まい・ふーりっしゅ・はーと

京都発。演奏会や展覧会、読書の感想などを綴っています。ブログタイトルは、ビル・エヴァンス・トリオの名演奏から採りました。

京都市交響楽団 2016年 わたくし的ランキング

2016-12-31 16:22:57 | kyokyo
今年、聴きに行った13公演(定期5、特別3公演含む)の中から、印象に残ったステージのランキングを発表します。
あくまでも、個人的な感動の度合いがベースになっていますので、楽曲の難易度、演奏レベルとは関係がありません。

            *  *  *  *  *

● 【第1位】 リムスキー=コルサコフ : 交響組曲「シェエラザード」 作品. 35
2016年9月11日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
京響スーパーコンサート / 指揮 : 広上 淳一(常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)


広上=京響のコンビで、この曲を聴いたのは5年ほど前のこと。 その間の京響の躍進ぶりは、皆さんもご承知の通り。
豊かなストーリー性と表現力&色彩感。 前プログラムの五嶋みどりさんと比べても、色あせない充実の演奏でした。

● 【第2位】 マーラー : 交響曲第1番 ニ長調「巨人」
2016年9月19日(日)14:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
第20回 京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート / 指揮 : 下野 竜也(常任客演指揮者)

下野=京響のマーラーと言えば、大阪での交響曲「第5番」。 圧倒的な熱演の興奮を今でも思い出すことが出来ます。
今回も、指揮者とオーケストラが一体となる、幸せな瞬間が何度も訪れました。 1月定期の同「第0番」も楽しみです。

● 【第3位】ドヴォルザーク : 交響曲第9番 ホ短調「新世界から」 作品. 95
2016年10月7日(金)19:00 開演 @京都コンサートホール・大ホール
京都市交響楽団 第606回定期演奏会 / 指揮 : ラドミル・エリシュカ

遅れてやってきたチェコの名匠、エリシュカ=京響の初協演。 御歳85才とは思えないほどの瑞々しいタクトでした。
熟練した職人技を見る(聴く)ような曲作り。 「神は細部に宿り給う」という名言を思い浮かべながら聴いていました。

● 【第4位】メシアン : トゥランガリラ交響曲
2016年11月26日(土)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
京都市交響楽団 第607回定期演奏会 / 指揮 : 高関 健(常任首席客演指揮者)


3月定期のマーラーの第6番「悲劇的」でもそうでしたが、「大曲難曲は高関さん!」というイメージが定着した感。
80分を超の複雑精緻な現代作品を、理路整然とコントロールした高関さん。 児玉桃さんのピアノも印象的でした。

● 【第5位】ドヴォルザーク : 交響曲第8番 ト短調 作品. 88
2016年2月14日(日)14:30 開演 @京都コンサートホール・大ホール
京都市交響楽団 第598回定期演奏会 / 指揮 : 大友 直人(桂冠指揮者)

「クール、スタイリッシュ、スマート」という印象が強い大友さんですが、いい意味で裏切られた「熱っぽい」演奏。
「こういう大友さんも、ええやんか!」という感じ。 土俗的な香り、民衆の熱狂ぶりを巧みに表現されていました。

● 【番外編】シュトックハウゼン : 3つのオーケストラのための「グルッペン」
2016年12月23日(金・祝日)14:00 開演 @京都市勧業館みやこめっせ
京都市交響楽団創立60周年記念 特別演奏会 / 指揮 : 広上 淳一・高関 健・下野竜也(常任)


やはり、この曲に触れない訳にはいかないでしょう! 今回が日本でまだ3回目の演奏。 常任指揮者3人の揃い踏みです。
敢えて、現代前衛作品という意欲的な選曲された三人の覚悟、本気度に、京響の更なる進化を確信した演奏会でした。


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京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」

2016-12-29 13:48:02 | kyokyo
2016年12月28日(水)19:00開演 @京都コンサートホール・大ホール

指揮 : ステファン・ブルニエ / 管弦楽 : 京都市交響楽団 / 合唱 : 京響コーラス
独唱 : 横山 恵子(ソプラノ)・手嶋眞佐子(メゾソプラノ)・高橋 淳(テノール)・伊藤 貴之(バス)


            *  *  *  *  *

● モーツァルト : 歌劇「魔笛」序曲 K.620
個人的には、ダイジェスト版のCDを持っていますが、魅力的なアリアや合唱曲など、聴きどころ満載の作品。
序曲には、劇中の有名な旋律が使われているわけではありませんでしたが、開幕にふさわしいわくわく感が。

プログラム・ノートの楽曲解説には、謎めいた「フリーメーソン」の儀式との関係性にも触れられていました。
非常にそそられる部分ですが、この謎解きは、あの名曲探偵「天出臼夫」氏に是非とも依頼したいところです。

● ベートーヴェン : 交響曲第9番ニ短調「合唱付き」 作品.125
今まで聴いた「第9」の中では、たぶん最速。 演奏時間=70分というから、通例よりは5分前後は速いはず。
普段なら、うっとりとして睡魔に襲われてしまう「アダージョ」の楽章では、逆に、パッチリと目が冴えてきました。

演奏中は、「快速テンポにする必然性は、一体、どこにあるのだろうか?」などと、ぼんやり考えていました。
「第4楽章の畳み掛けるような演奏効果の為には、このテンポ設定なのかなあ?」というのが、私なりの答え。

4人の独唱者は指揮者の真ん前。 合唱団の配置はポディウム席ではなく、オーケストラと同じステージの奥。
その分、各パートの響きが、しっかりと厚みのある「塊」のように聴こえ、とても堂々とした立派な歌唱でした。

加えて、京響ファンとして嬉しかったのは、フルートの清水さんが卒団以来、久々に客演首席としてのご登場。
伸びやかで、華のある美しい音色は、あらためて唯一無二の存在であることを実感。 今後の客演にも期待です。

            *  *  *  *  *

京響初登場のステファン・ブルニエさんは、チラシのイメージそのまんまで、屈託のない明朗快活な音楽作り。
オペラ分野での実績のとおり、「歌わせる」ことに長けた指揮者。 横から見たときのお腹も、実にお見事でした。

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京都市交響楽団創立60周年記念 特別演奏会

2016-12-24 19:51:12 | kyokyo
2016年12月23日(金・祝日)14:00 開演 @京都市勧業館みやこめっせ
指揮 : 広上 淳一・高関 健・下野竜也(常任) / 大谷 麻由美・水戸 博之 / 京都市交響楽団

            *  *  *  *  *

● シュトックハウゼン : 3つのオーケストラのための「グルッペン」
創立60周年を迎える京響の誕生と、ほぼ同時期(1955~57年)に作曲された前衛的な現代音楽作品。
大がかりな編成と空間的設営を必要とするため、日本で実際に演奏される機会は、今回でもまだ3回目です。

中央の高関さん指揮する第2オケを挟んで、左側に広上さん指揮の第1オケ、右側に下野さん指揮の第3オケ。
お互いに確認を取りながら指揮する必要上、高関さんは正面(客席)を向き、広上さんと下野さんは対向位置。

客席を囲むように配置された3つのオーケストラの間を、自由奔放に(或いは緻密に?)空間移動する音響。
現代音楽でありながら、あたかも原初的かつ呪術的な「宗教儀礼」に参加しているような思いを抱かせる作品。

● ジョン・ケージ : 5つのオーケストラのための30の小品
この作品ではオーケストラはさらに細分化され、客席を包み込むような配置。 まるで音の「環」の中に居るよう!
「あれっ、変な話し声が聞こえる!?」。 演奏は突然、設置されたラジオの受信する音声が合図で開始されます。

今回は、この時間に放送中のラジオドラマ「ヴェニスの商人」の音声。 これも、偶然性がもたらした産物と言える?
最初は、「演奏中に、スタッフの人たちの会話をマイクが拾ったのでは!?」と、勘違い(冷や汗)したぐらいでした。

前からも横からも後ろからも聞こえてくる音響。 偶発的な音響のぶつかり合いと重なり合いがもたらす不思議な感覚。
「チャンス・オペレーション=偶然性」を謳いながらも、極めて厳格に設定され、計算された作曲技法なのかも?

● シュトックハウゼン : 3つのオーケストラのための「グルッペン」(2回目)
休憩後に2回目の演奏があり、「今度は、席を移動して聴いてみましょう!」というアイディアも秀逸なものでした。
実際のところ、音響的な違いはあまりよくわかりませんでしたが、視覚的には気分一新で十分に楽しめました。

第1回目の演奏のときは満席の状態でしたが、さすがに許容範囲を超えた方々が退席され、ほぼ7割ぐらい埋まる。
それでも、音楽的好奇心、探究心の旺盛な方々が残ったという感じで、客席の方はより純度が高まった(?)印象。

会場のみやこめっせは、通常は大規模な展示場として利用されており、残響は抑えられて設計されている感じ。
拍手してもホールのようには響かず、歴史的な演奏をされた京響の皆さんには、その熱気が伝わったかどうか?

            *  *  *  *  *

こういう「記念碑」的な演奏会の場合、祝祭にふさわしい華やかな作品が選ばれ、大いに盛り上がっての終演が通例。
あえて感動とは無縁の前衛的作品を選び、果敢に挑んでいった京響の皆さんに、心からの敬意を表したいと思います。

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