
芸能事務所に所属するふたりの少女の物語。2006年7月、小5と小6からスタートして、15年5月、大学生になっている。さらに時間は戻り、2008年、8月。中学生になったふたり。ふたつの時代を行き来して、ジュニア・アイドルとして有名になれず、活躍出来なかった彼女たちのあの頃と今を描く。
さらには児童ポルノとしてあの頃を告発され、被害者であるにも関わらず、周りから白い目で見られる。自分たちの過去が否定される。一生懸命アイドルを目指していた。その事実は彼女たちの大切な記憶だとしても、それはわかってもらえないし、受け入れられない。
少年漫画に入れ込み、2次創作にハマる。タイトルの『NAME』はそこからきているのだけど、この話がメインの話と上手く交錯してこないのは、つまらない。同時進行してそこから事態はカタストロフに向かうのだが、無理からの展開でしっくりいかない。あの日々が過去の闇として葬られるのは忍びない。母に勧められただけで、好きでしていたわけではないけど、嫌というわけではない。ひとつ先輩で輝いていた美沙乃ちゃんも芸能活動をやめたことを知り、「何か」が終わったと思う。改名することで、過去を捨て再出発する。
幾分後味の悪い小説だが、彼女たちの傷みは伝わる。芥川賞候補の作品なのに結構読みやすい作品なのもよかった。