まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

西 加奈子 「円卓」を読んで

2011-05-30 17:16:43 | book

主人公の琴子は、小学3年生の女の子。 周りの人たちからは、「こっこ」と呼ばれています。
私の読書歴からいうと、小学5年生の「ハル」を抜いて、史上最年少のヒロインの登場です!

題名の「円卓」は、(高級?)中華料理店によくある回転式テーブルのこと。 鮮やかな真紅。
廃業閉店したお店から、ちゃっかりもらってくるあたりが、いかにも「大阪人」らしいところ。

            *  *  *  *  *

こっこ一家は、両親に祖父母、それに三つ子の中学生のお姉ちゃん。 三世代八人の大家族。
明るく楽しい毎日ですが、こっこは「なにがおもろいねん!」といった感じで暮らしています。

同級生の香田めぐみさんの「ものもらい」に憧れ、ぽっさんの「きつおん」がカッコいい!
平凡さを嫌う「こっこ」は、一般的にはネガティブとされるものに強く惹かれてしまいます。

            *  *  *  *  *

そんな「こっこ」を取り巻く、個性豊かな性格・趣味嗜好を備えた愛すべき登場人物の皆さん。
ちょうど反抗期を迎えた、感受性豊かな女の子の日常が、とてもコミカルに描かれています。

家庭・学校で交わされる「大阪弁」の歯切れのよい会話が、テンポよくリズミカルに響きます。
会話を文字に変換すると、削がれてしまいがちな「活き」のよさが、巧みに表現されています。

            *  *  *  *  *

大笑いしながら読み進めていくと、場面の雰囲気(文章の感じ)の変化に気付かされます。
それは、「こっこ」自身の心の変化であり、戸惑い、悩み、考え、そして成長していく過程です。

そして、何より、エンディングへ向けて、ラスト数ページの展開、表現のすばらしいこと!
「ものもらい」でも、「結膜炎」でもないのに、文字がゆがんで見えにくくなってしまいますよー。

Entaku

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角田光代 「よなかの散歩」を読んで

2011-05-08 11:33:34 | kakuta

本の帯には、「生きていく上で役にたつようなことはいっさい書いてありません」とあります。
確かに、「役にたつ」ようには到底思えませんが、=「面白くない」とは限らないのです。

            *  *  *  *  *

角田さんの日常の中に、私と似通っている、共感できる部分が見つかると、本当にうれしい!
でも、「えっ、角田さん…?!」という猟奇的な(?)部分も、角田さんの魅力なのです。

このエッセイ集は、「食(一)・人・暮・食(二)・季・旅」という構成になっています。 
「食」にまつわるエッセイが二部立てになっているところが、いかにも角田さんらしいです。

さすがの角田さんも、最終章を「食(三)」とするには気が引けてしまったのでしょうか?
最終章は、ご趣味の「旅」のエッセイで。 といっても、つまるところは「旅ごはん」の話。

九州・天草への旅は、「遠くへ行きたい」の放送分。 たこ釣り・天然塩・隠れキリシタン…。
でも、取材の背景には、「九州の甘い醤油!」という角田さんの強い一念があったのですね。

            *  *  *  *  *

この本の表紙モデルは、角田さんの愛猫のトトちゃん。 本の中にもこっそり隠れています。
「猫より犬が好き。でも、犬よりもトトが好き!」という角田さんの気持ちが伝わってきます。

Yonaka

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ラ・フォル・ジュルネ びわ湖 2011

2011-05-01 09:58:23 | concert

2011年4月29日(金・祝)・30日(土) @ 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
びわ湖2回目の開催となる「熱狂の日」音楽祭。 テーマは「ウィーンのベートーヴェン」。

            *  *  *  *  *

● ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 「皇帝」 作品.73
ミシェル・ダルベルト(P) / ゲオルグ・チチナゼ / シンフォニア・ヴァルソヴィア
東日本大震災の影響により、残念ながら、出演者の総入替えとなってしまったステージです。

ピアノ協奏曲の世界に君臨する「皇帝」の名に相応しい、風格と威厳に満ちた名曲中の名曲。
コンサートホールの「生演奏」で聴きたいという、かねてよりの夢がようやくかないました。

来日公演のキャンセルが相次ぐ中、急遽、ステージに立って下さった皆様に感謝、感謝!
指揮者もまだお若く、オケも中規模の編成。 正直、ちょっと物足りなかったかなぁー。

            *  *  *  *  *

● ジュスカ・グランペール ON STAGE
ヴァイオリンとギターによる男性デュオ。 フランス語で、「おじいさんになるまで」の意味。
個人的には、クレモンティーヌさんとのジョイント・コンサート以来、2回目になります。

軽妙なトークに誘い込まれてしまいますが、彼らは「横山ホットブラザース」ではありません。
ひとたび演奏を始めると、ジャンルに捉われない、ボーダーレスな「音空間」が広がります。

ピアノ・ソナタ「悲愴」の第2楽章は、彼らのクオリティーの高さを示した感動的な演奏。
大ホール・ホワイエの仮設ステージでしたが、聴衆の皆さんは水を打ったように、しーんと!

            *  *  *  *  *

お天気が下り坂のせいか、鉛色の雲と湖面が広がっていたのが、ちょっと残念でしたが、
さすが2回目の開催ということもあって、スタッフの配置・誘導も行き届いた対応でした。

Nekkyo

コメント (3)
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