まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 第566回定期演奏会

2013-03-26 18:39:47 | kyokyo

2013年3月24日(日)午後2時30分 開演 @京都コンサートホール・大ホール
指揮 : 広上 淳一(常任指揮者) / 独奏 : クララ=ジュミ・カン(ヴァイオリン)

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● ハチャトゥリアン : 組曲「仮面舞踏会」
プログラムノートの解説によると、作曲者ハチャトゥリアンはアルメニアの人だそうです。
「レイジング・ブル」の異名を持つボクシングの元世界王者、ビック・ダルチニャンと同じ。

アルメニア人の国民気質はよくわかりませんが、この二人には共通の「DNA」を感じます。
「剣の舞」のイメージ。 型破りで好戦的なファイター・タイプ。 うねるようなエネルギー。

加えて、広上さんの指揮姿はダルチニャンのボクシング・スタイルを彷彿とさせてくれました。
大胆でちょっと人を食ったようなおどけた動作、それでいて決めるところはビシッと決める!

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● コルンゴルト : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品.35
チラシの「大陸的なスケール感溢れる」というコピーが、ちょっとした先入観になったような。
もっと感情移入たっぷりで情熱的な演奏をされる方かと思いきや、むしろ繊細・可憐な印象。

高難度の技術を要する曲にもかかわらず、全く危いところを感じさせない辺りは流石でした。
解釈の仕方によっては、もっと濃厚、爛熟したウィーン風の演奏もアリなのかも知れません。

逆に、才能溢れる若手演奏家を優しくサポートするような、広上さんの指揮ぶりにも好感。
ハリウッドの映画音楽との境目の辺りで、クラシック音楽としての品位を保った上質な演奏。

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● プロコフィエフ : 交響曲第7番 嬰ハ短調 作品.131
プレトークの際、広上さんの方から「あまり深く考えずに楽しんでください!」というお言葉。
ピアノを含めて、多彩な楽器群が活躍するオーケストラの世界に、すっかり魅了されました。

確かに、日本人が好みそうな「苦悩から歓喜へ」というようなストーリー性は皆無の楽曲。
だからこそ、オーケストラの成熟度や機能性を計る上では、格好の選曲とも言えるでしょう。

終楽章の終り方にはちょっと驚きましたが、これは初演版と改訂版との違いなのだそうです。
旧ソ連の芸術家が背負った宿命とも言える、政治的な干渉についても考えさせられました。

            *  *  *  *  *

卒なく演奏すれば誰もが感動を得るような、「通俗的」な名曲を並べるプログラムではなく、
広上=京響5年目のシーズンのラストを飾るに相応しい意欲的な選曲。 充実した演奏内容!

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イリヤ・レーピン 「皇女ソフィア」

2013-03-09 18:48:46 | art

国立トレチャコフ美術館(ロシア・モスクワ)蔵 「レーピン展」
2013年2月16日(土)~3月30日(土) @姫路市立美術館 企画展示室

            *  *  *  *  *

皇位継承を巡る争いに敗れたソフィアは、義弟ピョートルにより修道院の奥深くに幽閉される。
このシーンは、ソフィアを尼にするよう命令を受けた将兵が扉を開けた瞬間をとらえたもの。

長年の幽閉生活にもかかわらず衰えを知らない闘争心、圧倒的存在感と王者としての風格。
怯えた目つきでこちらを窺う小柄な侍女と比べると、よりいっそう際立つ彼女の強烈な個性。

部屋右奥の窓外には、親ソフィア派の銃兵隊長の死体が見せしめのために吊るされている。
前身から溢れんばかりの憤怒の情の背後には、凍りつくような恐怖・絶望感も読み取れます。

            *  *  *  *  *

私たちをドラマチックな歴史の一場面の目撃者のように思わせてしまう、見事なまでの画力。
ロシア歴史画の傑作と共に、家族の日常を描いた微笑ましい作品も印象的な展覧会でした。

Sophia

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