これは失敗作だ。見終えたときはそう思った。いや、見ながらも、こんなはずじゃなかったのに、と何度も思った。原作があまりに素晴らしすぎて、比較するからそうなるのだということはわかっている。僕の思い込みが激しくて冷静な判断ができていないのだろうということもわかっている。映画と小説は別物ということだってわかっている。でも傑作『ちはやふる』3部作を作った小泉徳宏監督が次の作品としてこの小説を選んだということ . . . 本文を読む
『いつか、いつも、』ときて、その後『いつまでも』と続く甘いタイトルで、もちろんハートウォーミング。昔懐かしい家族のお話(ホームドラマ!)で、だから食事のシーンが山盛りあり、みんなでおいしいものを食べると幸せなんていう安易な展開。ちょっとうざったい昭和映画だが、久しぶりの長崎俊一監督作品だ。もうそれだけで、内容も確かめずに劇場に行く。彼の映画を見るにはいったいいつ以来のことだろうか。
少なくとも、 . . . 本文を読む
昨年映画化もされた『リカ』。これはそのシリーズ最新作だということらしい。映画は見ていないけどなんだかいろんな意味で凄まじそうな映画で、怖いもの見たさで少し見てみたい気もするけど、ネトフリにもアマゾンにも入ってなかった。(huleにはあるらしいが、今はhuleはやめている)そこでまぁ、たまたま手にしたこれをまず読むことにした。
シリーズ第7作だけど「連続もの」ではないし単発で読めるみたいなので移動 . . . 本文を読む
なんてシンプルなタイトルだろう。中身はこのタイトルそのまま。でもそんなシンプルさがなんだかとても愛おしい。ここで暮らす人たちの穏やかな日々のスケッチがそこでは描かれていく。入居者は40歳以上の独身女性に限る。築70年ほどのおんぼろアパートだけど、きちんと内装はリニューアルされていて、質素だけど、快適。家賃は諸経費込みで5万円。共有スペースのダイニングキッチンでのんびりできる。もちろん自分の部屋は個 . . . 本文を読む
なんとこの作品は劇団としては60年ぶり(!)の再演となるらしい。台本は木下順二の『赤い陣羽織』だ。1962年の夏に上演したとパンフにはある。今回オリジナルの設定を大幅に改変して(潤色、演出は坂手日登美)時代背景も明治維新の初めの頃に設定、舞台も大阪にした。言葉も当然河内弁になる。さらには明らかに明治維新と大阪維新を重ね合わせて、現政権を揶揄することで静かに反旗を翻す芝居とする。(大胆というより、そ . . . 本文を読む
久々に佐藤香聲の演出、三名刺繍の台本という黄金コンビによる『SMオペラ』の新作を見る。今回もまた阿鼻叫喚のスペクタクルである。刺激的で過激な表現や描写で驚かせながら、この魔窟で繰り広げられる狂宴を「演劇にバレエや民族舞踊、ショーダンス、フェティッシュショー、そして音楽ライブを融合させた舞台表現」で見せていく。それは演劇という枠組みには簡単には収まりきらないパフォーマンスだ。毎回、新鮮な驚きを提示し . . . 本文を読む
アッバス・キアロスタミ監督の旧作を見た。たまたま今まで見てなかった初期作品である。アマゾンに入っていたので、見ることにした。彼が『友だちの家はどこ?』で日本に初めて紹介されたとき、こんな映画ありなのかと衝撃を受けた。あの作品の描く世界に魅了されたのだ。こんなにも小さな話があんなにも豊穣で新鮮な驚きを与える。これは日活児童映画では描けない(描かない)視線だ。大人が子供を描くにも関わらずそこには大人に . . . 本文を読む
実は渾身の大長編である前作『ヒトコブラクダ層ぜっと』にはがっかりした。2巻構成のあれだけの大作なのに、まるでお話に乗れなかったのだ。それだけに今回の新作も少し斜に構えて読み始めた。このタイトルであの表紙のイラストである。軽いタッチの作品であろうと思いさらりと読み流すくらいの勢いで読み始めたのだが、それがもう、とんでもない面白さ。荒唐無稽の世界はいつも通りなのだけど、今回は入り口が小さくて高校生の女 . . . 本文を読む
ずいぶん前から配信されていて少し気にはなっていた映画だが、なかなか見る機会を持てなかった。きっと優しいハートウォーミングだけど、なんだかパンチに欠ける気がして後回しにしていた。ようやく見たのだが、これがとてもよかった。こんなことならもっと早く見ていてもよかったのではないか、と思う。95分の短い映画だ。お話も単純。『アメリカン・ビューティー』でアカデミー脚本賞を受賞したアラン・ボールが監督・脚本を手 . . . 本文を読む
これを児童書のコーナーで発見したのだけれど、(かわいいイラストの表紙で、読みやすそうでなんだか楽しそうな本だ、と手にしたのだが)これがまぁ、一筋縄ではいかない作品だった。確かに読みやすいけど、内容は実はかなり専門的で難解。これを小学生に読ませるのか、と少し驚く。一応はわかりやすくは書いてあるけど、かなり難しいはず。
主人公のふたりは6年生でまだ小学生。(姉貴である中学生の女の子もサポートに入るけ . . . 本文を読む
まさかこんな映画を見ることになるなんて、思いもしない展開だった。大切にしていた豚が奪われて怒り狂ったニコラス・ケイジが暴走するアクション映画だと思っていたのに、これはまるで違う。なんとニコラスなのに暴れないのだ。それどころか地味で思索的な映画。こんな映画をニコラス・ケイジで作るのか。まぁなんでもありの今のニコラスだから、こんなのまでありなのか。チラシの宣伝では「溺愛するブタを奪還する、慟哭のリベン . . . 本文を読む
この日本版タイトルは苦肉の策だ。宣伝会社が無い知恵を絞りだした。原題は『The Justice of Bunny King』。真面目でストレートすぎるからこのままではセールスが難しい。ドライブなんかしないし、車を奪い、運転するけど、それをタイトルに持ってくるのは早計だ。だけど、そうしたいという気持ちもわかる。彼女の暴走を止められない。自分でもわかっている。だけど、ここで止まるわけのはいかないのだ。 . . . 本文を読む
震災後の福島、立入禁止区域での認知症気味の母と息子の生活を描いたデビュー作『家路』から8年の歳月をかけて完成させた久保田直監督渾身の第2作。今回は30年夫の帰りを待ち続ける女の話。今回も前作に引き続き主人公の登美子を田中裕子が演じる。行方不明者(年間8万人が失踪するという現状がこのお話の背景になっている)の夫の安否、もしかしたら拉致されたのではないか(映画の舞台は新潟の離島、というか佐渡島だけど) . . . 本文を読む
これだけのスケールのお話を400ページほどの枚数で収めるのか、と驚く。実は読み始めた戸惑った。宇佐美まことだから手にしたのだけれど、お話がなんか中国の古代の話で、あまり興味がないなと思ったからだ。読み始めたときは途中でやめようかと何度か思ったけど、難しいところを流してお話だけをちゃんと追いかけていくと必ずしもまどろっこしくはないし、難しいわけではないと気付いた。だいたい人の名前や地名の漢字が読めな . . . 本文を読む
Netflixで見る久々の傑作映画だ。というか、最近のNetflixはつまらないので、アマゾンばかりを見ていた。いや、もう配信自体がつまらないので飽きてきていたのだが、それでもちゃんと探せば凄い映画が隠れているものだ。これは2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品らしい。
冒頭の11分に及ぶ長回しが凄まじい。『アテナ』とタイトルが出たときそこで思わず映画を止めてしまった . . . 本文を読む