■ ランド・ポールの出馬をTVニュースで報じたTBS ■
アメリカは2016年に大統領選挙ですが、その前に民主党、共和党の候補者選びがスタートしました。ヒラリー・クリントンがネットで出馬を表明して話題になっていますが、共和党では上の写真の方が出馬を表明しました。
「誰?!」と思われた方が多いかと思いますが、彼こそが次の大統領選挙でシンデレラ・ボーイになる可能性がある候補者だと私は勝手に妄想しています。
彼の名は
ランド・ポール。一期目の上院議員です。実は彼自身よりも、彼の父親がアメリカでは超有名人です。
その人の名はロン・ポール。ティー・パーティー勢力の重鎮にして、何度も大統領候補選挙にチャレンジした有名な「泡沫候補」です。
ロン・ポールはオーストリア学派の正当な流れを継ぐ人物で、あまりに大きくなり過ぎて人々の生活に過剰に干渉する現在の連邦政府を批判し続けています。
1)アメリカは世界の警察を辞めるべきだ
2)連邦政府は縮小すべきだ
3)FRBは既に破綻しているし、そもそも廃止されるべきだ
これら、過剰とも思える彼の主張ですが、前回の大統領選挙の予備選挙において、若者達を中心にロン・ポールへの支持が広がり、彼は共和党の大統領候補選挙で善戦します。もはや「泡沫候補」とは呼べない存在感を示しました。
リーマン・ショックで自身を失ったアメリカ人の一部は、「アメリカは普通の国に縮小すべきだ」と考える様になってきており、そして、そう考える人達が増えて来ているのです。全開選挙では、退役軍人の中にもロン・ポールを支持する人達が現れました。
ロン・ポールはテキサス州の下院議員でしたが、彼の息子のランド・ポールは前回選挙で上院議員に当選しています。ロンは政治家を引退して息子がその意思を継いでいます。そして、ロンの支持者達もランド・ポールに大きな期待を寄せています。
ロン・ポールが日本のメディアで話題になる事はほとんど有りません。予備選挙で彼がある州で勝ったとしても、アメリカでは驚きを持って報道されますが、日本のメディアは完全に無視してきました。
しかし、先日、ランド・ポールが共和党の大統領候補選に立候補する事を発表すると、TBSはTVニュースでこれを伝え、「若者やティーパーティと呼ばれる人達に支持されている」と説明しました。「小さな政府を主張していますが、一方で福祉政策も重視する」という現実的な路線も紹介し、もはや日本のメディアにとってもランド・ポールは「泡沫」として扱えない存在として認識されているのかも知れません。
■ ピケティーが争点になるであろう次期アメリカ大統領選挙 ■
実は最近気になるのが「トマ・ピケティー」に対する過大な評価と、その熱狂ぶりです。
陰謀論的には、時代が変わる時にはそれを先導する書籍や論文が注目されます。アメリカが「宗教戦争」を始めるにあたっては、サミュエル・P・ハンティントンの『文明の衝突』が論理的根拠にされたふしがあります。
『文明の衝突』はアメリカ外交問題評議会(CFR)の機関誌、フォーリン・アフェアーズに掲載された論文です。
その日本語版を見る事が出来ます。
http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/199308/Huntington.htm
アメリカ外交問題評議会(CFR)は民間のシンクタンクですが、共和党、民主党を問わず多くの有力者が名前を連ねています。ヒラリー・クリントンもその一員ですし、ヘンリー・キシンジャーやジミー・カーターなど錚々たる顔ぶれです。名誉会長はデビット・ロックフェラーです。
実はアメリカの外交政策を決定しているのは連邦政府では無く、この外交問題評議会(CFR)なのです。ですから、オバマの一般教書演説などを聞くよりも、CFRの機関誌であるフォーリン・アフェアーズに掲載された論文や、CFRにおいて行われるヒラリーの演説を聞いた方が、アメリカの外交の未来予測に余程役立ちます。
『文明の衝突』は過去の歴史を紐といて、「戦争は文明と文明が出会う時に必然的に起きる」と主張しています。そして、その論文が世界的に注目された後、911事件が起こり、キリスト教とイスラム教の対立が煽られていったのです。
陰謀論者である私はピケティの『21世紀の資本』の扱われ方に「同じ匂い」を感じて仕方ありません。
「資本収益率>経済成長率」である事は現代を生きる私達は肌身を持って実感していますが、それを歴史的に証明したという点においてピケティの業績は評価されています。(例外は存在しますが)
今更、「資本収益率>経済成長率」が証明された所で、私達の生活に大きな影響は有りません。お金持ちは、投資によって利益を拡大し、投資資金の無い庶民は不等式の当然の帰結としてますます貧しくなる・・・(資金が資産市場にトラップされて実態経済の成長率が低下する)
ただ、世界的にピケティを評価しているのは社会主義的な思想の人達が多く、『21世紀の資本』によって「金持ちは益々金持ちに、貧乏人は益々貧乏人になる資本主義の問題点が明らかになった」と主張しています。これは、日々の生活に不満を持つ庶民の心を刺激します。
リーマンショック以降、アメリカでは貧富の差がさらに拡大しています。垂れ流される緩和マネーの恩恵に預かれる富裕層は益々資産を増やしている一方で、実体経済に資金が流れないので中間層はどんどん疲弊しています。
民主主義の選挙において特筆すべき点があるとするならば、金持ちの一票も、貧乏人の一票も等しく同じ一票である点です。(貧乏人は選挙に行かないという点は無視するとして)
ですから、アメリカの大統領選挙では、貧乏人の票が選挙の行方を左右するとも言えます。簡単に言ってしまえば、「庶民受けの良い候補の勝ち」となるのです。そして、現在のアメリカの庶民の興味は「貧富の差の是正」にある。
ですから、庶民とは程遠いヒラリー・クリントンも出馬表明に当たり「経済格差是正の必要性を指摘し、「市民の擁護者になりたい」と」と語るなど、庶民の取り込みに必死になるのです。
■ シンデレラ・ボーイが勝つアメリカの大統領選挙 ■
「初の女性大統領」などと日本のメディアはヒラリーを持ち上げていますが、実はヒラリーは非常に不利な戦いを強いられます。
それは彼女が「庶民に人気が無い」からでは無く、「候補者として新鮮味に欠ける」点にあります。クリントン政権時代こそ輝いていたヒラリーですが、日々メディアに登場し、年々年老いてゆく姿をアメリカ国民は見続けてきました。
実はアメリカの大統領選挙は、有力候補が落選し、ダークホースの新人が大統領となる事が多いのです。ピーナツ畑の農場主から大統領になったジミー・カーターを始め、ハリウッドの俳優出身のロナルド・レーガン、「CHANGE」だけを叫び続けて当選したバラク・オバマなど、選挙前は大した知名度も無かったのに、選挙戦の中で輝きを増して行った候補多い。
いわば、大統領選を「国を挙げたお祭り」と感じているアメリカ人は潜在的にシオンデレラ・ボーイを渇望しているのです。
面白い事に世界の経営者はそれを逆手に取ります。ジミー・カーターはピーナツ畑の農園主であると同時に300人委員会のメンバーでした。コテコテのあちら側の人材です。それを純朴な農夫に仕立て挙げて庶民をまんまと騙して当選させるのが世界の経営者達なのです。
■ ランド・ポールやルペンはガス抜きに使われる ■
ランド・ポールの他にも現在の金融至上主義や大きな政府を批判する政治家は沢山居ます。有名なのはフランスの国民戦線代表のマリーヌ・ルペン党首でしょう。
日本では移民排斥など極右として紹介される国民戦線ですが、ルペンの父娘の言動は意外にまともです。ロン・ポールらと世界経済の見方も非常に近いものが有ります。
長引く不況でフランスでは国民の不満が高まっており、「小さな政府」と「移民排斥」を訴える国民戦線は、イスラム教徒による新聞社襲撃事件以降、急激に支持を拡大しています。
しかし、ランド・ポールやルペンが大統領になる事は有りえません・・・何故なら、彼らの政策をそのまま実行したら、世界経済も世界の平和も大混乱になるからです。
ただ、貧富の差が拡大する中で彼らの存在は既に無視できないものになって来ています。そこで、世界の経営者は彼らを黙殺するのではなく、適当に持ち上げて「ガス抜き」に利用しようとするでしょう。
■ リーマンショック以上の危機が起きればランド・ポール大統領もあり得る ■
実は私はランド・ポール大統領(本当はロン・ポール大統領)の誕生に期待を寄せる一人です。
もし、彼が大統領になる様な日が来るとするならば、それはリーマンショック以上の金融危機が発生し、現在の経済システムも通貨システムも根底から崩壊する状況が発生した時では無いかと妄想します。
「金持ち達が世界を破壊した」と多くの国民が考え、そしてアメリカの街々で暴動の炎が上る時、アメリカ国民の心を一つにまとめられるのはランド・ポールしか居ない。
「今こそアメリカは普通の国になろう!!」こう彼が叫んだ時、多くのアメリカ人が彼を支持する事でしょう。
世界の経営者にとってランド・ポールはガス抜き以上の使い道も有るのかも知れません・・・。そして
『21世紀の資本』が意味を持つのかも知れません・・・。