まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

磯田道史氏 記念講演会 「上京区で日本史を語る」

2019-04-29 15:07:24 | kyoto
2019年4月28日(日) 14:00 開演 @上七軒歌舞練場
上京区140周年記念事業 / 上京区文化振興会

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【上京区の歴史】
● 織田信長は「上京」の自治を行う町衆とは仲が悪く、京都に滞在する時は、「上京」では泊まれるところがなく、もっぱら「下京」の方で宿泊していた。(下京の)本能寺で討死するのも、さもありなんといったところ。

● 徳川家の失敗は、京都御所から離れたところに二条城を築き、所司代屋敷などを固めたところにあると考えられる。個人的(磯田さん)には、御所のすぐ北側、相国寺のあたりに造営し、御所を含めて周りを城郭(要塞)化すると共に、将軍家の庇護の下に天皇家が存在するよう権威付けに利用するべきと、将軍に進言したい。

【改元・新元号について】
● 新元号が発表される前、その考案者と目される中西進氏(日文研名誉教授)と会食する機会がありましたが、そのときに「万葉集」のことが話題に上り、私(磯田さん)が歌人の中では大伴旅人が好きだと言うと、中西さんは大いに喜んでおられたという。

● 新元号「令和」の典拠となる宴が催されたとき、(万葉集の編纂者の一人とされる)大伴家持はまだ幼く、父の旅人の赴任と共に、九州の大宰府に移り住んでいた。当時、大宰府には万葉歌人の山上憶良(渡来系か?)も滞在しており、家持は憶良の子どもとも仲がよく、梅の和歌が詠まれた宴席の中で楽しく遊びまわっていたことが想像できる。

● 今回の改元をめぐって、中国では「令和」というお酒の銘柄が、すでに商標登録済みらしい。

【天皇家・皇統について】
● 天皇家の祖先とされる初代「神武」以降の9代の天皇は存在したかもしれないが、その確証はない。10代「崇神」天皇になってはじめて、その陵墓と在位期間との一致が確かめられる。権力の中心が大和から大阪の移った際の天皇「応神」にも、「神」という字が当てられている。

● 日本史史上、唯一の皇位簒奪(王朝交代)の機会があったとすれば、菅原道真の登場のときだけ。それほどまで、道真の博識ぶりや霊験(梅の枯枝に花を咲かせたという逸話が残る)に、周囲の人たちは畏敬の念を抱いていた。

● 江戸時代に譲位を行った後桜町天皇(女帝)は、自らを「中継ぎ」と自認し、後の後桃園天皇が成長されるまでの期間、限定的に在位されていた。歌会始の儀で若き皇子(後の後桃園天皇)が立派に歌を披露されたことをきっかけに、譲位を決断されたという。

● 秋篠宮さまが、70代(高齢)になっていれば天皇の職を継ぐことはできないと、ご発言されたように(会場内に苦笑が起こる)、後継の問題は大変切実。側室を置くことが許されない現状では、しかるべき宮家の男性皇族を養子にお迎えして、皇統が絶えないようにするのもひとつの考え方。



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京都市交響楽団 スプリングコンサート

2019-04-09 09:22:05 | kyokyo
2019年4月7日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 下野 竜也 / 独奏 : 豊嶋 泰嗣(ヴァイオリン)・上村 昇(チェロ)・上野 真(ピアノ)
独奏 : ハラルド・ナエス(トランペット)・西馬 健史(トランペット)/ 管弦楽 : 京都市交響楽団
            
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● ヴィヴァルディ : 2つのトランペットのための協奏曲 ハ長調
舞台中央で2本のピッコロ・トランペットが掛け合う様子は、何とも華やかで音楽の喜びに満ちあふれています。
高音部のきらびやかな装飾音、チェンバロのつつましやかな響き。 いかにも、イタリア・バロックの明快な曲想。

なかなか小編成の京響を聴く機会はありませんが、バランスのよい整った響き。 こういうフォーマットも新鮮だ。
つなぎのトークでは、ナエスさんの達者な日本語にびっくり!、西馬さんのバリトン・ヴォイスも魅力的でした。

● ベートーヴェン : ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための三重協奏曲 ハ長調 作品. 56
作品番号「55」が、あの交響曲第3番の「英雄」。 そして、その次に完成したのが、この協奏曲で「56」番。
ピアノ・トリオ付きの協奏曲だと捉えると、新たな地平を開拓しようとする作曲者の意欲的な姿勢が感じられます。

劇的な要素がほとんど見られないため、やや冗長に感じられなくもありませんが、愉悦感・幸福感が横溢した作品。
とりわけ、ロマンティシズムの極致のような第2楽章は、数あるベートーヴェンの緩徐楽章の中でも指折りのもの。

● ドヴォルザーク : 交響曲第9番 ホ短調「新世界より」 作品. 95
昨年の「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」のオープニングでも、沼尻竜典さん指揮の京響の演奏で聴きました。
沼尻さんの端正で手堅くまとめられた演奏と比べると、きびきびとした躍動感が強く印象に残った下野さんの指揮。

第2楽章の郷愁に満ちたイングリッシュ・ホルンを始めとして、ソリスト級が居並ぶ京響管楽器パートの充実ぶり。
ホール全体が息をのむように、音楽に集中している幸せな瞬間が幾度も訪れました。 なかなか得難い体験でした。

            *  *  *  *  *

指揮者の下野さんを含めて、独奏者の豊嶋さん・上村さん・上野さんは、いずれも京都市立芸術大学の教授の方々。
世界的な音楽都市のウィーンやベルリンと同様、京都も「音楽の都」と呼ぶにふさわしい、誇らしい演奏会でした。



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