■ 寒さと共に収束したウォール街デモ ■
デモはアメリカの文化です。
手に手にプラカードを持ち、
様々な趣向を凝らして練り歩く様は、
一種のお祭り気分に包まれています。
一か月程前までは、
ウォール街を多くの群衆が占拠していましたが、
NY市がデモを排除してから、
急激にウォール街デモは勢いを失いました。
NYの冬は寒い。
公園に寝泊まりしていたデモ参加者も、
寒さが本格化する前に事態が収束して、
内心ほっとした事でしょう。
ところで最近、アメリカの国内治安を維持する法律が
大きく変化している事をご存じでしょうか。
■ 911と「愛国法」 ■
911のテロ以降、ブッシュ政権はテロ対策の為
「米国愛国者法」を制定しました。
1)米国内外のテロリズムと戦うことを目的として
政府当局に対して権限を大幅に拡大させた法律である。
2)この法律において電話やEメール、医療情報、金融情報や他の記録について
当局に対し調査する権限を拡大し、アメリカ合衆国国内において外国人に対する
情報収集の制限に対する権限を緩和する。
3) 財務省に対し金融資産の移転、とりわけ外国人や外国法人について規制する
権限を強化する。
4) テロに関係する行為をとったと疑われるものに対し司法当局や入国管理局に対
し入国者を留置・追放する権限を高めることを規定している。
5) 「テロリズム」の定義を拡大し「国内テロ」をも含め、その結果本法は司法当局
の拡大された権限を行使する場面が飛躍的に拡大している。
■ 「NDAA 国防権限法」の成立がアメリカ人にもたらすもの ■
今回「NDAA 国防権限法」という法案が
アメリカ議会を通過しました。
「国防権限法」は「米国愛国者法」を拡大した様な法案です。
1) 米当局が、テロに荷担していると疑われる人々を、
裁判所の逮捕令状なしに逮捕し、裁判や弁護士接見を認めることなく、
必要がなくなるまで無期限に勾留できる。
2) 対象からは、米国民と米国に合法的に在住する外国人が除外されている。
3) 国防長官が議会に事情を説明すれば、
米国民や米国在住者も逮捕・無期限勾留できる。
アメリカ国民の一部が警戒しているのは最後の条項です。
1) 国防省が米国内のテロ対策の主導権を握る
2) FBIとCIAの権限が縮小されている
3) 国防長官が「説明」すれば、米国民も逮捕、無期限拘留できる
■ アメリカ軍の歴史的変換点 ■
アメリカは2007年にアメリカ軍の運用に関して、
歴史的変換を行っています。
その為の法律が「国防権限法」です。
連邦政府の権力から国民を守る」事を目的とする合衆国憲法の精神に則って
従来、米軍は米国内で作戦行動を取る事が禁じられていまいた。
<引用開始>
米国においては、「Posse Comitatus Act:PCA」( 以下「ポシ・コミテイタス法」) によって、法執行に軍を使用することが禁止されている。これは、伝統的に確立された軍事部門と文民部門の分離原則を具体化したもので、このポシ・コミテイタス法によって軍は制限を受けており、その規定は次のとおりである。
18 USC 1385 陸軍及び空軍のposse comitatus としての使用
posse comitatus その他の方法で、法を執行するために、陸軍又は空軍を故意に使用する者は、憲法又は連邦議会法が明文で規定し、かつ、その状況下にある場合を除いて、本節の下で罰金若しくは2年以下の拘禁又はその両者に処せられるものとする。
この規定は、陸軍及び空軍をposse comitatus として使用することを禁止するものであるが、1986年の国防省通達と海軍長官訓令により、海軍(Navy) 及び海兵隊(Marine Corps) にも適用されることとされ、その意味では、米国の連邦軍のうち、USCGを除く4軍の陸軍、空軍、海軍及び海兵隊に適用される。また、この規定は、直接的には軍をposse comitatus として使用した者を処罰する規定であり、処罰法としての体裁をとっているが、その成立経緯から見ても、より重要な国家方針を示した規定と解釈されている。それは、軍事部門と文民部門(非軍事部門) を分離するというマグナカルタ以来のアングロ・アメリカンの伝統的原理を具体化したもので、軍と法執行とを分離し、軍を通常法の執行(civil law enforcement) に使用してはならないという法原則を宣言した米国の統治形式の基本方針といわれる。
<引用終わり>
■ 強化された「国防権限法」 ■
「国防権限法」はアメリカに次の様な変化をもたらします。
1) 4軍を米国内で運用可能とする
2) テロ対策の権限をFBIやCIAから国防省に移行する
3) 国防大臣が議会に説明すれば米国国民であっても、
逮捕、無期限の拘留が出来る
表向きはテロ対策を口実にした「国防権限法」ですが、
リーマンショックによる経済危機が制御不能に陥った場合予想される
国内の暴動の鎮圧に、軍を運用出来る様にしたとも勘ぐる事が出来ます。
現在アメリカは中東やアフリカから手を引き、
環太平洋国家群のリーダーに変わろうとしています。
今後予想される世界経済の崩壊は、
世界の姿を変換する、起爆剤の役割を担うはずです。
一方、実態経済が疲弊し、多くの失業者を抱えるアメリカで、
経済危機が深刻化すれば、必ず暴動が発生します。
その暴動は知識層中心の平和的デモでは無く、
貧困層を中心に、暴徒化した国民による暴動です。
アメリカ人は、その危険性を肌を持って実感しており、
クリスマス商戦では、銃が最も売上を伸ばした商品でした。
アメリカの支配者達は、アメリカにおける暴動は不可避だと考えています。
いえ、寧ろ、この暴動を「負の清算」の理由にするでしょう。
一方で「新しいアメリカ」の建設の為に
暴動鎮圧に軍が投入され、国民の主権は大きく制限されるでしょう。
2011年も残すところ後10日です。
夏以降、崩壊の兆項は、隠せないものとなっています。
「イルミナティーの陰謀」などという枕詞を付けずとも、
2012年が世界の大きな変革の年になったと、
後の歴史が語り継ぐかも知れません。