人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

下品で愛らしい「宇宙人」・・・『宇宙人ポール』

2011-12-31 02:54:00 | 映画
 




■ 息子と映画を見に行こう!! ■

家内と娘が「女子会」に出かけてしまったので、
何となく息子と二人きりになってしまいました。
くやしいので、「男子会」をする事にしました。

・・・と言っても、息子も高3です。
「お父さんとラーメンでも食いに行くか?」と聞いたら
「イヤ、腹減ってねー。ラーメンは昨日食べたし」と瞬殺。

そこで映画で釣ってみる事にしました。
ネットで検索すると、こんな映画を見つけました。
『宇宙人ポール』

いかん・・・ツボった

息子に「『宇宙人ポール』なんてどう?」と聞いたら、
「これ絶対ハズスし・・」と言われてしまった・・・。
確かに親子で合計3300円をドブに捨てる気もするが・・・。
でも、「世間ずれすた宇宙人とオタク男二人のロードムビー」って書いてあるし、
・・・それに、このスチルの間抜けさはどうだろう・・プ!

息子とは、「昼飯に美味いもの食わせる」と言う事で手打ちしました。

■ 小ネタ満載のコメディ-映画 ■

映画の宣伝ページにはこう書かれています。

「『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』の
サイモン・ペッグ、ニック・フロストの作品である。これはもうハズレのワケがない。」

両作とも未見なので判断のしようがありませんが、
スチルを見る限り、何かビンビン来るものがあります。
ワクワクしながら、ポップコーンを頬張りながら、開演を待ちます。

<ここからネタバレ>

60年前、草原の中に一軒家での出来事。
飼い犬が騒がしいので、少女が外に出してあげると、
犬めがけて墜落してきたのが・・・UFO。

その60年後。
イギリス人のオタク、SF作家のクライヴ(サイモン・ペッグ)と
相棒であるイラストレーターのグレアム(ニック・フロスト)は
サンディエゴのオタクの祭典、
コミコン(アメリカ版の「コミケ」)にやって来ます。

幼い頃からの親友の二人は、コミコンを堪能した後は
キャンピングカーを借りて、
アメリカのSFスポットとUFOスポットを廻る旅に出ます。

仲良しの二人はSF映画の撮影スポットで怪獣ごっこに興じ、
UFOスポットとして有名なブラック・メールボックスで記念撮影。
さらに墜落したUFOが持ち込まれたと言われる
ロズウェル事件のエリア51に向かいます。

UFOカフェで怖いにちゃん達に絡まれた二人は、
一目散でキャンピングカーで逃げます・・・
と、猛スピードで追って来る車が・・・いきなりクラッシュします。

恐る恐る壊れた車に近寄る二人・・。
すると、背後から現れたのは・・・
ポールと名乗る宇宙人。

■ 陽気な宇宙人 ■

60年前にUFOが墜落してロズウェルに監禁されていたポールは
すっかり英語も達者で、アメリカン・スラングで喋りまくります。
途中で何故かキリスト教福音派の娘を拉致して(寝てました)
4人連れとなった一行は、、おかしな宇宙人と
次第に打ち解けて行きます。

ポールはウィットに富み、心温かで、そして悪戯心満載の
古き良きアメリカ人を絵に描いたような宇宙人だったのです。

そんな一行に追ってが迫ります。
FBIの捜査官風の男と、地元警察のオバカ刑事二人。

さて、ポールと一行は無事逃げる事が出来るのか・・。
ハートウォーミングでトホホな旅が始まります。

■ SF映画の小ネタが満載 ■

『宇宙人ポール』の見どころははっきり言って、
SF映画のパロディーやオマージュが満載な所。

「ET」に始まり「未知との遭遇」や「コクーン」
シガニー・ウィバーの出演や、スピルバーグのカメオと
SF映画ファンのハートを直撃するシーンが一杯。

■ 主演二人と宇宙人の掛け合いの素晴らしさ ■

この映画、単なるB級SFコメディーなんだけど、
主演の二人、サイモン・ペッグとニック・フロストの二人の演技が冴えています。
幼い頃からのオタク友達の絆が、ジンワリと滲んできます。

きっと、この二人、何をするにも一緒。
同じ物に感動して、同じ映画を見て、同じ本を読んで育ったのでしょう。
クライブはグレアムに淡い好意を抱いていますが、
この旅は、そんな彼の思いとの決別の旅でもあったのでしょう。

だから二人だけで、思い切り好きなSFのスポットを回る旅を楽しみたかった。
ところが、変な宇宙人は一緒になるは、
グレアムがキリスト教娘と良い雰囲気になるわで、
クライブにとっては、少し複雑な気分の旅となってしまいました。

ところが、そんなクライブの気分を察する事が出来たのは、
何と、宇宙人であるポールでした。
ポールはクライブに、友人の様に語りかけ、
いつしか彼の心を癒して行きます。

一方クライブはキリスト教娘にぞっこん。
彼女は彼女で宇宙人の存在を突き付けられて、
進化論すら否定する「福音派」としての信仰が消し飛んでしまいます。
慣れないスラングを連発してみたり、
クライブにキスをしてみたり、大はしゃぎです。
そんなクライブとキリスト教娘の恋は、
初めて恋をしたティーンの関係の様で、
キス一つにも、ドキドキします。

ポールとの出会いが、大人になれなかった3人の時計を
少しずつ進めてゆくのです。

■ 一晩たったら、良い映画になっていた ■

B級SFコメデェーを傑作とは言い難いのすが、
脚本をもこなすサイモン・ペッグとニック・フロストの才能は素晴らしい。
地元警察の二人組のドタバタした演技さえなければ名作と言っても過言ではありません。

劇場を出た時は、息子と「60点かな」などと言っていたのですが、
一晩寝たら、「85点」くらいの映画になっていました。

この脚本で、「レニングラード・カーボーイズ・ゴー・アメリカ」の
アキ・カウリスマキが演出したら、「外人=エーリアン」的視点から
歴史に残る名作になっていたでしょう。

或いは、「コクーン」のロン・ハワードだったら、
家族で楽しめる、ハートウォーミオングな大傑作になっていたかも知れません。

■ 記憶に残るオバカ映画 ■

息子と映画に行くのならば、「ミッション・イン・ポッシブル」が妥当でなのでしょうが、
やはり私としては「記憶に残る映画」を見たかった。

『宇宙人ポール』は、トホホ感と共に、
それでも息子の記憶に残り続ける映画だと思います。

「昔、オヤジとバカな映画を見てさ、でも、あれ、もう一度見たいんだよ」
将来、息子が子供にそう語っている所を妄想して、ニヤニヤしてしまいます。


■ 今年も一年間、ご愛読ありがとうございました ■

最後に、皆さま今年も一年、
「人力でGO」をご愛読頂きありがとうございました。
震災以降、こちらをお読みになられている方も、ありがとうございます。

激動の一年を締めくくるのが、B級SF映画とは、
何とも締まらないブログですが、
それゆえに、コメント欄も荒れる事無く続いているのだとも思います。


何かと落ち着かない2011年が終わり、
いよいよ明日からは2012年に突入します。

来年が皆さまにとって良い年でありますように。