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金と仮想通貨・・・不換通貨の終焉

2017-06-01 10:17:00 | 時事/金融危機
 
■ 現代の通貨は国や誰かの借金の小口債権 ■

リーマンショック以降、中央銀行は大量の通貨を供給して来ました。

中央銀行は資産を買い入れて通貨を発行します。一般的には資産は自国国債であったり、外貨であったり、外国の国債であったり、リーマンショック後はMBSであったり、株式であったりします。これらに共通するのは、債券である事です。(株式は違いますが)

要は、発行された通貨にバランスする中央銀行の資産のほとんどが国や誰かの借金の証書なのです。現代の通貨とは小口の借用証書だとも言えます。

■ 国債の価値は国の信用力に担保される ■

現在、各国中央銀行のバランスシートの半分以上を占めるのが国債です。それを元に通貨を発行している訳ですから、通貨の価値を担保しているのは国債の価値だとも言えます。では、国債の価値が何によって担保されるのか・・・。

国債は国の借金ですから、ある時期が来れば返さなくてはいけません。では国債の償還の原資は何か・・?一般的には税金です。国が借金をしても、それによって供給される資金が、経済を拡大させ、税金として国に戻って来るのなら、国債の価値は担保されます。

ところが、現在の日本では、国債を発行する為に赤字国債を発行しています。これは謂わば借金の自転車操業状態。かつては国債の買い手は主に銀行などの金融機関でした。金融機関が国債を購入する原資は預金や生命保険料ですから、日本国債は国民の資産によってファイナンスされていました。要は、国債にはしかりと価値の裏付けがあった。

しかし、現在日本は日銀が国債を市場から大量に買い入れています。その原資の何割かは日銀に豚積みされている民間金融機関の資金ですが、それ以外は国債発行に伴って日銀が通貨を大量に擦る事でファイナンスされています。

最近では「中央銀行は政府の持ち物なのだから、中央銀行がファイナンスした政府の借金はチャラになる」などという「統合政府」という発想が浸透したので、財政赤字に対して国民の一部は不感症になって来ています。彼らの主張は次の様なものでしょう。

・日銀は政府の子会社なのだから連結決算では日銀保有分の国債は相殺される
・国債償還時の金利も日銀から政府に返納されるのだから、日銀保有分の国債利息は実質ゼロ
・日銀は償還された国債を国債に再投資出来るから、償還期限無限の国債と考えられる

これは間違いでは無いのですが、長期的には通貨と財政赤字の両方が増え続ける事になります。財政赤字は統合政府でチャラになるとして・・・通貨量の増大は本来は確実にインフレを招きます。ところが彼らはこうも主張します。

・デフレなのだからインフレは起こりにくい。実際に金利はゼロ(マイナス)だ。
・インフレが加速したら、日銀が金利を引き上げればいい
・銀行の準備率を高くして市中のマネーを吸収する方法も有効だ

確かにこれも間違いでは無いのですが、現代の金融の問題は実体経済が刺激する前に資産市場でバブルが発生してしまう点です。特に成長力の落ちた経済では実体経済よりも手取早く金利が得られる資産市場に資金は集中し易い。現実に東京ではアベノミクス以降不動産バブルが膨らみ、今まさにそれが崩壊し始めています。アメリカでも株式市場は完全にバブルの様相を呈しています。

ところが積極財政論者は日本が財政破綻しても大丈夫だと主張します。

・日本国は世界最大の債権国だから財政破綻はしない
・日本国の資産は沢山あるのだから財政破綻はしない

日本国の債権の多くが米国債ですが、これを売る事は事実上不可能です。もし、日本政府が米国債売却の動きを見せたら、アメリカは躊躇する事無く日本政府が保有する米国債の売買を停止します。現在の米国債は電子化されアメリカが管理しているので、闇のルートで売るなんて事は出来ません。

日本国の資産の多くが橋や道路といったインフラです。これも財政が破たんしそうだからと言って切り売りする事は出来ません。

国民の資産で日本国債がファイナンスされている間は日本国債には価値の裏付けが在りましたが、中央銀行がファイナンスする日本国債には価値の裏付けが希薄です。「国債=通貨」なのですから同時に通貨の信用力も次第に低下します。

要は、日本国債が暴落せずとも為替市場で円が次第に下落し、結果的に通過の価値が棄損します。当然輸入物価がジリジリと上昇し、景気が悪化する中で物価が上昇するスタグフレーション(悪性インフレ)になります。これの極端な例が現在のベネズエラです。

ベネズエラは石油輸出で外貨を稼ぐ事が出来ますが、原油安で経済は悪化し易い。そこにさらに政治的混乱が加わり、一気に通貨が下落し、国債もデフォルト一歩手前です。


■ ドルという商品 ■

日本を例に取りましたが、FRBも似たり寄ったりの状況です。FRBのバランスシートは米国債とMBSなどが積みあがっています。

しかし、目下の所ドルは通貨であると同時に人気商品です。

ドルは基軸通貨で貿易決済通貨ですから、従来はドルを手にしなければ外国から物資を買い付ける事は出来ませんでした。ですから、日本やドイツは工業製品を輸出してドルを稼いでいた。石油や鉄鉱石を輸出する国もあれば、農産物を輸出する国もある。

とにかく世界の国がドルを欲しがる限り、アメリカは米国債を発行してドルを生み出し続ける事が出来たのです。

■ ドル1極からの脱却 ■

世界はドルを欲していますが、同時にドルの信用が将来的に続くかを危惧しています。リーマンショック直後にドルの信用に疑問が持たれ。IMFのSDRを元に新な国際通貨を作る研究がされましたが、金融危機が収束する過程で、ドルの信用は回復して、新な基軸通貨作りの話はフェードアウトしました。

しかし、各国は準備通貨のドルの比率を下げ、他国通貨や金に置き換え始めています。中国やインドやロシアは世界中の金を国家と国民が買い集めています。フランスもアメリカに預けていた金を軍艦で自国に運びました。ドイツ議会もアメリカから金を取り返す決議をしましたが・・・これは履行されていないと記憶しています。

一方で、中国とロシアは両国の通貨を持ち合って貿易決済に使用しています。ユーロも貿易決済で使われています。最早、世界はドルの一極体制から脱却し始めているのです。

これは裏返せばドルの魅力が薄れている事を示します。


尤も現在のドルは貿易決済で使われる量よりも、金融取引などで使われる量が圧倒的に多いので、ドルの需要は衰えていません。結果的に極端なドル安は発生せず、むしろFRBの利上げを睨んで、ドル高のバイアスが掛かっています。

しかし、次なる金融危機が発生した場合、再びドルの信用不安が発生する可能性は高い。いえ、ドルだけでなく、既存の通貨の全ての信用が低下すると私は妄想しています。

リーマンショック以降、中央銀行は狂った様に通貨を増刷して来たのに、結局リーマンショック以上の危機が起きれば、中央銀行や国家に経済危機を打開する手段が無いという事に誰もが気付くからです。これは、お金の価値に疑いを持つ事と同義です。

「人気取で通貨を増刷した国家は通貨が暴落する」これは過去から何回も繰り返され、歴史が証明する所です。


■ 金・仮想通貨・ブロックチェーン ■

「金」「仮想通貨」「ブロックチェーン」。この三つのキーワードでピンと来た方は陰謀脳の持ち主でしょう。

リーマンショック直後と同様に、次なる金融危機が発生すれば必ずやドルに代わる基軸通貨の話し合いが持たれるでしょう。いえ、世界的な通貨システムの見直しがされるはずです。「紙切れ」と認識された通貨に再び価値を持たせなければなりません

一時的ではあれ「通貨を価値とリンク」させる手段が模索されるはずです。伝統的には「金」がその最有力候補です。金兌換制度の復活です。

ただ、単純に通過と金を交換出来る様にすると、人々は金で価値を保全する事を選び、経済から流動性が一気に枯渇してしまいます。ですから、単純な金兌換という手段は取らずに、中央銀行が保有する金の量に比例する通貨が発行出来るシステムが模索されるでしょう。

同時に通貨の電子化も検討されるはずです。既に多くの国で高額紙幣が廃止されています。日本も1万円札を廃止する検討が始まっています。これは表向きは、マネーロンダリングなどを防ぐ為とされますが、結果的に現金の使用を制約します。

10万円を千円札で財布に入れると「ブタ財布」になってしまいます。人々はクレジットカードやスイカの様な電子マネーを利用する様になります。

ここで、中央銀行が通貨を電子マネー化したらどうなるか・・・。スイカなどの電子マネーもゆくゆくは中央銀行のシステムに統合されて行くでしょう。

この過程で重要になるのが、電子マネーの安全性です。ビットコインなどはハッキングされ盗まれる事件が起きています。これを防止しない限り、通貨の電子マネーへの移行は不可能です。

電子マネー導入の信用の障壁を超えるものとして期待されているのがブロックチェーンという技術です。データを分散管理し、過去のデータを改竄出来ない様にしたものと要約できますが、これによって通貨がコピーとして増える事を防ぎ、勝手に使われる事もブロックします。


ビットコインなど怪しい電子マネーが野放しになっている背景には、これらを使って電子マネーの実証実験をしているのでは無いかと私は妄想しています。人は完全に電子化したマネーを信用出来るのか?どの様なリスクが在るのか・・・そんな検証がされているのでは無いか?

■ 全ての取引が把握される電子マネー ■

電子マネーには個人情報が張り付きます。誰のお金が分からなくなると困るからです。

これにより個人、或いは企業のお金の流れは全て明確になります。例えば、商品を買った場合現在は消費税は一旦商店が預かり、決算の時に納税します。しかし電子マネーでは徴取した消費税が直接納税される様にシステムを組む事が出来ます。これにより、省力化と税金徴取の確実性の両方が実現できます。

一方。アンダーグランドなマネーの流れも丸見えになってしまいます。これは地下社会の住人や政治家にとっては都合が悪い・・・。

もしかすると、ドルが生き残るとするならば、このアングラマネーの世界では無いか・・・。そんな妄想に耽っていたら・・・おっと仕事しなくちゃ・・。