シュテファン王は、ハンガリーの「建国の父」とも言えるような偉大な王様なのだそうです。
のどかな田園舞曲のような趣きをもった、華やかでうきうきするような曲調が印象的でした。

            *  *  *  *  *

● ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93
外山さん=京響の演奏は、整然とまとめられた古典的な様式美を堪能できるものでした。
各楽章のテンポ感にもメリハリがあり、終始、心地よい緊張感に包まれた演奏でした。

外山さんの指揮はご高齢のせいもあって、余分な所作を排した簡潔で的確なものでした。
「本番は、練習で指示したように、しっかりやってくれたまえ!」という感じなんでしょうか?

普段、聴き慣れた曲の中に、ハッとするような新鮮で美しい旋律・響きが聴こえてきます。
このあたりに、外山さんの熟達した名工の技を見る(聴く)ようで、興味深く楽しめました。

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● ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
これまでいろいろな協奏曲を聴いてきましたが、これほど感動したことは初めての経験です。
五嶋みどりさんに「世界の」という形容詞を付けても、なんら大げさな表現ではありません。

第1・3楽章のカデンツァはもちろんのこと、五嶋さんの圧倒的な表現力に息を飲む思い!
満席のホール全体がまるで水を打ったように、耽美な「音」の世界に聴き入っていました。

五嶋みどりさんから放たれるオーラを受け、京響もいつも以上に光り輝いているようでした。
独奏ヴァイオリンを支えた弦楽アンサンブル、彩りを添えた管楽パート、すばらしい演奏!

Midori_3 

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