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映画・演劇のレビュー

小手鞠るい『インド象の背中に乗って』

2025-08-13 17:21:00 | その他
これは小手鞠さんの体験を下敷きにした作品らしい。彼女が20.30代の頃インドを旅した経験、体験が題材になっている。それとたぶん彼女が少女時代に思ったこと、その記憶から書き起こしたのではないか。少女が世界と出会う時間が描かれる。

まず最初の劇中劇の絵本(童話)を読んだところで思わず泣いてしまった。これは幼い少女(と、いってももうすぐ14歳になるけど)が、このお話に感化されてインドに行く決意をするまでのお話だ。

この夏休み、東京から今年もやって来たリン(9歳)たちと万博に行った。70年の万博の時、僕は小学5年生だった。(たぶん)初めて世界を見た。さまざまな知らない国のパビリオンに行き、後で百科事典でその国のことを調べた。楽しかった。大阪にいるけど、世界を旅する気分だった。

あの日の興奮をリンにも体験して貰えたなら、と思ったが、4年生のリンにはまだ早かったかもしれない。だけど、リンの母親(僕の娘ね)はすごく楽しかったみたいで彼女は今回の7日間の大阪滞在中3回も万博会場に通っていた。僕は今は暑いのも並ぶのも無理だから、もう行かないけど、子供の頃、千里で見た万博が夢のようだったことは忘れない。

海外には40歳を過ぎてから行くようになった。台湾から始まってアジア圏を回った。ヨーロッパにも。だけどインドには行ってない。この本を読んで、いろんなことを思い出してしまった。子どもの頃、万博以降、海外に憧れて地理が大好きになったこと。イギリス、ベネルクス三国、フランス、等々。行きたいところは山盛りある。10代の前半まで、いつかそこを実際に旅する日を夢見た。だけどやがて毎日の生活の中で、そんなことを忘れた。この小説の主人公である少女の年頃が憧れのピークだった気がする。

彼女が絵本作家の高田摩耶子さんの書いた旅の記録を読む部分がこの作品の中心になる。彼女が25年前、インドを旅した記録だ。今のインドではない。だけどほんの少し前のインドである。30日の旅は驚きの日々。そんな旅を少女も驚きをもって追体験する。

読みながら今から約20年前に初めて中国に行った時のことを思い出してしまった。あれは凄まじい体験だった。これは僕の体験記ではないから書かないけど、このお話のインド体験記に(少しだけど)匹敵するくらいに衝撃的だった。北京オリンピック前の北京。(オリンピック後に行った時にはまるで違うピカピカの街になっていた。)信じられないようなことの連続。

身をもって世界を知る。さまざまなことがそこにはある。知らなかったこと、思いもしなかったこと。実際行ってみなくてはわからないことが待ち受ける。この本は児童書ではないけど、これから世界と向き合う子どもたちへのメッセージであり、僕たち大人たちにも改めて、世界と向き合うきっかけを作ってくれる。素晴らしい一冊だ。

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