なんとこの作品は劇団としては60年ぶり(!)の再演となるらしい。台本は木下順二の『赤い陣羽織』だ。1962年の夏に上演したとパンフにはある。今回オリジナルの設定を大幅に改変して(潤色、演出は坂手日登美)時代背景も明治維新の初めの頃に設定、舞台も大阪にした。言葉も当然河内弁になる。さらには明らかに明治維新と大阪維新を重ね合わせて、現政権を揶揄することで静かに反旗を翻す芝居とする。(大胆というより、そこはアレンジは軽く笑える程度の設定を施したのだが)さすが大人の劇団「息吹」だ。なかなかこんなアプローチはできない。気骨がある。
芝居自身はとても楽しい。笑いながら、この「たわいもない劇」を楽しめばいい。当然これはシリアスなんかではなく、コミカルなお話だ。それがまるで祭りで上演される村芝居のようなタッチで綴られていく。役者たちもなんだか楽しそうに演じている。わざとらしくて大仰なリアクションもいい。あえてこういう作り方をしたのだろう。
老舗ベテラン劇団が、そのへんのシニア劇団よりもっと高齢者を擁して年季のある芝居を堂々と作る。そしてそこに大ベテランである大坊晴彦と浮田孝明とともに、主演として若手女優である劇団邂逅の小林桃子を迎える。彼女はこの年配の男性二人の向こうを張り、この劇世界で自由自在にドタバタを演じる。なんと牛やオウムまで芝居に登場して活躍する始末だ。表面的には1時間20分ほどのかわいい作品である。
お上は税金を湯水のように使い、この大阪で「大博覧会」を開くという。そこで合法賭博の「ギャンブル場」を作り、儲けようという。もちろんそれは「明治維新の頃の大阪」のお話である。これはそんな時代を背景にして、百姓のおやじとその女房が大奮闘する喜劇だ。庶民の立場から笑い飛ばしながら告発する。なんとも勇気のある芝居である。