2010年4月10日(土)~5月9日(日) @ 京都国立博物館
桃山時代の巨匠、長谷川等伯(1539~1610)没後400年の特別展覧会。
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■ 山水図襖(ふすま)
襖絵を断り続けてきた住職の留守を狙った等伯が、一気呵成に描き上げてしまった作品。
しかも、その襖というのが無地ではなく、桐の文様があらかじめデザインされたものでした。
意図したものなのか、偶然の産物なのか? 桐の文様がしんしんと降りしきる雪のようです!
■ 松に秋草図屏風(びょうぶ)
鮮やかな金地を背景に、自由奔放に咲き乱れる秋の草花がリズミカルに描かれています。
秋草の細長く、しゅっと伸びた葉。 その優美でしなやかな曲線に目を奪われてしまいます。
余分な力み・気負いを全く感じさせないながらも、細部に至るまで緊張感が漲っています。
■ 枯木猿猴図(こぼくえんこうず)
荒々しくなぐり描きしたような枯れ枝に、繊細な毛並みにおおわれた手長猿という構図。
左に描かれた一匹の猿は楽しそうに枝から枝へと渡り歩き、躍動感に溢れています。
右の方の母と子猿の微笑ましい姿は、観る者の口もとを思わずほころばせてくれます。
■ 仏涅槃図(ぶつねはんず)
縦10m×横6mという巨大なサイズの仏画は、途中で角度を付けて展示されていました。
安らかな永遠の眠りにつくお釈迦様の周りに集う、たくさんの弟子や信者の方たち。
森の動物たちも皆、お側に控えています。 彼らの悲痛な慟哭が聞こえてくるかのようです。
■ 柳橋水車図屏風(りゅうきょうすいしゃずびょうぶ)
柳に橋、そして水車、いかにも純日本風の三点セットで構成されている屏風図なのですが、
どこかしら、現代に通じるようなアート感覚・デザイン性を感じさせる作品です。
銀座あたりのギャラリーに飾ってあったとしても、全く違和感を覚えないような気がします。
■ 松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)
濃い墨で描かれた前景の松、荒々しいタッチの松葉。 その背後に薄墨で描かれた松林。
樹間には、たっぷりと水気を含んだ霧がたちこめています。 どこまでも続く幻想的な風景。
落葉松はさびしかりけり。 旅ゆくはさびしかりけり。 北原白秋の詩のイメージです。
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こんな風に書くと、じっくり作品と対峙して、ゆっくり鑑賞してきたように思うでしょ。
実際は入場まで数十分の長い行列、中に入れば、バーゲン会場のような混雑ぶりでした。
2010年1月6日(水)- 3月14日(日) @ 京都国立博物館〔東山七条〕
中野京子先生の講演会の時に引換えてもらったチケットで、昨日の金曜日に行ってきました。
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● バラ冠の祝祭(作者不詳 デューラーに倣う)
芸術的な評価はさておき、この絵(模写)には、とても面白い「仕掛け」が施されています。
中央に描かれた神の御子「イエス」のおくるみに、なんと一匹の蝿がとまっているのです!
その蝿をじっと見つめる皇帝マクシミリアン1世。 お茶目な画家の気まぐれな悪戯?!
● フェリペ2世の騎士甲冑
装飾性・機能性など、当時の金属工芸の粋を集めて作られた武具なのですが、どこか変なの?
それもそのはず、男性の大切な部分のプロテクトが余りにも無防備過ぎるのです。
当時、流行っていたファッションに影響しているのですが、今なら軽犯罪法違反になるかも?
● 白衣の王女マルガリータ・テレサ(ベラスケス)
まるで「フランス人形」のように可愛い、「スペイン」のプリンセス、マルガリータちゃん。
変な言い回しですが、実際、彼女には、スペイン人の「血」は一滴も流れていないのです?!
彼女の高貴な「青い血」は、マリア・テレジアを経てマリー・アントワネットへと続きます。
● オーストリア皇妃エリザベート(ヴィンターハルター)
彼女の「美しさ」、作品の「大きさ」(300×216cm)に、圧倒されてしまいます。
それでも、彼女がたどる悲しい運命を思うと、言い知れぬ「怖さ」が忍び寄ってくるようです。
NHK教育テレビ「知る楽」の第2回は、この作品です。 京子先生のお話が楽しみです。
● ハム、オウムガイのカップ、シャンパングラス、銀のデカンタのある静物
何気ない食卓を描いた静物画なのですが、まるで実際の写真を見ているような精緻・巧妙さ!
テーブル脇のオレンジなんて、ガブリと噛りつきたくなるような「みすみずしさ」でした。
周りに展示されている絵画とは、ひと味違った印象! けっこう人だかりが出来ていました。
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さすがに、何百年もの間、ヨーロッパに君臨したハプスブルク家が所蔵した名品がズラリ!!
平日の昼間にもかかわらず、お客さんの足もとぎれることなく、館内はギッシリの状態でした。
2010年1月31日(日) @ ハイアットリージェンシー京都 1階・ボールルームⅡ
京都国立博物館で開催中の展覧会、「THE ハプスブルク」を記念しての講演会でした。
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■ 「怖い絵」シリーズの著者、中野京子先生の講演会だけに、満員御礼の大盛況でした。
チケットは追加席を含めて完売されていたとのこと。 さすが、すごい人気ですねー!
■ 中野京子先生は、新聞の写真よりも、若々しくて、おキレイで、魅力的な方でした。
講義調というよりフランクな感じの言葉づかいで、親しみを感じさせるお人柄でした。
■ こんな先生なら、もう一度、大学の講義を受けるのも悪くはないなぁーと思いました。
実際、講演を聴きながら、熱心にメモをとっておられる方もいらっしゃいました!
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■ ヨーロッパ王室間の複雑に錯綜した婚姻(血縁)関係。 それにまつわるエピソードの数々。
最初は、自分の身内(の系図)に当てはめて聴いていたのですが… もう絶句です?!
■ ベラスケスが描いた、あの愛らしい「マルガリータ」ちゃん(王女)も、近親婚の犠牲者?
それでも、先生からご紹介のあった、嫁いだ後の肖像画の微笑みに幾分救われた思いも。
■ たとえ統治能力ゼロであっても、芸術を大いに愛したスペイン国王・フェリペ4世。
ベラスケスの芸術作品も、この王のおかげ? でも、庶民の生活はどうだったのでしょう?
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■ スペイン・ハプスブルク家は、1500年に誕生し1700年に滅亡したのだそうです。
最初のオペラが発表されたのが1600年、日本では関ヶ原の戦い。 - 受験生の方へ♪
■ ホルバイン作の「ヘンリー8世像」に描かれている「コドピース」の話も面白かったです。
帰り道、すれ違う男性を見ながら、ついニヤニヤ?!(← 変な意味じゃないですよー!)
■ 一昨年は角田光代さん、去年はクレモンティーヌ。 そして、今年の中野京子先生。
人生の「出会い運」を、ほぼ使い果たしてしまったような感じ。 残り福、ありやなきや?
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講演会が終って外に出てみると、雨脚がけっこう強くなっていました。 傘の花がいっぱい。
ということで、実際の展覧会は、平日の暇な時間帯にゆっくり見に行くことにしました。
2010年1月2日(土)~1月24日(日) @ 美術館「えき」KYOTO
知合いの方から招待券をいただいていたので、ジェイアール京都伊勢丹7Fにある美術館へ。
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■ 菊池契月(1879~1955)は、近代「京都画壇」を代表する画家のお一人です。
と言っても、私にとっては、お名前を聞くのも作品を鑑賞するのも、実はこれが初めて。
■ 最初のブロックには、平家物語などの古典や漢籍を題材にした歴史画の大作が並びます。
伝統的な大和絵をベースに、ルネサンスの宗教画が融合したような不思議な印象を受けます。
■ 中ほどあたりからは、展覧会のポスターを飾る「友禅の少女」のような人物画が続きます。
描かれている女性は清楚で気品のある美しさをたたえ、ひとつの理想的な姿を示しています。
■ その中でも、私が特に惹かれたのは、かすかに微笑む、「朱唇」と題された作品の女性です。
衣服からすると歴史画ですが、明るく快活な現代女性に通じるような親しみを覚えました。
■ 今回は生誕130年記念の展覧会だけに、代表作が一堂に会したといった感じですが、
滞欧期の模写、写生帖、書簡など、なかなか興味深い展示物も数多く出品されていました。
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不思議なもので、本物の芸術を見たり聞いたりするだけで、なんだか元気が湧いてきます。
私たちの体内細胞には、「美」に触れると活性化を促すような物質が含まれているのかも?!